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シークレットツアーご招待!?

家族と話をしていたら「それ書いて」と言われたので書いてみました。



話も更新もゆっくり進みます。

 

 その日、幸子(さちこ:58才)はいつものスーパーの特番セールで勝ち取った戦利品を両手にぶら下げ『あそこもちょっと値引きが渋なってきたなぁ』と呟きながら帰宅し、いつもの様に郵便受けの確認をした。


 すると、たまにバスツアーを利用する旅行会社からのDMがきていた。

 この旅行会社はごく稀に格安ツアーを出すのだが、それは常連客向けの特別優待のDMでしかお目にかかる事はないらしく、幸子はまだそれを手にしたことはなかった。

 なのに何故知っているのか?

 それは、バスツアーでたまに一緒になる人が、実際にその特別優待のDMが届いたとかでそのツアーに参加しており、『ナイショよ?』と言いながらも優越感に浸りつつ、その時のツアー参加者全員に見せびらかしていた事からも、本当の事である事が伺えた。


『いつも月一でしかDM来うへんのに・・・まさか、コレ?』


 逸る気持ちを抑えつつ家の中に入り、両手にぶら下げたままの戦利品入りエコバッグを取り敢えず台所のテーブルに置き、居間の棚の引き出しに入れてあるカッターナイフを手に取ると、いつもは手で破る封筒をカッターナイフを使い丁寧に開封する。

 封筒の中を覗くと、そこにはA4くらいの白い紙が三ツ折りになって入っており、見せてもらった特別優待はカラーのド派手な広告のようになっていた事から


『なんや、特別優待のとちゃうかったんかいな』


 と、がっかりしながらその紙を取り出した。


「ま、封筒の厚みがぺらかったから、違うかな?とは思とったけど、特別優待やないんやったら、何やろね?」


 そう言いながら、折り畳まれている紙を広げるとそこには


『おめでとうございます!

 今回、貴女がシークレットツアーにご当選されました!

 当社自慢のシークレットツアーに貴女様と同行者1名様を特別ご招待致します!』


 との文字が。


「よっしゃああぁぁぁ!!!!

 優待どころか、ご招待やったあぁぁぁぁぁ!!!」


 幸子は紙を持ったまま両手を突き上げ、歓喜の声をあげた。


 幸子のあげた声を聞き付け、居間の奥にある部屋から幸子の夫である幸夫(ゆきお:62才)が顔を出す。


「何やどないしたん?大きい声あげて」


 幸子のあげた声が切羽詰まるような声では無かった事と嬉しそうだった事から、幸夫はのんびりと幸子に声をかけてきた。


 幸夫の勤め先は65才で定年となっているので平日である今日、それも昼間に家にいるのは普通ならおかしな事であるが、定年を3年繰り上げ退職する事により、退職金の上乗せをしてもらう事が出来る制度を利用する事にした為、現在、退職日まで有給休暇の消化をしている状態であった。よって退職日までに実際出勤する事になっているのは、退職日当日と、自分の後に担当となる者と取引先との顔合わせに立ち会う関係であと2日程行く事になっているくらいであった。




 ちなみにこの夫婦、下の名前が『幸子』と『幸夫』と言う、漢字だけ見れば似ている事もあり、苗字も『福富(ふくとみ)』で何とも幸せそうな、縁起の良さそうな名前である事から、ご近所さんから『縁起物の夫婦(めおと)漫才師』などと呼ばれていたりする。

 もちろん、幸子と幸夫はかつて漫才師だった事はない。

 ないのだが、幸子は頼まれたら嫌とは言えない性格をしており、幸夫の方ものほほんとして物事をあまり深く捉えず『成るように成るさ』的な性格なので、頼まれて町内会の行事で漫才を披露する羽目になった事は、片手では足りないくらいにはあったりした。

 とは言え素人が人前で話せる事は、身の回りの出来事ぐらいしかなく、少し天然ボケが入ってる幸子と全く鋭くないのほほんとしたツッコミをする幸夫の漫才は、『癒し系漫才』としてご近所では結構人気があったりしたのだが、二人としては普通に日常会話をしてるつもりであったので、なぜ受けてるのかも、なぜ懲りずにこんな素人漫才を頼まれるのかも、いまいちわかっていなかったのだが。




 満面の笑みで両手を突き上げている幸子を見て幸夫は


「何かエエ事でもあったんかいな?」


 と、たぶん良い事があったのだろうと確信しながら問いかける。


「ほら!コレ見て!

