考えるんじゃないよ、感じるの。
「夢奴だ! セリーヌ、シルヴァガントを使って!」
え? ムド? っていうかセリーヌって。
「使うって言ってもどうやったら……」
「考えるんじゃ無いよ、感じるの! 心が教えてくれるから!」
うく。感じろっていっても何を感じれば良いっていうのさ!
あたふたとしてる間にこっちに迫ってくる三本足。
触手? みたいなのをうねうねさせながら近づいてくるのが気持ち悪い!
ヴァ!
って音? 声? がしたと思うと、ズン!って意識の塊みたいなのが飛んできた。
空気を思いっきり圧縮してこちらに飛ばした? そんな感じで。
弾かれるように後ろに飛ばされるボク。
いったぁ。
またも尻餅をついたけどなんとか意識は刈り取られずにすんだ?
ブン!
その三本足の黒い塊は触手を鞭のように飛ばしボクに迫る!
嫌! 怖い!
真っ黒な霧が辺りに立ち込め身動きが取れない?
なんで!
鞭がボクに当たると思った瞬間。
バン! と、ボクの手前で何かに阻まれるその触手。
「もう、世話がやける!」
そんな声が聞こえたかと思った所で意識が途切れた。
☆☆☆
グーんと浮遊するような感覚に意識を取り戻すと。
「ん? 気がついたか?」
そうボクを抱いたまま空を駆ける男の人?
っていうかボク、おひめさま抱っこされてない?
うー。恥ずかしい恥ずかしい。
「あああああ、ごめんなさい。重かったでしょう? ほんとごめんなさい」
とにかくそれだけ言うのが精一杯で。
「重くはないよ。っていうかおまえ華奢だなー。もうちょっと肉つけた方がいいかもな」
て、て、て、なにそれ! なんだ恥ずかしいを通り越して。
「肉つけた方がってなにそれ! もういい! 下ろして!」
なんだかすごく恥ずかしい事を言われた気がして思わず怒ってそう手足を振り回す。
触られてる身体とか全身が、なんだか性的な対象に見られてる気がして。なんだかすごく嫌。
「って、あんた誰!? どうやっていきなり現れたの!?」
そう怒鳴るように怒るボクに、彼、ちょっとニヤついて。
「助けてやったのにそれはないだろう、さ」
そう、地面に降り立ちボクをそれでもスマートに下ろすと、手を広げて首を振った。
ああ。なんていうかすごくイケメンなんだけどどことなく三枚目風?
でも、そうだよね。どことなく既視感。って、これは何?
「俺はシルヴァ。おまえの騎士さ」
と、そう言った。
銀髪で長身、すらっとした手足。服装は何故か執事服?
そしてその顔、は。
ああ。これは。
ボクの顔、だ。
それも思いっきり男性化したボク。
なりたくなかったボクの、多分数年後はこうなってしまって居ただろうそんな可能性のボク。だった。
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