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第九話・直感

ここからラカ中心の視点じゃなくなります

 「証拠は?」

 後の二人は何も言わない。

 「証拠はあるんですか?」

 ラカの声は震えている。もしかしたら知り合いかも、という期待が音を立てて崩れていく。

 イスターは黙って前髪を掻き分けた。オイサイリアが辛そうにイスターを見る。

 彼の額には目の様な印があった。書いてあるわけでも、本物の目になっている訳でもない。ただ単に『ある』のだ。

 「これは…」

 「エアーの大神官の子孫のみに受け継がれる【引導者の証】です」

 「エアーの、ですか…」

 がっかりしたようなラカに、イスターが慰めの言葉をかけた。

 「まあ、何だ。【引導者】なんて偉ぶった言いかたしててもしょせんは服にしみが付いてるようなもんだ。たいしたこと無いよ」

 絶対に自分の言ってることの意味が分かっていない。

 オイサイリアは、今更ながらこいつ馬鹿だ、という顔で弟を見た。ラカは、状況が良く分からずポカンとしている。

 そして、オイサイリアが文句を言おうとした時、ふいに誰かの腹が鳴った。その音にラカが我に返った。

 「何の御もてなしもできずにすいません。今夕飯を作りますから、その話は食べながらでどうですか?」聞いているというのに返事も待たずに隣の部屋へ行こうとした。

 「そちらはよろしいのですか?」

 「やった〜。青のり入りで頼むぞ〜」

 イスターとオイサイリアが同時に言った。

 ラカはにっこりと笑う。

 「ええ、あなた方を引き止めたのは私の事情ですし」言葉を切って指を立てる。

 「料理をするの好きなんです」

 オイサイリアがそれに答えて微笑んだ。

 

 ラカが行ってしまった後、姉弟の話が始まった。

 「どうしたんだ、イスター。今日はやけに口数が少ないじゃないか」

 弟は考えながら答える。

 「うん。なんか、嫌な感じがするんだ。何か大切なことを忘れているような」

 そう。二人は忘れていた。こういう場面の決定的なオチを。

 「まぁ、気のせいだよな」

 「うん。まさか」

 「それはそうと、魔眼まがんのことどうやって話そうか…」

 

 「何か、変な匂いがする…」

 それに最初に気付いたのは鼻と耳の良いオイサイリアだった。

 「あと、ガリガリっていう不自然な音も…」

 その時だった。

 「できましたよ〜」

 と言うラカの声。

 「まさか…」

 イスターにもそれが分かったらしかった。

 

 ラカが持ってきたものは、この世にあるまじきナニか、いやもしかするとあったかもしれないような黒っぽいもので、それを見たイスターが犬を飼っているのかと聞いた。大真面目に。

 「飼ってないですよ?」

 「じゃあ、それ何?」

 「クリームシチューですが」

 ラカの顔色を見るからには、自分が人間の食べ物を作ったと信じて疑わない様子だった。後二人の顔が青いのにも関わらず。

 嫌悪感丸出しのオイサイリアは、よく見るとこれは猫の食べ物ぐらいには見えるかもしれない、と必死に現実から逃げていた。彼女にとっては猫の方がはるかに貴族的な動物に思えたのだ。もう一方のイスターは『これを食べないと親父の靴下を履かなければいけない』と自己暗示をかけようとしていた。

 「あの〜?」

 「は、はい。犬の餌でも食べて見せます。親父のかつらと靴下だけはやめてください!」

 思わず声に出してしまったイスター。ラカの顔が落ち込んでいた。

 「気に入りませんか?」

 その顔があまりに無罪潔白、という表情を浮かべていたため、イスターは黙り込んでしまった。

 「それじゃ、ご飯にしましょう」

 側で見ていたオイサイリアはなんだか間抜けな笑みを浮かべていた。

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