第一話・嵐の夜のバー
ギャグあり、感動ありの予定ですが・・・・。どうか最後まで「つまらない」などと言わずに読んでくだされば幸せです。
その日は、雨と寒風が吹き荒れるさびしい日だった。辺りは漆黒の闇に覆われ、おまけにずぶぬれで、行きかう人々も天気と同じ表情だった。つまり、曇っていたのだ。
港町というものは、晴れていれば楽しい場所なのに今日はあいにくの雨だった。
しかし、店はもちろん開いている。こんな日には酒場にでもいって仲間と飲み交わそう、とほとんどの住民が思っていた。そのために今日は早めに仕事を終わらせようとするが、冷たい雨に指がかじかんでいた。
それでも仕事を終わらせた者は、自分のお決まりの酒場に向かった。
その中でも最も常連が多かったのは、唯一女性の経営する、【マヤ・ノット・バー】だった。バーテンはラカといい、落ち着いた物腰のカクテル作りの天才でもある。
夕方はいつも混んでいるマヤ・ノット・バーだが、今日は客が一人も出て行かないため、狭いバーに人が密集していた。ラカはこのバーをたった一人で経営していたため、大忙しの引っ張りだこだった。
店内で賭けをする者、ビールをすする者、ワイングラスを揺らしながら大人の話をするもの、と皆それぞれの場所に落ち着いていた。
しかし、何かが違った。誰も違いには気付かなかったが、確かにそれは存在していた。