第6話 虚勢と検証と
「二瀬野さん。露刺くんが言いすぎなのは認めます。でも、これはやりすぎです」
月代はそういうと、二瀬野を強くにらみつける。
「最初は露刺くんの体力を回復させるのにも良いし、二人だけの話だと思ってあえて口を挟まないでいました。でも、たかがアニメの話で殺し合いまで行くのは違います」
「たかがアニメ? お前は何もわかっていない!」
二瀬野はカードを構える。
だが、月代はそれを無視して語り掛ける。
「それでも抵抗しますか? それなら、次は――あなたの番です」
月代は静かに、しかし確実に「抵抗をするな」と理解させるように伝える。
胸を張ってカードを掲げた。
これがブラフだとバレてしまえば終わりだ。
そんな思いを押し隠して……。
二瀬野はそれに対し、何かを反論するかのように口を開こうとする。
カードに触れている手が震えている。
そして、肩をすくめた
「……やってらんねーっすよ。 塔 正位置。<崩天の号令>濃霧」
発生させた霧に紛れ、二瀬野は姿を消す。
「……何とか、逃げてもらえましたね」
月代は安堵のため息をつく。
そして、少し考える。
「……でも、露刺くんにしては少しおかしいですよね。まだ付き合いは短いですけど、その短い期間でもここまで直情的な人でないことだけは理解しています」
月代は周囲を警戒するように見回し、露刺の身体を抱えてその場を後にする。
おそらく、何らかのカードによる影響があるのだろうと考えたためである。
そして、それは正鵠を射ていた。
「なるほど。この『正義』のカードは、使いどころを選ぶな……。3人にまとめて掛けてみたが、効果があったのはあの銀髪だけか。確か『露刺』とか呼ばれていたか?」
物陰に隠れ、様子をうかがっていた人物がそう呟く。
「なら、黒髪の……。確か、月代とか言っていたか? ならば、あの露刺と言う人間はおそらく元々は『そういう考え』を持つような人物では無いのだろう。逆に、素であのくらい偏った思考を持っていた二瀬野とか言う奴は……」
そう言いながら、「正義」のカードをポケットにしまう。
「効果が得られるのは1人のみ。効果自体は『極端に思考を偏らせることが出来る』と言うもの。いったん、検証はこんなところだろうか……」
カードを仕舞ったズボンの右ポケットを軽く叩く。
「少なくとも露刺および、月代はそこまで問題はなさそうだ。だが、二瀬野はダメだ。あれは村田フレイと同じ人種だ。アレは、正義の名の元に断罪せねばならない」
あたりには二瀬野がつくった濃霧。
その濃霧に隠れるように、姿を揺らしながらその人物は消えていった……。
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カードが揃うまで、物語は止まらない――