 いつも使っ(つこ)てる旅行会社から、シークレットツアーのご招待やて!

『同行者1名もご招待』ってなってるから、ゆっきぃも一緒に行けるで♪」


「それはええけど『ゆっきぃ』は止めて、て」


 普段はお互いを『さち』『ゆき』と呼びあっているのだが、幸子は嬉しい事があったり、楽しかったりでテンションが上がると、幸夫の事を『ゆっきぃ』と呼ぶのが結婚前からのクセだった。

 若い時は多少照れながらも『さちが楽しそうだからまぁいいか』と思っていたが、さすがに早期とは言え定年するような年齢ともなると、照れや恥ずかしいより、呆れる気持ちの方が大きくなる。

 家の中だけならまだいいのだが、外でやられると、回りも微妙な空気になるのだ。

 まぁ、幸子自身はテンションが上がってる状態であるから、いつも気が付いていないのだが。


「『ゆっきぃ』って言うんやったら僕も『サッチー』言うで?」


 珍しく黒さの滲む笑みを浮かべ幸子にそう言うと


「それはイヤや」


 と幸子は満面の笑みのまま即答し


「それ言われたら、しゃあない。これから(なるべく)気を付けるわ」


 と、全く気を付けるつもりがないのが丸わかりの棒読み状態で答える。


「で、旅行会社からのツアー招待日って、いつなん?

 いつも行ってるんは日帰りのバスツアーやから、やっぱり日帰りのなんか?

 まだ会社行かなあかん日があるから、日によったら行かれへんで。」


「まだ見てへん。『シークレットツアーご招待』っての見てテンション上がって叫んでもうてたら、ゆきが来たから」


 そう言って居間の壁側に置かれてるソファーに座ると、改めて手に持ったままの紙をじっくり読み出す。

 このソファー、少し前に幸子がネットで見つけて一目惚れをし、幸夫に内緒で購入しようとしてたのを見つかり、その言い訳が


『最近、膝とか腰とか痛いから、立ったり座ったりがしんどい()うてたから、ゆきの定年退職祝いにしようと思てたのに!』


 だった為、ホントはソファーの色を真っ赤なのにしようと思っていたのが、『僕の退職祝いやねんから、もちろん僕が色決めてええやんな?』と黒い笑顔で言われてしまい、無難な少し濃い目のベージュになってしまって、泣くに泣けない哀しい想いをしていた幸子だった。



「ん〜と、日帰りとかは書いてないなぁ。日にちは何か幅があるんやけど、どういう事やろ?」


「よくありがちな、毎日出発とかやないんか?」


「でも、シークレットツアーやし、ご招待やし、そんな毎日行く人集まるかぁ?」


「いやいや、ご招待なんはその内のなん組かもしくは僕らだけで、行く人全部ご招待とはちゃうって。前に格安で来とった人おったやろ?

 ま、シークレットの方は好きずきやろうけど、ちょっと前に流行ってなかったか?」


 そう言われて幸子は、優待格安ツアーのDMを見せられた時の事を思い出した。そう言えば、自分たちは普通料金で来てるバスツアーに優待の格安料金で来てる人が混じってたわ、と。


「まあええわ。それちょっと見せて」


「うん、ええよ。はい、これ」


 幸子から手渡された紙を受け取った幸夫は、同じように幸子の横に腰掛け、胸ポケットから老眼鏡を取り出してかけると、折じわを綺麗に伸ばした。


「なあ、これ、この下のとこ、二重になってないか?

