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血の黙示録より。  作者: 血の黙示録再編集者
序章 一介の官僚
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未来・不純物・異変

〈区都ナゴヤ〉

 



 昼食を摂り終えたレイは次の指定場所へと向かうためにタクシーに乗った。受態民たちにとってもお昼時のようで官僚の経営する店にぞろぞろ入っていく。単語を羅列するだけの会話能力しかない受態民たちを見てレイは心の中で面白がっていた。教育の大事さがひしひしと伝わってくる。しかし、レイを含めた官僚たちは正式に彼らを差別しない。彼らも人類であるからだ。科学の恩恵に授かっている者どもであるからだ。少なくとも、違反者たちよりはましだからだ。

 ラジオからジャズが流れ街灯にプロパガンダがぶら下がっている。どちらも人の手によるものではなく、AIによって生み出されたものたちだ。最適解を知る機械による宣伝は人々を動かしている。機械は人にとって代わっている。反動主義者たちはそれに対して人の温かみとかよくわからないものを主張しているが、世界は、時代は反論を退けて新しいものに迎合しようとしている。やはり機械が優勢であるのは間違いない。そのうち、人だってすべて鉄やプラスチックの塊で形成されるのだ。・・・進化・進歩のためには旧体制の権力者たちを殺していくべきだ。120年前の人々も、弾圧の象徴の西方の牢獄が市民によって解放されたことも、民を苦しめた皇帝と帝国を滅ぼしたことも時代の進歩として受け入れてきたはずだ。どのような形式であれラッダイト運動は昔も今も功をなさない愚かな行為だ。科学よ、すべての人を幸福へと導け。



 レイは改めてタブレットで次の行き先を確認する。緊急研究所・・・。アカネの職場だ。レイは普段、政治局の人間として威厳を張っているが、内心ではアカネと会えることを楽しみにしていた。

 


 時間通りに研究所があるビル前に着いた。タクシーを降りて建物内へ入る。記載通り、アカネの職場は地下にある。レイはエレベーターで地下へ向かい、ドアの横にあるベルを鳴らして自分が来たことを伝える。重い鉄のドアを引っ張ったアカネの姿があった。アカネは白衣に着替えており、仕事用の眼鏡をつけていた。レイは形式文を読み上げて研究所内へと入っていった。しかし、室内は思いのほか静かだった。

「ん?ほかに人はいないのですか?」

「ええ、そうなの。どうやらみんな体調不良らしくって」

レイは小さくため息を吐いた。

「そうですか。では今回は緊急研究所の成果をLI-999(※1) 、説明をお願いします」

レイはいつもどおりに職務を果たそうとしていた。しかし、アカネは少し不服そうだった。

「ん?どうかしましたか?」

「なんでそんな他人行儀なのよ。私とレイしかいないのに」

「これは仕事です。家での関係ではありません」

「二人きりなら、家でいるときと一緒でいいでしょ?」

「しかしながら・・・」

レイはあたりを見渡す。この部屋にもいくつか監視カメラと盗聴器があるはずだ。もちろんそれらは保安局へつながっている。公私を分けないのは官僚としてはありえないはずだ。アカネがいくら特権階級(被検体)とは言えど、厳しくみられる原因とされてもおかしくない。

「レイさん」

アカネはとある方向に指をさす。360度対応型監視カメラが天井に設置されているところだった。だがそれでも意図が分からなった。するとアカネはレイに顔を向けて5回、目をぱちぱちさせた。レイはやっと察し、目で探知能力を発動させる。 (※2)カメラには電源が入っておらず、ほかの監視に使用するものも作動していなかった。2秒の頭痛とともにすべてを理解して伝えた。 (※3)

「では、説明よろしく、アカネさん」

アカネの顔が分かり易く明るくなった。そのテンションのまま説明した。

「緊急研究所は、近年起こっている不可解な事物に焦点をあてた専門機関。謎の原動力で動くもの、見知らぬ生き物などがあります」

それ以降はいろいろな事象について説明してくれた。レイは外部の最新情報を知ることはまれなことなので楽しんで聞いていた。そして、最後、追加と言わんばかりにとあるものを取り出してきた。

 それは、石だった。それも、見たことのない鉱物がついていた。

「今日、研究所に送られてきたものよ。これも謎の原動力・・・魔力があるとされているわ」

「魔力・・・さっき言っていた未知科学のことか?」

「そう。現在解明されつつあるものよ」

「しかし、あまり進んでいないように見えるが?」

「そうね。いろいろと不明なことが多いし」

「世界中の研究者が探求しているが・・・・」

アカネは鉱物を机の上に置く。そして部屋の奥からとあるものを取り出してきた。

「それは?」

「この鉱石を研究するためのキットよ。今日は政治局の人の前で実践して研究が無駄なものではないと証明したいし」

「そうか。やってみなさい。手伝うところは手伝いましょう」

アカネは真面目に鉱物の一部を削り取る。レイはその様子を見ながら本部に報告するためのレポートをタブレットで作成していた。


 小一時間経った。アカネは削り取った鉱石の破片を顕微鏡で観察するのに夢中になっていた。終了時間まであと2時間。レポートをあらかた作り終えたレイは何か手伝えることはないかとタブレットをしまった。アカネのいる奥のスペースへと行こうとしたとき、テーブルから一つの違和感を感じ取った。さっきの鉱石が謎の光を発していたのだ。青色の不気味な光だった。レイはこれが重要な手がかりかもしれないとアカネを呼びつけた。アカネはその光景に驚いていた。

「アカネ、これはどういうことだろうか?」

「・・・知らないわ!こんなこと!もしかしたら世紀の発見かもよ!すぐに写真にとって!」

レイはタブレットでそれを撮影する。ある程度の資料としては働くだろう。アカネは考察する。

「もしかしたら・・・魔力の具現化かもよ?」

「魔力の具現化とは?」

「魔力は目に見えないものとされている。でもこの発光は魔力そのものかもしれないの。条件とかは・・・今はわからないけどこれはすぐに上に報告するべきよ」

そういった話をしているうちにもその光はどんどん強まっていく。そして突然、その光は消え去った。


 その直後だった。グラグラと地面が揺れ始めた。棚や資料が踊り始めた。

「アカネ!まずい!地震だ!」

レイはアカネに机の下にもぐるように促す。アカネが隠れたのを確認するとレイは避難路確保のためにドアを開けようとした。ところが、びくともしない。誰かが押さえつけているようだった。レイはあきらめてアカネのいるところへと飛び込んだ。まだ収まる気配はなかった。アカネは尋ねる。

「今日地震があるなんて聞いた?」

予測システムが進化している連邦では地震や津波がいつ起こるかは完璧に周知でき、予報もしているはずだ。システムですら把握できなかったものなのか?きっと地上はとんだ騒ぎになっているだろう。


 しかし、5分、10分たっても収まらなかった。アカネは怯えレイはそれをなんとかなだめようとしつつこの状況を打破できないことをもどかしく思っていた。


 そして、最後の記憶。目の前の棚が自分たちのいる机の方向へと倒れ、脚が折れる音。これ以降の記憶はレイもアカネも持ち合わせていなかった。

※1・・・アカネのコードネーム

※2・・・連邦所属の官僚がよく装備している探知作用の目。機械製。様々な事象の把握が可能。なお、欠点として使用した分の痛みが伴う。

※3・・・アカネが被検体であるのもそうだが、リュウイチがバックにいることでアカネの特異な行動が許されている。



やっと本編へ・・・

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