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もう一度京都へ

 一週間後。外出許可を得た俺は、医者に三日間の猶予を乞うた。


 期間が長いことに医者は難色を示したが、介添え人がいることを知って渋々ながらそれを認めてくれた。


 母親は俺のたっての頼みとあって、快く旅費を出してくれた。綾子は「私もついていく」と言い張ったが、母親に二人分の旅費は出せないと言われ、あえなく引き下がった。


 そして当日。病院は所沢市内ではなく、都心にある大学病院だったため、俺はひとりで東京駅に向かい、仲間たちの到着を待った。出発する時間が早く、一番乗りになってしまったからだ。


 最初にやってきたのは月だった。


「玲さん、おはようございます」


 杖をついたままの俺に、彼女は元気に挨拶する。


「ああ。おはよう」


 ぱたぱたと駆けて来た彼女は、やや大きめのボストンバッグを手に持っていた。学校指定の鞄では容量が足りなかったと見える。荒い息を吐き、顔を上げた月の首元にはいつも肌身離さずまとっていたネックレスがない。ヴィンセント戦で使用してしまったから、この世界にも影響を及ぼし、紛失してしまったのだろう。


 ついで現れたのは、紫音と雪嗣だ。ふたりが同行動を取るなんて珍しい。


「たまたま同じ電車に乗り合わせた」


 さっそく言い訳を始める雪嗣。紫音もそれに頷きながら、


「誤解すんなよ。大して会話もしてない。仲がいいとか思われたら嫌だぜ」


「同感だ」


 妙なところで意見の一致を見るふたり。わざわざ言い訳なんてしなくても、俺が彼らの仲を勘ぐることはなかったのに。しかしそれをやらずにはいられないところに、紫音と雪嗣の性格が現れているような気がした。