 分かりにくい加工されてるし、めくりにくなっとるけど」


「ん?どれ?・・・あっ!ホンマや、よう気ぃ付いたなぁ。

 さすがゆき。伊達に長年書類仕事してないわ」


 別に書類仕事だけをしていた訳ではないし、書類仕事をしてたから気が付いた訳でもないのだが、それを言うとまた話が脱線し長くなるのは目に見えているし、自分で勝手に納得して感心してくれているので「そうやな」と軽く流すだけにしておく。


「んじゃ、ここめくってもうてええか?」


「あ、待って!もし(なん)かあった時用に写メとコピーとっとくわ」


 別にこれを撮った後、誰かにメールで送る訳ではないのだが、幸子は携帯電話で写真を撮る事をなぜか全て『写メを撮る』と言う。これもいちいち突っ込むと後で面倒くさい事になるし、幸子がそう言う表現をずっとしていてわかっている幸夫は


「それじゃ、はい」


 とその紙を幸子に手渡そうとすると


「机に置いたままやと撮りにくいから持っといて」


 と言い、それじゃとそのまま紙の左右を持って幸子の方に向けると


「その持ち方やなしに『勝訴!!』みたいな持ち方でして」


 と言うので、はいはい、と軽く返事をして紙の上下を持つ様にして幸子の方に向け直す。


「うん、えぇよぉ〜。はい、にっこり(わろ)うてぇ〜・・・はいっ!」


 何ともタイミングの取りにくい指示を出されながらも、言われたように微笑みを浮かべる幸夫ではあったが、気になる事があった。


「なぁ、これ別に僕が写っとらんでもええのとちゃう?

 てか、僕も入るように写しとったら、文字なんか小さすぎて見えんやろうに」


「うん?とりあえず記念的な?

 まぁ、ゆきも写っとるのとズームにして大写しになってるのと2枚撮るからええやん」


 自由な幸子である。


「んじゃ、私は撮ったやつ確認しとくから、ゆきはプリンター出しといて」


「はいはい、っと・・・ボソッ(ほんま、人使い荒いなあ)」


「なんか()うた?」


「いぃ〜えぇ〜、さちの役に立てて嬉しいなぁ〜、ってね」


 幸夫はそう言いながら、ほぼコピー機としか使っていないプリンターを奥の部屋から持って来てテーブルの上に置き、コンセントプラグを挿し本体の電源を入れ、コピー用紙をセットする。


 その時、携帯で撮った画像を確認していたはずの幸子から幸夫に声がかかった。


「なぁ、何かなんぼ大写しにしても、文字が見えへんのやけど、一回ゆきが見てみて。私はその間にコピーしとくから」


 そう言って携帯を幸夫の方に差し出す。


「え〜、あんまり詳しないのに」


 そう言いながらも幸子から携帯を受け取り、画像を確認する。

 が、やっぱりどれだけ拡大して見ても、初めから白い紙を持っていたかの様に何も写し出さなかった。

 不思議に思いながら色々試していたら、幸子から声が上がる。


「何これ!」


 その声に携帯を手にしたまま幸夫は幸子の方に寄っていった。


「これ!『コピー不可』って」


 そう言われて、幸子が手にしていたコピーされた紙を見てみると、確かに『コピー不可』の文字が用紙いっぱいに大きく写し出されていたのである。


「あ〜、これ、あれとちゃうか?

 役所なんかで取った住民票とか、不正出来ん様にコピーしたら文字が浮き出てくる様になってるやつあるやん?

 あんな感じになってるんとちゃう?」


 幸夫がそう言うと、幸子は不満そうにプリンターから原紙である送られて来た紙を取り出し、コピーされた物と並べる。


「これ、役所でもらったやつやとコピーした時色に出ぇへん薄い水色とか緑色が元から全体的についてて、コピーしたら元の文字も載ったまま『コピー無効』とかが浮き出る様にはなってるけど、これは元の文字は全く写ってないし、紙の色も白いやつやし、こんなんどうやったらなるんよ?

 で、そっちはどうなん?

