前進・機械化・革命
この話はこの地球連邦の特色の一部をまとめたものです。
あくまでフィクション。
〈日本列島地域・東海区・ナゴヤ〉(血の津波より)(これよりRE視点となる)
夕方になり日が暮れる。都市中の街灯が一斉に点灯し新たな光源になった。私REは無人タクシーを拾って帰宅することにした。透明な素材でできた球体に乗り、目的地を体に埋め込んだ電子コードをタクシーに読み込ませて認知させる。そして、官僚用の道路を走っていく。その道路はすぐに地下へ向かっていく。野蛮人ならこの道路を無味乾燥なものといって侮蔑しそうだが、そんな奴らはこの道路の機能性を知らないのだ。単調ではあるが、その分速度は地上で走行する以上は出ており目的地に速やかに行くことができる。時間の厳しい官僚だからこそ必要なものなのだ。とはいっても、郊外の自宅に着くのに数分はかかる。その間、タクシーに常備されているタブレットで新情報を手に入れる。以下が、今日の新聞の内容だ。
①マリアナ海溝の地形・生態系が全て解明される。現地の観光局は将来的な観光地化を検討中
②官僚の半機械化が90%完了する。一部都市では全て機械に置き換えられたところも
③地球文化大革命終了から75年
①について要約してみよう。長年の研究のおかげで、それまで隙間の神の居所とされていたマリアナ海溝の全貌が明らかになった。ロボットによって地形は一つ一つ明らかにされ、そこに住まうすべての生物は研究センターへ送られた。よって今日、地球歴2050年5月16日にマリアナ地域の政治局や特別調査局らが共同でマリアナ海溝の神からの解放を宣言した。これに対して一部の野蛮人が異議を唱えたがそれは全て非合法となり論者は全て逮捕された。現地の観光局はその神秘的な空間を利用して受態民向けの観光地をつくることを計画していることを発表した。現在の構想としては、深海へと続くエレベーターが建設されるとのことらしい。
隙間の神の打倒は私たちの本願である。今まで野蛮人はわからないことをすべて神の仕業と断定し、思考を放棄していた。しかし、全てを探求することを誓う私たちはそのような言い逃れをせず、真っ向勝負を行った。神が存在しないことはわかりきっている。私たちが真の知者へとなるには、縋るために座るのではなく、新たな未来の方向へ歩いて行かなくてはならないのだ。
②に関してはいうまでもないだろう。私を含むほとんどの官僚はホモサピエンスの領域から脱却し、新たにホモ・セミ-メカニカル(半機械人類)になったのだ。半機械といっても、実際のところ均一ではない。実装時期が異なるゆえの弊害である。ただ電子コードを掌に埋め込んだだけの人もいれば、脳以外すべて人工物である場合もある。脳の機能も機械に変貌しているアンドロイドはホモ・メカニカルに分類されている。野蛮人はこれを人類の滅亡、あるいは機械による人間の家畜化と叫んでいる。が、考えてほしい。なぜ君たちホモサピエンスはこの地球において覇権を握ることができたのか。ほかのタイプ・・・それこそネアンデルタール人などの旧人と呼ばれている奴らに打ち勝ったのはなぜなのか。それは、ホモサピエンスがそれらよりも優れていたからである。自然界において強者こそが生き残るという当たり前の原理に従えばすぐにわかるはずだ。己よりも上位の存在が現れたときは、弱者はその占有している道を開けなければならないのだ。ならば、今回のホモ・セミ-メカニカルやホモ・メカニカルへの移行もその原理に従っているのではないか?これらの人類がホモサピエンスよりも優れているのはよく理解しているはずだろう?サピエンスの君たちは機械人類によって家畜化されるという風に悲観的にみるのではなく、進化の過程を作り上げている階段の一段であるとぜひとも思ってほしいものだ。
私も半機械人類である。電子コードが掌にあるのもそうだが、さらに目にも改造が施されている。私は、見える範囲での生命体の検知が可能である。壁越しでも正確に読み取ることができる。旧式のものなので背後や数キロ先のものは探知不可能だが十分使える。しかも敵味方判別装置まで搭載している。一瞬のスキャンで官僚と受態民の識別ができる。まだ体に適合しきれていないのか使用すると頭痛が生じるが逆に言えばその程度の副作用しかないのだ。機械製の目なのでつぶれることも視力が落ちることもない。暗闇の中でも察知が可能だ。しかしそんな私がなぜ軍や警察所属ではなく政治局の職員であるかは疑問だ。しかしそれが職業適性診断の結果であるらしいのでそのような無意味なことは口外しないようにしている。
③について語るとしよう。地球文化大革命と呼ばれる出来事についてだ。これは1955~1985年の歴史に残る偉大な出来事だ。統一宣言が出された後もその地域では文化・宗教・言語が異なっており完全な統一はされていなかった。そこで起こったのがこの革命だ。全文明の精査を行い有用性のあるもののみを残してそれ以外を破壊した。結論としては、宗教はすべて廃止、言語も統一、文化も地球文化として統合して全ての地域での差がなくなった。この革命は若者を中心に展開され、教本(革命初期にかかれたもの)を持ち、破壊活動を行った。日本列島においては、全ての社寺は破壊され仏像や経典はリサイクルされた。由緒ある家柄の尊厳を没収し、和風文化は根絶された。その跡地には合理的で集合的な立方体が建ち、科学の勝利を証明した。更には、富士山計画により富士山の大規模開発(工業化・ペンキによる装飾)などで日本人のアイデンティティをへし折った。すべては平等のためだ。すべては公平のためだ。
だが日本列島ではあまりなかったが、抵抗運動が激しいところもあった。特に欧州においては独立宣言を勝手に行うところもあった。この戦争にて地球連邦は数百発の核兵器を使用し、欧州は焦土化した。植民地主義・帝国主義の根源とされた地域は浄化されたのだ。これ以降、今まで争いの絶えなかった欧州では争いごとは起きていない。平和は勝ったのだ。(なお、被害はかなり甚大で欧州人口の7割が死滅、都市の6割が焦土化した)
そして最後に、民族分離運動が始まった。すべての地域に均等に各民族を移動させて偏った文化を形成できないようにした。日本列島においても、日本人と呼ばれた人種はこの運動で半数以上が別地域にわたり、逆に欧州やアフリカから多数の人が移住してきた。日本はもはや地理的概念でしかなく、「日本人」や「日本の」という言葉は存在しない。いや、存在してはいけなかったのだ。争いを起こさないために占有は許されないのだから。
・・・さて、家に着いたようだ。時刻は19:00。完全就寝時間までずいぶん時間がある。
※③は文化大革命を参考にしたもの。