「それじゃ、新幹線ホームに行こうか」


 言うが早いか、雪嗣はすたすたとひとりで歩きだす。


 紫音があとに続き、月も慌てて立ち上がる。けれどボストンバッグが重かったようで、歩きだすのに難渋している。荷物が多すぎだろうと思った俺は、


「そんなに何を詰めてきたんだ」

「ボードゲームです。宿舎でみんなで遊ぼうと」

「それにしたって多すぎだろ」

「どれがベストマッチかわからなかったので全種類持ってきました」

「困った奴だな。そのバッグ貸せ」


 俺は代わりに持ってやることにした。杖をついた姿勢だが、リハビリによって体力はだいぶ回復している。男の力ならこの程度造作もない。


「すみません、玲さん」

「謝るようなことじゃない」


 新幹線ホームにはすでに電車がついていた。俺たちはそれに乗り込み、指定席に座る。ちょうど四人列の席をとっており、俺と紫音が通路側。月と雪嗣が窓側に座る。


 席につくや、新幹線はゆっくりと発車した。


「玲さん、オセロやりましょう」


 そのタイミングを待っていましたとばかりに、月が声をかけてくる。


「オセロ?」

「ええ」


 月はボストンバッグからゲーム盤を取り出し、俺を勝負に誘った。


「全員でやれることのほうがよくないか?」

「でも雪さんが……」


 見れば雪嗣は、窓から外を眺め、我関せずの姿勢を崩さないでいる。


 早くも協調性のなさを発揮され、俺は心の中で苦笑いをした。あれだけ屋敷で時間をともにしても、俺たちは俺たち。どこまでもぼっちだ。


「じゃあ、ババ抜きにしましょう。それなら紫音さんも加われるし」

「私は遠慮するよ」

「そんなこと言わないでください」

「月が困ってるぞ。おまえも加わってやれ」

「まあ、玲がそういうなら……」


 俺たちのごり押しに音を上げ、紫音もゲームに加わった。


 横列に並んでいるため、カードが見えやすくなってしまう(特に俺)。


 胸元にカードを隠しながら、ゲームを進めていく。


「ちなみに何を賭けようか」


 俺が賭け形式を持ちかけると、月が急にまごつき始めた。


「賭けなんてするんですか?」

「何も賭けないのはつまらないだろ」

「でも私、ゲーム弱いし……」


 自分から誘っておいて、月は自信なさげに俯いた。英国流の「何でも賭けにする」ことに慣れた俺は勝負にこだわりたかったから、そんな月を逃がさない。


「罰ゲームはビール一本」

「ビールですか?」

「向こうの世界じゃ散々飲んだろ。年齢なんてバレやしないさ」

「いいねぇ、熱くなってきたぜ」


 紫音が俄然やる気を示す。そんな勢いに押されたのか、月は見事にババを引き抜き、


「はえー……」


 奇妙な声をあげながら、肩をがっくりと落とす。実にわかりやすい奴だった。


「いち上がりっと」


 紫音が抜け、残りは俺と月の勝負となる。

 俺がちらちらと手を動かすと、月もその動きを目で追う。


「おまえ、本当にわかりやすいな」


 あまりの露骨さに苦笑を浮かべ、俺は月の最も取って欲しくないカードを選ぶ。


「はい、俺も上がり」

「がーん」


 口でショックを呟き、月は三人分のビールを買うはめになった。


「俺もビールは飲む」


 つかまえた売り子に横から雪嗣が声をかける。都合四人分のビールを購入。俺はついでにホタテの貝柱を買い込む。足しげく通ったパブのようにマッシュポテトのベーコン和えとはいかないが、ビールだけを飲むのは何となく気が引けたのだ。


「…………」


 乾杯の音頭もなく、俺たちはプルタブを引き、ビールを飲み始める。


「美味いな」


 独り言を漏らす雪嗣。


「…………」


 粛々と喉を鳴らす月と紫音。


 そのあまりの協調性のなさに俺は不満を感じた。修学旅行の際、一応分隊長的ムーブをとっていたアルならどうするだろう。俺はひとしきり想像を巡らし、


「月、貝柱食っていいぞ」

「すみません、頂きます」

「紫音も」

「……悪いな」

「雪嗣もどうだ?」

「俺はいい」


 言葉少ななやり取りだが、俺はちょっぴり満足した。自分のとったアクションにひとが答えてくれること。その事実は幸福感をもたらす。俺はもう執事ではなくなったし、屋敷ではそれはもっぱらカーソンの仕事だったが、俺は確かに変わったのだろう。


 二時間半近く電車に揺られ、新幹線は京都駅に到着した。


 この世界でビールを飲んで大人な気分を味わったまま、俺は月のボストンバッグを持ってやりながら、駅舎に杖をつく。


 俺たちはそのままの足で駅近くのホテルにチェックインを済ませ、バスターミナルに向かった。ちなみにホテルの部屋は男子女子で分けてある。ひとつの部屋のほうが安上がりだったが、色々と問題があるので常識的判断をくだした結果だ。


 この日、京都は薄曇りだった。おまけに冬とあって気温は低い。


「寒いなあ」


 コートの襟を合わせ、俺は寒さに震えている。


「玲さん、おっさんみたいですね」


 月が隣から容赦のないツッコミを浴びせてくる。


「おまえこそ、寒くないのか」

「ホッカイロ入れてきましたから」

「そっちのほうがよっぽど年寄りくさいだろうが」


 益体もない戯言を言い合いながら、俺たちは到着したバスに乗り込む。


 目的地は銀閣寺。正式名称は慈照寺という。


 バスの所要時間は大体四十分程度だった。その間、俺と月と紫音は、またしてもババ抜きをして遊んだ。俺の提案で、罰ゲームは腕立て伏せ百回に変わっていた。


「玲さん、本性は鬼です」

「馬鹿いえ。なんなら罰ゲーム混浴にしてもいいんだぞ」

「そっちのほうがまだましです」

「なら、今から変えるか?」

「やめてくれよ、ふたりとも。私、混浴なんて入ったら恐怖で溺れ死ぬぜ」


 首をぶんぶんと振って嫌がる紫音。彼女にもこんなデリケートな部分があったとは。


 なんてことを考えていると、ジョーカーは俺のところに回ってきた。


(まずいな……)