 写メの方は文字見えた?」


 幸子にしては中々鋭い所を突いてると思いながら用紙を見比べていた幸夫は、急に話を変えられ、しかも振ってこられて、一瞬思考が追い付かず止まってしまう。


「なにフリーズしとんのよ?」


 そう言いながら幸子は幸夫の背中を平手で叩いた。

 バシッ、とかなりいい音がして、幸夫は「(いつ)っっ!!」と背筋を伸ばすような感じでのけ反る。と、その反動で手に持っていた幸子の携帯を落としてしまう。


「あ〜、私の携帯ぃ〜〜〜

 もう、壊してないやろな?

 ゆき、しっかり持っといてぇよ」


 幸子たちの家の居間の床は畳であり、置かれているテーブルは実は冬になるとコタツとして利用出来る煖卓(だんたく)であった為、座ったり寝転んだりした時に足とか腕に畳のあとがつくのを嫌がった幸子が、年中コタツで使う用のかなりふかふかしてる上敷きを敷いたままにしている。

 もちろん、今は季節柄コタツ布団は掛けていないが。

 なので、板張りの床と違いかなりのクッション性があるので、幸子も実際には携帯が壊れるとは思っていないのだが、一応、そう言っているだけなのである。

 ちなみに、ソファーはその座面とテーブルの高さがほぼ同じだった為、テーブルで何かする時は、背もたれになっていた。

 ソファーが置かれてから、居間が結構カオスな見た目になっているのだが、自分たちが楽であり、使いやすいのだからと、全く気にしていない幸子と幸夫であった。

 余談だが、このソファーの色が幸子のもくろみ通り、真っ赤なのになっていたら、この空間がもっとカオスな状態になっていたのは、言うまでもない。



「ごめん、ごめん」


 幸子が背中叩くからやん、と思いつつも反論したところで、その倍以上の文句が返ってくる事を、経験上イヤと言う程理解している幸夫は、とりあえず謝罪の言葉を言っておく。

 実感がこもっていようがいまいが、謝罪の言葉を口にしたと言う事実さえあれば、幸子はいつまでもぐちぐちと文句は言わないので、ある意味やり易かった。

 それに、お互いがいつまでも1つの事を引きずらないのが、夫婦円満の秘訣であると、幸夫は思っているのである。

 幸子がどう思っているのか確かめた事はないが、何事に対してもあっさりしているので、こだわらないと言うか、引きずらないタイプではあるのだろうと思っている。

 まぁ、熱しやすく冷めやすいと言えなくもないし、三日坊主とも言えるのかも知れないが。



「あ〜、っと・・・やっぱり文字写ってなかったで」


「そっかぁ〜

 じゃ、仕方ないな。現物、持ち歩くか。

 本物は記念に家置いといて、しまっとこうかと思ってたんやけどなぁ。

 コピーのんは、見せびらかし用に持っといて。

 こんなん、当たった事ないからちょ〜っと自慢してかったんやけどなぁ。

 ほら、いつもバスツアーで一緒になる人とか、一緒になる人とか、一緒になる人とか・・・」


「あぁ、あの人らか」


「うん!それと、格安ツアーの『優待』の方のん、見せてきた人やね」


 そう言うと、幸子と幸夫はお互いに顔を見合わせてニヤリと笑う。


「お主も(わる)よのう」


「いやいや滅相も御座いません。お代官さまにはとてもとても」


 格安ツアーの優待DMを見せびらかしてきた人は、幸夫もよく知っており、特にどこがと言う訳ではないのだが、強いて言えば全体的に合わないと言うか、いけすかない、あまりお近づきになりたくないタイプの人であり、なのにあちらさんはこちらを構ってくると言う、幸子と幸夫にとって珍しく『面倒くさい人』として認識されている人物なのであった。

 だから、実際には二人ともいくら自慢する為と言えども、関わる気は全くなかった。

 つまり先程のやり取りは、完全に遊んでいただけなのである。

 こんな所で、無駄に息の合った所を見せる、似た者同士の仲良し夫婦な幸子と幸夫なのであった。



「で、どうする?

