生きる事。
目の前の女神は両手を広げると、あたしを包み込むようにゆっくりと抱きしめた。
金色の粒子がふんわりと周囲に舞い。
ああ、もしかして成仏とかするのかな……、って、え? 成仏って、何? どこの言葉……?
自分で思い浮かべておいといてそれって何なんて何だか変。
でも、このまま天国にでも連れてってもらえるのかな。そんな風に考えて。
なんだか身体がほかほかあったかくなって。
気持ちのいい風が全身を洗い流してくれるような、そん感覚を味わって。
「このままあたし死ぬのかな。死んだ後ってどうなるのかな……」
そう、ポツリとこぼす。
「何を言ってるんですか! あたしは貴女を助けるためにここに来たんです。死なせませんよ。っていうかもう生き返らせちゃいました!」
えー?
足元にぼんやりと倒れてるあたしの姿が浮かび上がった。
ああ、血だらけ。
これじゃぁ助からないよね、って、そんな感じだったのに。
なんだかほおに赤みがさしてきて、ただ寝てるだけみたいな姿に見えてきて……。
ほんとに生き返っちゃった?
「こんなふうに生き返らせる事ができるのは一回だけ、です。あんまり自然の摂理に反した事をするとこの世界そのものが崩壊しちゃうかもしれませんし。だから……。お願いだから死んじゃってもいいやとか、思わないでください。お願いですよ……」
あう。
なんだか女神様、すごく悲しそうな瞳をして。
生きる事に意味を見出せなかったあたしの心に、何か、が、刺さった気がした。
ラギー!
遠くからそんな声が聞こえてきた。
あれは……。
おにいちゃん。
あたしの大好きな、この世界であたしが唯一心を許せる人、兄、ジーク。ジークフリード・ラス・レイズ。
あたしのことをラギとミドルネームで呼ぶのは彼だけで。
横倒しに倒れた馬車の上でギシギシと音がしたかと思ったら、扉が強引に開けられ。
明かりがさして逆光の中ではあったけれどそこに。
「ラギ! 大丈夫か!」
と、心配そうな顔をしている兄ジークの顔が見えた。




