食糧問題とアフリカ
公益社団法人ACジャパンのコマーシャルで「命がけの行列」(国連WFP協会)と言う物がありますが、皆さんはご覧になったことはあるでしょうか?
内容は、今日一日の食糧を得るために待っている人たちの数が8億人も居るという事。
そして、そのために国連WFP協会に援助をして下さいというものです。
「これは大変!直ぐに援助しないと‼」
単純に、このコマーシャルの文言だけを耳にすると誰もが、そう思うと思います。
食糧危機や飢餓と言えば、真っ先にアフリカや中東を思い浮かべる事でしょう。
実際に、戦争や紛争地域を除けば、慢性的に“飢え”に苦しんでいる地域は上記の通りで間違いありません。
食糧危機で支援を求めるコマーシャルフィルムで、よく登場するのがやせ細った赤ちゃんや子供たちです。
可哀そうですよね。食べられないで死んでゆくなんて。
乳児死亡率、つまり生まれて1年以内に何らかの理由で亡くなられる赤ちゃんの割合は、日本で約2%ですが、
シエラレオネ(81%)
中央アフリカ共和国(81%)
ソマリア(74%)
ナイジェリア(74%)
など西部・中部アフリカ諸国で多く、その平均値は63%と世界平均(28%)を大きく上回っています。(※2021年ユニセフ「子供白書」より2019年のデーター引用)
この乳児死亡率は飢えだけではなく、病気も含みますが大変な事ですよね。
「あらあら大変、直ぐに募金しないと‼ 募金って、どうやってすればいいの!?」
たしかに人道上、これは直ぐにでも募金をして食料を届けなければ……。
もしWFPに援助金を送ることで西部・中部アフリカ諸国の乳児死亡率の平均値が半分の30%ほどに下がったとして、それで私たちは安心できるのでしょうか?
西部・中部アフリカ諸国の飢餓人口は、900万人の子どもを含む4,800万人と言われています。
死亡率が下がると言うことは、逆に言うと生存率が上がるという事です。
生存率が上がると、当然人口も増えます。
人口に見合って、経済力が上がらなければ、それは只単に飢餓人口が増え続けるだけですよね。
「人口が増えると言っても、この少子化の世の中だから、そんなに心配する必要はないだろう」 なんて気楽に考えていたら大変です。
ニジェール(8.0)
ソマリア(7.25)
アンゴラ(7.20)
エチオピア(6.14)
上記の数字は、出生率です。
出生率とは、ひとりの女性が一生に産む子供の割合を示したものです。
全ての人口が女性で、女性のみで受精して出産が出来るのであれば、出生率は1×(1+子供死亡率)があれば現状を維持できます。
ちなみに2022年の速報値によると日本の出生率は1.26で、男女比率は男性49%:女性51%となっていますから急激な少子化に向かっていることが数字上でも良く分かりますよね。
話をアフリカ諸国に戻しますが、モロッコ、チュニジア、南アフリカを除くアフリカ諸国の出生率は軒並み4を超えています。
そして現時点でもアフリカ諸国の人口増加率は常に前年比2~3%ずつ増加していますから、国連WFP協会の要請に応えて寄付を続け、生存率が格段に上がった場合アフリカ諸国の人口は爆発的に増えることは簡単に予想できます。
今回この問題に際して、特にアフリカを取り上げたのは理由があります。
それは、アフリカの問題は非常に厄介だという事です。
植民地支配の手間を省くために少数民族に特権を与えて、その他の沢山いる部族を奴隷として扱わせるようにしたことは現代に続いている問題となっています。
そのために部族間の憎み合いは非常に激しく、今も集落ごと全滅に追い込むような暴動が度々行われています。
それにも増して、問題なのはアフリカの発展と、自然保護の関係です。
欧州に限らずアフリカ以外の大陸では、大小の規模の違いはあっても各所で独自の文化が栄え、その中心に国が生まれる事により発展を遂げてきました。
文化の発展と自然破壊はセットになっていると考えていいくらい密接な関係があります。
何故なら、多くの人が安全に暮らすためには、見晴らしの良い広い土地が必要になるからです。
見晴らしの良い広い土地は、猛獣の接近や、他の部族の襲撃をいち早く発見することが出来るだけでなく農耕にも適しています。
西ヨーロッパでは多くの森林が伐採され、オオカミやクマなどの野生動物が生活環境を奪われてほとんど居なくなりました。
ところがアフリカ大陸では、著しく発展した文化は芽生えませんでした。
そのおかげで自然は破壊されずに残り、貴重な野生動物も多く残りました。
そこに近年、文化がもたらされました。
人口は爆発的に増え続け、その台所事情を満たすためには今まで先進国の人たちが行って来たように、森林を伐採して農地を得るしかありません。
つまり野生のゴリラの住む森は伐採されてキャッサバの農地へと変わり、ライオンや像などの住むサバンナはトウモロコシのプランテーションに変わらざる負えなくなるという現実が待っているのです。
はたしてそうなったとき、誰が野生動物を、どう守るのでしょう?
現在の世界人口は約77億人と言われていますが、2080年代中には約104億人まで増えることが予想されています。
問題なのは、その時までに石油などのエネルギーや、食料などが世界中に行き渡るのかです。
なにかエネルギー資源や、海洋植物などの取り合いで凄惨な世の中になっていそうで怖い気がしてなりません。