 このまま置いとく?それともめくってみる?

 さちに来たやつやから、さちが決めて」


「そんなんもちろん・・・どうしよな?」


「なんや、決めてないんかいな」


「そうやね。てか、今思い出したんやけど」


「何を?」


「私、買い物から帰って来た時にこれ郵便受けから取って来たんよ」


「うん、そうみたいやね」


「で、もしかしたら格安ツアーの優待かも、って思って、買い物してきたやつ、とりあえず台所のテーブルに置いたまま・・・」


 幸子がそこまで言った時、幸夫はすでに台所へと走っていた。


「ああぁぁぁぁぁあ・・・僕のアイスがぁぁぁぁっっ!!」


 幸夫の叫びを聞きながら、同じく台所にやって来た幸子は、エコバッグの中身を手早く冷蔵庫と冷凍庫に片付けていく。


「ごめん、て。わざとやないんやし。

 それにこれくらいやったら、2時間程入れとったらまた(かた)なるから、大丈夫やって」


 分かりやすく哀しそうに落ち込んでいる幸夫に対し、証拠隠滅とばかりに買ってきていたアイスを次々冷凍庫に仕舞っていく。


 実際、今の季節は真夏ではないし持って帰って来る時にドライアイスも入れてもらっていたので、原形が無くなる程溶けてしまっている訳でもなく、幸夫の好きなカップ系のアイスは少し柔らかくなっている程度だったのだ。

 なので普通であれば反対に丁度よく食べやすい固さになっており、そこまで哀しむ事でもないのだが、幸夫はカチカチのを「固い、固い」言いながら、薄く削いでいくように食べるのが好きだったのである。

 ちなみに幸子が自分用に買ってきたのは、お徳用の箱に入ったスティック系のアイスだったので、どちらかと言えばこちらの方が被害は大きく、特に箱の外側の方になっていたモノは、個別になってる袋の中でスティックが抜けかけており半分近く溶け原形が見当たらず、このまま凍らせると、食べる頃には新たにその袋の形になったモノを食べる事になるのである。

 しかし幸子にしたら、もちろん完全に溶けてしまっていたら、冷たくないのはアイスじゃないとは思うのだが、多少溶けていようが崩れていようが、食べるのに袋から出しにくいと思う程度で、味はそれほど変わらないとあまり気にしないのであった。

 なので考え方としたら、幸夫よりも幸子の方がより幸せなのであろう。



「まぁ、どうせすぐには食べへんやん。

 いつもお風呂上がりにしか食べへんのやから、その頃にはしっかり固なってるって」


「そらそうやけどぉ〜〜〜〜」


「いつまでもぐじぐじ()うんやったら、もう今度から買って()うへんわっ!

 全部、自分でしいっ!!」


「わかったって。ごめんな。

 せやから、そんな事言わんといて?

 ・・・さち、愛してるで」


「も、もう、なんやの!いきなりっ!

 そんなで誤魔化されへんからね!

 てか、ゆきが、わ、私の事好きなん知ってるしっ!!」


 なんだかんだ言いつつ、結局じゃれている仲の良い二人なのであった。




「じゃ、気を取り直してぇ〜、めくるでぇ〜」


「おお〜〜!!ドロロロロロロ・・・」


「って、さち、そのドロロロは何なん?」


「ん?盛り上げ用のドラムの音?」


「何で自分でしててクエスチョンマークやねん・・・

 まぁ、ええわ。ホンマに僕がめくってええねんな?」


「ええよ、思っきしいったって!」


「イヤ、これ、慎重にいかんと、変なとこやぶれそうやで?

 かなり、薄いし」


「そうなん?じゃ、慎重にお願いしますっ!」


 ぴっ、と右手の先を額につけるように幸夫に向かって敬礼もどきをする幸子に、相変わらず変なノリをしてると思いながらも「はいよ」と返事をし、やっと二重になっている部分の端でめくり易そうな所に爪を入れ、ゆっくりと慎重に剥離を進めていくのであった。






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