プロローグ
更新頑張りますから見捨てないで下さい。
『貴方はこれから勇者となり、世界を救う旅に出ます。その過程で仲間たちに出会い、力を合わせて強大な力を持つ敵に立ち向かったとき。きっとそれは素晴らしいモノとなるでしょう』
脳内に響く声。機械的な物でありながら、何故か逆らえないような力を持つ不思議な声。
直後に手の甲に激痛が走る。
そこには今まで見たことのない紋章のような、幾何学模様が刻まれていた。
『それは勇者の証。絶対的悪に立ち向かう正義の紋章。貴方はその力を受け入れてしまったのよ。もう、それは貴方の運命の因子に強く結び付いてしまったわ。ほら、旅に出ましょう。外には貴方の頼れる仲間たちが待っているわ』
再び響くその声は、まるで夢の会話のようにふわふわして、雲をつかむような手応えさえないのに、脳はそれこそが答えだと勝手に判断してしまう。信じてしまう。
目の前に、突如として大きなドアが現れる。
そこからは目映い光が漏れており、自分のことを歓迎するかのように開いている。
一歩、また一歩。ドアに吸い込まれるように足が進む。
『いってらっしゃい、私の愛しい子。どうか、貴方のこの先の運命に幸がありますように』
ドアの先の空間に手を入れる。ドプン、と沈み混むような感覚。それを境に全身が引き摺られ、ついには頭も飲み込まれ、そして────
『“敵”を倒すのよ。自分の信念と良心に従って、決して善悪を見間違えてはいけないわよ。クスクスクスクス』
最後に、そんな声が聞こえた気がした。
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「...あれ、夢?」
「こら、いつまで寝てるつもりなの。早く起きなさい!」
朝、小鳥たちの囀りが微睡みの中にいる自分を必死に起こしてくれているような幸福感に包まれていると、入り口から少女特有の甲高い声がする。
「ふぁ...おはよう、シャルティ。今日も早いね」
「あんたねぇ...いくら初夏で暖かいからって、そのまま二度寝は許さないからね?」
シャルティと呼ばれた金髪の少女は呆れたように目の前の少年を叱る。幼い顔付きの彼女はよく未成年と間違えられるが、今年で十五。この国で成人は十三のため立派な社会人である。
ただ、顔付きと同じくらい、はたまたそれ以上に肉付きも薄いことが彼女のコンプレックスだ。
少年は寝癖の暴れる髪の毛を掻き、もう一度欠伸をしてから四足歩行でテントの外へ顔を出す。
「やっぱり、山の中は空気が澄んで美味しいよね」
「まったく。早く準備しちゃいなさい?いつ魔物が襲ってくるか分かったもんじゃないんだから」
そう言い、いそいそと自身の防具を着けるシャルティ。
「あれ、みんなは?」
「ゴルバとミラは当番、ルシアは...多分身体を洗いに行ったわ。ところでアスト。貴方、寝癖をどうにかしてきたら?だらしないったらありゃしないわよ」
少年──アストはその言葉に素直に従い、近くにある川へと足を運ぶ。
その頃には夢のことなどすっかり忘れ、今日の朝食のことで頭がいっぱいだった。
魔王が世界に現れ、人間界に侵略を始めて早三年が経過する。時を同じくして、手の甲に不思議な紋章が浮かび上がる五人の少年少女が王宮に集められた。
王様は言った。
“そなたらは世界を救える才能を持つ人間なり。その甲に刻まれし勇者の証こそ神々が人間に授けた魔王打倒への道しるべ。ゆけ、救世の勇者たちよ”
かくして彼らは世界を救う勇者として、魔王を倒す旅が始まった。
“剣”の勇者ゴルバ
“魔法”の勇者シャルティ
“格闘”の勇者ミラ
“精霊”の勇者ルシア
“盾”の勇者アスト
長く、辛い日々の始まり。世界を救うプレッシャーを彼らに背負わせるには、あまりに背中が小さすぎる。
妥協は許されず、一刻も早く国民を安心させるために、今日も拙い足取りで野山を駆ける。
旅の到達地点に、何が待っているかも知らずに。
いちおう王道を目指してます。
ですが、途中でルート変更もあり得ます。