視聴者からのコメントは新企画
朝食を食べ終えた時、俺のスマホに着信が入った。
ん……、電話?
誰からだろう……って、なんだ。結衣花か。
スマホを手に取った俺は、応答ボタンをタップして電話に出る。
『おはよ。お兄さん』
「よぉ、結衣花。どうしたんだ?」
『動画のコメント欄。大変なことになってるよ』
「え?」
動画ってことは、昨日投稿したカップルYouTuberの奴だよな?
再生数は確かに伸びていたが、コメントは荒れていなかったはず。
あ、もしかしてまた俺の悪口でも書いてるのか?
とりあえず、結衣花との電話を繋いだまま、俺はスマホでYouTubeの画面を開いた。
するとコメント欄は『彼氏さんにやって欲しい企画』という内容で溢れている。
「なっ! なんだこれ!? 結衣花、わかるか?」
『私がさっき見たらこうなってた』
なんでこんなことに……。
まさか、朝食前にコメントで反論したことを真に受けたんじゃ……。
「やっべ。俺が『なんだってやってやるぜ』って、書いたせいだ。まさか、本当に企画を考えてくるなんて……」
『これはお兄さんが悪いね』
「くぅ……。反論できん。だが、この中から企画を選ばないといけないのか。参ったな……」
すると、俺が結衣花と電話をしていることに気づいた楓坂が近づいてきた。
「どうしたんですか?」
「ああ。実は視聴者たちがこぞって企画を提案してくれているんだが……」
「……すごい量ですね。いったいどうして……」
「……。……。……。わからん」
本当は俺の自爆なんだけど、そのことは黙っておこう。
ただでさえ楓坂にいじられる時が多いんだ。
これ以上、マイナス要素は増やしたくない。
……と、ここで楓坂が『ある企画』を指さして言った。
「これなんていいんじゃないかしら?」
「ほぅ。どれどれ……。彼氏さんが女湯に突撃して警察に捕まり、ハッピーエンド……だとぉ!?」
「なんて素晴らしい企画なのかしら!」
「即ボツに決まっているだろ!」
なんでもやるとは言ったが、犯罪行為はアウトに決まっている。
「他にはないのか……」
「これも面白そうですね」
「なになに……。彼女さんに鞭でビシバシされながら、『僕は駄犬です。わおーん!』と叫ぶ……って、できるかー!」
こいつらぁ……。匿名をいいことに無理難題を言いやがってぇ~。
楓坂は少し残念そうに苦笑いをする。
「そうですよね。こういうのは隠れてしたいですものね」
「隠れていなくてもしたくないっつーの」
「私はしたいですよ」
「ビシバシされるの、俺なんだけど?」
……なんか楓坂のやつ、本当にがっかりしてる。
そんなに俺を鞭でビシバシやりたかったのか。
でも楓坂って、確かに女王様キャラが似合いそうなんだよな。
って! だからって、鞭でビシバシはお断りだ!
そして楓坂はしなを作って、かわいらしくおねだりしてくる。
「ねぇ、笹宮さん。ちょっとだけならいいでしょ? 誰にも言わないから、少しだけやらせて?」
「絶対に嫌だ」
「ふんっ! ホント、わがままな人ですよね」
楓坂がそう言うと、スマホの向こうで結衣花が『だね』と楓坂に同調する。
くぅ……。二人とも痛い目に遭うのが俺だと思って、言いたい放題だな。
ここで結衣花がある企画に目を付けた。
『じゃあ、これなんていいんじゃない? 新着の上から四つ目』
「なになに……。彼氏さんと彼女さん、どっちが猫にモテるか勝負? うん、これならまともっぽい」
俺はこう見えて動物に好かれるからな。
この勝負は勝ったも同然!
しかし、猫か……。
この辺に猫カフェなんてあったかな?
すると結衣花が言う。
『うちの家、猫を飼ってるよ』
「協力してくれるのか?」
『うん。今日は土曜日だし、二人で来て』
結衣花の家か。
今まで電車で会うことはあったが、こうして家に行くのは初めてだな。
なんか、女子高生の自宅に行くのって罪悪感があるけど、楓坂もいるし大丈夫だろう。
じゃあ、ここはお言葉に甘えさせてもらおう。
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次回、結衣花んちの小猫ちゃん。
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