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血の黙示録より。  作者: 血の黙示録再編集者
序章 一介の官僚
2/7

神話の世界

〈血の黙示録より〉

  まず、どこから書きだそうか。前時代末期を知るにはそこに至るまでの経緯を知ることが大切だ。そこで、私は“前時代の前時代”から書きだそうと思う。・・・この時点で分からない人も多いかもしれないが、我々に前時代が存在するように、彼ら前時代の人々にも、その前の世界(神話の世界)が存在していたのだ。しかも、それは実在が“血の津波”にて証明されている。どうやら、その著者であるレイはその世界にいたとされている。自称では?と思う人がいるだろうが、彼の言動、周りの評判、彼の持ち物を見る限りそうであるとしか言いようがないところがいくつもある。反対意見があるものわかる。だが、今はどうにか飲み込んでレイが“前時代の前時代に生きていた人”であることを承諾してほしい。"血の津波"にはその世界についてその成り立ちから滅びるまで書かれているが、その中で重要視されているのは、"地球連邦"の存在だ。今回は、その“地球連邦”の成り立ちから説明していこう。


 ・・といっても、"血の津波"にも詳しい建国の経緯は書かれていない。断片的な説明をつなぎ合わせると、

・平和な時代を謳歌していた時に、突如経済的危機(大恐慌)が起こる。

・現世に絶望した人たちが理想を唱える人々を支持し、それが政権を握る。

・大量の犠牲を伴って地球を統一する。

というものだ。



〈地球連邦〉 (血の津波より引用)

 1951年の統一宣言以来、連邦は「平和・公平・平等」を実現させるために様々な政策を全世界で強行した。各地に点在する宗教・道徳・倫理観を精査して新たな教義を作り上げ、既存の物は前時代的・反動主義として弾圧されていった。科学至上主義を唱える連邦は神の存在を完全否定し、各地の教会や寺院などは破壊され、信仰の対象になるものは数値と科学的理論のみになった。各地の企業も全て連邦の傘下(国有化みたいなもの)になり、連邦の意思によって物品が生産され続けていた。言語も英語を少し改良したものが全ての地域での第一公用語となり(第二公用語以降はその地域で以前から使われている言葉を指す。ただし、近年ではほとんど使われていない)、ついこの間には全ての人の名前がアルファベットと数字の14桁の文字列に変更された。

 統一宣言から20年ほどは各地でレジスタンス活動が行われており、様々な妨害行為が発生した。だがいずれも沈静化、あるいは謀略による内部崩壊、または完全的破壊を行い、今ではほとんど反政府活動は行われていない。そこからやっと理念に基づく計画が実行されていった。発展途上地域でも急速に工業化が進み、地球全体が工場地帯となった。効率化された農業により飢える者はいなくなり、生活水準も右肩上がりであった。

 だが、1990年代になると様々な問題が浮上してきた。価格の高騰、地球温暖化、使いどころが少ないというのに未だに国費の10%ぐらいを維持する軍事費など・・・。

 2000年、生物工学の成果によって、通常の何倍もの効率で光合成が可能な葉緑体の開発と、それを利用した人工植物の全国に設置したことでCO2排出量は結果的に減少し、現在では産業革命前の平均温度への回帰を達成した。この時に植え替えの為に大量の森林破壊を行い、それとともに発見された山の奥に隠れていた反政府組織を壊滅させた。

 軍事方針にも新たな展望が授けられて、地球以外への星への進出、対テロリズム対策、対地球外文明への対策のためとされた。百万発を超えるミサイルは今も発射基地で出番はまだかまだかと待ち続けていおり、メンテナンスと訓練が至る所で毎日行われている。

 こうした中で、統治体制も一新された。年齢・出生地・人種・性別の差が無くなった人類は2つに分類された。一つは受態民と呼ばれる存在だ。国から食料・住処・生活必需品を与えられ(制限はあるが大体は内容も自由に選べる)、労働をせずに一日中遊び続ける人たちのことだ。これに所属する人間は全体の80%を占めており、街の娯楽施設には沢山の人が押し寄せ、インターネットの世界では何億人もがゲームやチャットをしている。教育も最低限しか受けておらず、彼ら彼女らは“遊ぶ”ということで人生を満喫している。遊ぶこと、幸福を享受することこそが彼らの仕事なのだ。

 一方、それ以外は官僚と呼ばれている。官僚といってもその内容物は幅広く、政務や法務に携わる者から、地方の店の店長やプロ野球選手・人気アイドルまで様々だ。彼ら彼女らは連邦に忠実であり、その与えられた職務をこなすことを生きがいとしている。官僚らは幼少期から優れた教育(プロパガンダを含む)を受け、AIによって分配された最適解の職場に配属される。成果主義そのものであるため誰であろうと怠慢をしない。そして官僚たちがこの地球連邦を支配している。

 人工子宮による人間の生産、遺伝子組み換え技術による最高級の家畜や植物を構築し、それが当たり前に市場に出回っている。全て地球連邦に治められているため、富を蓄えようとするもの、利益を追求する者もいなくなり、貨幣制度そのものも廃止された。全て配給制と物々交換によって成り立っている。連邦制といっても中央のHuman House(ホワイトハウスが改名されたもの)の権威が強く、各地の重要地域は直轄領とされている。例えば、日本列島地域(千島・台湾・樺太を含む)においては、直轄地トウキョウと複数の行政区によって構成されている。

 政治システムもかなり特殊だ。トップは中央の評議会議長の“代理人”である。代理人とは、地球の意思を代弁する者とされている。エリート中のエリートが集まる中央評議会によって決まるものもあるが、重要事項は全官僚による意思表明で決まる。ようは選挙だ。しかし、腐った民主主義と決定的に違うのは、その結果が全て“全会一致”として通ることだ。全ての官僚が最終的には最適解にたどり着くというものだ。今までもそうだった。だが、2051年の議題は今2050年になってもその最適解がはっきりとしていない。それは、「地球をどのような方向へと導くべきか」というものだ。ある者は官僚だけによる統治を、ある者は全人類を受態民とする計画を、ある者は・・・・。今回は全会一致が難しいかもしれない。だが、まだ猶予がある。


 全ての選択は最適解がとられ、全ての人が最先端科学を体験できる。全ての人が公平だ。いったい誰がこの国を批判するだろうか??


〈血の黙示録より〉

 さて、今回の主人公である”レイ”について語るとしよう。この世界にいるならばこの人については何度も聞いたことがあるだろう。この世界の創設者であるという風に、私達は英雄視している。確かに、それには間違いはないだろう。だが、常にきらびやかな人生を送っていたかというと、そうでもない。”この人”は前述した世界連邦から来た人である。どのようにして全世界へと舞い降りたのか。どのような活躍をしたのか。それについて、物語形式で綴っていこうと思う。先行研究の結果も参考にして、その時の世界の動きも踏まえつつ、語っていくことにしよう。

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