 心の中で舌うちをすると、それを目ざとく月が見ていた。


「玲さん、このままだと罰ゲーム混浴ですよ」


 あくまで混浴にこだわりだした月である。


「俺はべつにいいけど。前はタオルで隠せばいいわけだし」

「ふーん。私もへいちゃらです。体はタオルで……右に同じですし」

「なんだよ、おまえら? 一番嫌がってるの、私かよ?」

「……みたいだな」


 余計な雑念が生じたのか、紫音は判断力が鈍り、俺のババを見事に掴んでいた。


「ぐあ……」


 結局、この回で負けたのは紫音だった。彼女は強制的に混浴に入るはめとなった。


「乙女の純情が汚れるぜ」

「紫音さんにそんなものあったんですか?」

「テメエ、月……それ以上言ったら張り倒すぞ」


 顔を紅潮させながら、紫音は月の首を掴む。ふたりしてはしゃいでいるのを、雪嗣がつまらなそうに見やる。そして冷静な声で呼びかけてきた。


「次で下車だぞ。遊びもほどほどにしろ」


 雪嗣は純粋に旅を楽しむつもりでいたのか、市販のガイドブックを手にしてそれを食い入るように見ている。


 目的の銀閣寺道で下車した俺は、後から降りてきた雪嗣に声をかける。


「銀閣寺、そんなに楽しみにしていたのか?」


「ああ。金閣寺よりよっぽど楽しみだった」


「でも、豪華さでいうなら金閣寺でしょう」


 横合いから月が口を挟んでくる。


「たぶん、雪嗣は豪華さには食傷気味なんだよ」


 後ろに立つ紫音がぽつりと言った。


「私らもそうじゃね? あんだけ豪華絢爛な屋敷を毎日見て過ごしてさ。玲に到っては、バッキンガム宮殿まで行ったんだろ。もはやこの世の贅を尽くしたわけだ」


「紫音の言うとおりだな。俺はあの世界とは別の美に惹かれる」


 ガイドブックに目を落としながら、雪嗣が返答する。


 そんな会話を聞きながら、みんなの言うことはいちいち俺の腑に落ちた。


 二十世紀初頭の大英帝国という、世界中の富を集めたかのごとき場所で半年以上も時を過ごした。それも貴族の大邸宅で。それに匹敵する美は、豪華さにはない。


 歩くこと十分ほど。橋を渡り、道を直進すると目的地についた。


 そこについた第一声は、月のものだった。


「銀閣寺ってリアルで見てもしょぼいですね」


 雪嗣があれほど楽しみにしていた場所をさっそくこき下ろしていた。


「月、少しは空気読めよ」


 俺はたまらずツッコんでしまったが、彼女には言い分があったらしい。


「この場合のしょぼいは褒め言葉です。わびさびと言い換えてもいいです」

「なら最初からそう言えよ。雪嗣、へこんじまうじゃねぇか」

「いや、俺はべつにへこんでない」


 俺たちの漫才めいたやり取りになど興味はないとばかりに、雪嗣は銀閣寺を見上げる。


「美しいな。これが俺の求めてきた美だ」


 彼が感慨を漏らすと、ほぼ同時に空をひっそりと舞うものがあった。


 それは目の細かい雪だった。


「おいおい、粉雪まで降ってきたぜ」


 紫音が空を見上げる。同じ動作を、俺と月も取ってしまう。


 その雪は、俺の霞がかった視界のなかで白く滲む。


 悪天候だが、傘が必要なほどでもない。手に取ると、雪はすぐに消えてしまう。


「写真、撮りましょう」


 言うが早いか、スマホを取り出したのは月だった。


 そして身近にいた外国人の観光客に流暢な英語を話し、写真を撮って貰うように算段をつけていた。その会話は俺にも聞こえた。なぜか英語が理解できる。あの世界で得た能力のおかげとしか思えなかった。


