指輪選び
楓坂にサプライズを仕掛けることになった俺は今、駅ビルに指輪を買いに来ていた。
「しかし、指輪か……。初めて買うから緊張するぜ」
「楓坂さんの指のサイズは調べておいたから安心して」
「準備いいな」
「まぁね」
結衣花に案内されてジュエリーショップへ向かう。
だがそこは、見覚えのある店だった。
「あれ? この店って……」
「うん。お兄さんと御曹司さんがイベント対決するクライアントさんのお店。有名なジュエリーショップだし、ちょうどいいと思って」
レヴィさんが経営するジュエリーショップは二十代にターゲットを絞っている。
白を基調とした清潔感のある店内は女子向けのデザインとなっていた。
店内に入ると異世界のお城に迷い込んだような錯覚すらある。
高級感はあるのに楽しさを演出できるのが、レヴィさんのセンスのいいところだろう。
すると俺達に気づいた店員が挨拶をする。
「いらっしゃいませぇ~」
「このお兄さんのカノジョさんにプレゼントする指輪を買いに来たんですが、オススメとかありますか?」
「はい、もちろんです。すぐにいくつかご用意しますね」
へぇ。さすが女子高生。
こういう場面でも物怖じしないのはさすがだ。
でもちょっと意外だな。
結衣花って人見知りする性格だから、こういう時はいつも俺の後ろに隠れるのに……。
ちょっと聞いてみよう。
「結衣花って初対面の人は怖がるのに、店員さんの前だと普通なんだな」
「こういうのは時と場合によるの」
「へぇ。人見知りの新常識というわけか」
「次のテストに出るから、ちゃんと覚えておくように」
「へいへい」
自分のペースの時は調子いいんだよな。
だいたい次のテストってなんだよ。
人見知りの問題なんてでるわけないだろ。
はっはぁ~ん。さては人見知りをせずに話ができたから、内心すごく嬉しいんだな。ういやつめ。
そんなやり取りをしていた時、店員がいくつかの指輪を持ってきた。
「お待たせしました。今人気なのはこちらの商品になっています」
指輪って普段あまり見ないから気づかなかったが、結構いろんな種類があるんだな。
宝石だけじゃなくて、リングの形状もいろいろだ。
さすがに選ぶのは難しい。
「むぅ……。どれもいいと思うんだが……」
すると結衣花が言う。
「楓坂さんならシンプルなものがいいと思うよ」
「そうなのか?」
「うん」
確かに楓坂の性格から考えると、シンプルなものを好むのかもしれない。
というより、あいつにはそう言う指輪が似合いそうだ。
やっぱり結衣花が来てくれて助かった。
指輪を選んで購入しようとしていた時、よく知っている女性が俺に声を掛けてきた。
「あら、笹宮君じゃない。どうしたの?」
「レヴィさん?」
そう。現れたのはこのジュエリーショップの女社長・レヴィさんだ。
金髪のロングをサラリとなびかせて、こちらに歩いて来る。
「もしかして、指輪を買いに来てくれたの?」
「はい。以前お話したカノジョに贈ろうと思いまして」
「カノジョさんに?」
レヴィさんはなにか勘違いしたらしく、結衣花を見て目を丸くした。
私服であるとはいえ、結衣花をみれば十代半ばだと言うことはすぐにわかる。
きっと『どうして女子高生と付き合っているのか?』と疑問に思ったに違いない。
「えっと……、その……私じゃないのです」
結衣花は小声でそう言うと、逃げるように俺の背中に隠れた。
「なんで急に人見知りモードになってんだ? 店員さんの前なら大丈夫なんじゃないのかよ」
「だってあの人、オーラがすごいんだもん」
「法則がわからん」
「人見知りのメカニズムは複雑なんだよ」
「自慢されてもだな……」
とはいえ、レヴィさんのオーラについては理解できなくはない。
デキる女オーラが凄いんだよな。
男の俺ですら圧倒されそうになる。
「ふふふ。笹宮君は女子高生からもモテるのね」
「いや、本当にそういうのではないので……」
「隠さなくていいわよ。今のやり取りを見ただけで、二人が仲良しなのはわかったから」
レヴィさんが楽しそうに俺の後ろを見ると、結衣花は「あぅ……」と小さく声を出した。
よっぽど苦手みたいだな。
「結衣花が照れて小さくなるなんて、レアな場面だな」
「もぉ……、からかわないでよ……」
こうして俺は楓坂に贈る指輪を購入した。
さて、まだ時間もあるし、少し駅ビルの中をぶらっと歩いてみるか。
突然の活動休止報告でお騒がせしてすみませんでした。
たくさんの優しいコメントを頂けて、とても嬉しかったです。
本当は一ヶ月以上お休みするつもりでしたが、一日も早い復帰を決断することにしました。
これからも楽しい作品をお届けできるように頑張ります。
本当にありがとうございます。
次回、結衣花と楽しい食事!?
投稿は【朝7時15分頃】
よろしくお願いします。(*’ワ’*)




