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迷い込んだ異世界。

「え? どういうこと、ですか?」


 ちょっと頭がパニックになって、それだけしか声に出せなかった。


 ダントさん、隣のマーリンさんと目配せして。ちょっと鼻の頭をかいて言いにくそうに話し出す。


「まあ、な。嬢ちゃんがあんまりにもこの世界の事について常識を知らなすぎるっていうのがそう考えた理由なんだけどな……」


 一呼吸、おいて。


「最初はどこぞの深層のお嬢様かと思った。だから常識もあまり知らないんだと。しかしな。あんたはどうも違う。それに、意識してるかどうかわからないが、さっきあんたぼそっと言ったんだよ『マシンメア=ハーツ』って。俺たちが迷い込んでしまったこの異世界の名前を」


 えー?


 ってちょっと待って。


 ダントさんも?


 もしかしてマーリンさんも?


「もしかしてダントさんたちもマシンメア=ハーツのゲームを?」


「ああ。もう10年前、になるがな」


 あう。なんて事。


「ボクは昨日やっと手に入れたゲームにログインしようとしたらここに来ちゃったんです……」


「俺たちはさっきも言ったようにここに来て10年になる。合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス出身だ」


「ボクは日本人です。佐藤悠希って名前でした。に、しても10年って。確かあのゲーム発売してまだ半年だった気が……」


「時間軸が違うんだろうな。他にもこの10年の間セリーヌ嬢ちゃんのように迷い込んでくるやつもいたが皆バラバラだった」


「日本人って言えば先月迷い込んで来た子もそうだったわね。職業勇者のあの子、名前なんて言ったけ?」


「タクマ、だったかな。もちろんハンドルネームだろうけどね。君のセリーヌみたいに」


 え?


 タクマ?




 まさか。日本人いっぱいいるしタクマって名前だって珍しく無いし。


 でも。


 もしかしたら拓真もここに来てるの?


 だったら会いたい。


 会って話がしたい……。




「そのタクマさんって、どんな人でした?」


「んー。勇者? 完全に勇者なりきりプレイ中って感じだったかな? この世界には勇者なんていないって言ったら黙ってこの街から出て行ったけど……」


「背はシルヴァさんくらいかな。髪の毛青くって。顔はイケメンな感じ。ってごめんなさい覚えてるのそれくらい?」


「いえいえ。友人でおんなじ名前のがいたので、ちょっと気になって」


「そうか。友人なら会いたいよな」


 ああ。


 タクマなら嬉しい。


 もう会えないと思っていたから。


 でも。


 タクマまでもがこの世界に迷い込んでいるのだとしたら、と、それを喜ぶボクを嗜めるボクもいて。


 まるで不幸になった友人を一緒に不幸になったと言って喜んでいるような気もして。


 自分が許せなかった。

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