「ほら、玲。もっと近くに寄れよ」


 見れば、他の三人はすでに集合モードに入っている。


 俺は杖をつきながら慌てて駆け寄る。カシャと音が鳴り、集合写真が撮れた。


「なんかこうしてると、本当に修学旅行をやり直している気分ですね」


 スマホの写真を見つめながら、月が感嘆の息を吐いた。


 ――やり直し。


 そう、この旅行はただの遊びじゃない。


 他の連中は知らないが、俺は京都に心の整理をつけにきたのだ。


 心残りはなくしておきたい。本当の目的はそれ以外の何ものでもなかった。


 だから俺は三人に呼びかけた。ひとつだけ寄りたい場所があると。


「べつにいいけど、どこに行く気なんだ?」


 紫音の疑問に俺は率直に答える。


「俺たちが事故に遭った場所に行きたい。行って心の整理をつけたい」

「悪くないな。俺も賛成だ」


 最初に賛意を示したのは雪嗣だった。その言葉に、残りの二人も頷き返す。


「アルさんの慰霊でもありますしね。行きましょう」

「ああ。大事なことだ」


 てっきり反対されると思っていた俺は拍子抜けしたが、同時にみんなが賛同してくれて嬉しくもあった。同じ想いを共有していると思えたから。


 そして俺たちは、金閣寺の帰りに寄った土産物屋に向かった。


 バス移動の間は無言。なぜかはしゃぐ気になれない。


 やがて最寄りのバス停につき、俺は料金を払いながら、杖をついて地面に降り立つ。


 そしてゆっくりとした足取りながら、一歩ずつ歩きだす。


 先ほど銀閣寺によったことで、俺の脚にはだいぶ疲労が溜まっていたけれど、確実に歩を進める。その歩みは俺を目的地へと連れて行ってくれた。


「…………」


 そこはすでに綺麗に整地されていた。崩れたとおぼしき石垣も、元通りになっている。事故の痕跡は、誰かが捧げた黄色い花束だけだった。


「この花、誰が置いたんだろう」


 俺は独り言のように呟いた。答えはなかった。誰も答えを知らないのだ。


「アルさんの家族でしょうか」


 月がそう言って、献花にひざまずき、静かに手を合わせた。


 俺たち三人もその動作に倣う。アルのことを考えながら、瞑目する。あいつはあの異世界では生きているのだろうが、この世界での生は終わった。その悲しみが急に胸を締めつけてくる。


 ――異世界転移よ、もう一度。


 俺はベアト様に再会を約束した。しかしそのためには、以前の転移と同じく何かしらの代償を強いられるのだろう。また瀕死の目に遭うのかもしれない。この世界に生きる人間に、アルを失った喪失感のような悲しみを残して。


 俺はそうした種類の悲哀に思いを寄せた。自分の選択がもたらす罪深さにも。


 心の整理とは、その罪を受け止めることと同義だった。


 そんなときだった。


 土産物屋から出てきた観光客がまっすぐ俺たちのほうに歩いてきた。


 急いで身をどけようとするも、杖をつきながらなので初動が遅れた。おかげで俺は、彼らの体と正面からぶつかってしまう。


「痛ぇな、オイ」


 観光客は遊び慣れたふうの若者だった。俺たちより年上で大学生くらいだろうか。


「謝れよ」


 その不遜な態度にカチンときたが、確かに非はこちらにもある。


 俺は頭を下げたが、彼らはそれに満足したのか、嗜虐的な笑みを浮かべた。


「こいつ身障だぜ、ダセぇ」


 杖をついた俺に余計なひと言を発する。俺のなかで燃え上がったのは怒りの炎だ。


 しかし怒りのやり場を求める前に、月が非難の声をあげていた。


「今のは失礼です。謝ってください」

「事実を言っただけだろうが」


 月の非難を浴びても、彼らは怯まない。すわ乱闘かと身構えたのは雪嗣と紫音だったが、俺は彼らを巻き込むつもりはなかった。


「いいんだ、ここは俺が片をつける」


 憤慨した月たちを押しのけ、俺は大学生くらいの若者たちに向き直った。


「片をつけるって、どうする気よ?」

「こうするんだ」


 俺は杖を振り上げ、俺のことを「身障」と呼んだ奴の小手を強かに打った。


 そいつは絶叫を上げ、苦痛に顔を歪ませた。


「次はメンを打つぞ。脳天かち割られたくなかったら、さっきの言葉を取り消せ」

「くそぅ、覚えてろよ……!」


 俺の怒りが本物だと悟ったのか、それとも小手を打たれて気が縮んだのか、いずれにしろ俺に暴言を吐いた奴は捨て台詞を残し、仲間たちと一緒に逃げ出した。


「ただの腰抜けじゃねぇか」

「ああ。俺が出る幕もなかったな」


 紫音と雪嗣が顔を見合わせ、肩をすくめている。


「玲さん、剣道だけは得意だっていうのは本当だったんですね」


 他方で、俺の顔を見上げながら、はしゃぎ始めたのは月だった。


「それ、誰から聞いたの?」

「アルさんに聞きました。玲さんの剣術を見て、執事にすることに決めたって」

「意外とおしゃべりだったんだな、アルの奴」


 俺は杖を元に戻し、感慨深い息を吐いた。


「でも玲さん、あれだけ冷静に戦えるなら、だいぶ回復したってことですよね」

「そういうことになるのかもな」


 俺は疲労を溜めながらではあるが、冬の京都を回り、アルの慰霊もできた。よくわからないチンピラまがいの大学生にも相手をさせなかった。問題はぼやけた視界だが、体のほうはだいぶ元に戻っていると思った。苦しいリハビリに耐えた甲斐があったというものだ。


「早いとこ、退院したいな」

「もうじきできますよ。私が保証します」


 月のひと言に、紫音と雪嗣も同意とばかりに頷く。


「復帰できるさ。つまらん学園生活に」

「それ言えてるわ。屋敷の生活に慣れちまうと、学校がかったるく感じるよな」

「待ってくれ。そんなこと言われると戻る気なくすじゃん」


 軽口を叩いた俺だが、退屈な生活に復帰するため、リハビリに耐えたわけではない。この世界における心残りを、数々の未練をなくすために頑張ったのだ。学園生活は未練の対象とは言いがたい。俺は妹と過ごす毎日に、何か大事なものを残しておきたいのだ。


「まあいいさ。どのみち俺のやりたいことはひとつだけだ。この世界で確かな光のようなものを得て、それを妹に捧げたい。あいつに与えた悲しみに匹敵する輝く何かを」


「玲さん、やっぱりシスコンだったんですね」


「失礼なことを言うな」


「でも本当でしょう。いつも妹さんがべったりで。あんな姿を見せつけられたら馬鹿でも気づきます」


 黒ルナが言いたい放題である。


 けれど俺はそれが事実でもあるため、彼女に言い返すことはできなかった。


「月、ちょっと言い過ぎだぞ」


 代わりに紫音がツッコミを入れていた。


「すみません、ちょっと悪ノリしました」

「いいよ。そんなに謝るようなことじゃない。俺はたぶんシスコンなんだろう」

「自分で認めるとはな」


 雪嗣がくすりと笑った。その微笑はみんなに伝染する。


「とにかく俺は妹を喜ばすことがしたいんだ。それが何かは今はまだわからないけど」


 降りしきる粉雪を見上げ、俺は退院後の自分に思いを馳せたのだった。

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