イザナギ、イザナミ
「わたしの予知夢がはずれるなんて、何か複雑な気分だわ」
ひかり姫は小舟にゆられながらつぶやいた。
「何をおしゃいますか。姫さま。命あってのものだねですよ」
刃良は小舟をこぎながら答えた。
モグラ男は自分の青い左目を海面にうつしながら、不思議そうに、何度も自分の姿をみていた。
黒く短い髪、左目はひかり姫と同じ青色、右目は黒く、さすがにひかり姫と比べれば大きいが、がっしりした刃良にならぶと小柄で華奢な体だった。
父親が遺してくれたボロの上衣と毛皮の腰巻姿は猟師のようだった。
「月読、左目は痛くない? 大丈夫?」
ひかり姫は右目に布を巻いた顔で、月読を気づかった。
「うん、だいじょうぶだよ」
「そんなに海が不思議?」
「うん、きれいだし、ものがうつってたのしいね」
モグラ男は水面に手をさしいれて、何度も海水をすくった。
月読が時を止めたあと、ひかり姫は気の毒だと思ったが、火龍で都の軍船を全て焼きはらった。
それから、まじないで風をよんで、小さな帆をはって、ゆっくりと瀬戸内の海をすすんでいた。
目指すは、讃岐の浜から、少し沖にいったところにあるイザナギ、イザナミ島である。
その日本の神話の最初の夫婦の名をもったふたつの島は、寄り添うようにすぐ近くにある。
イザナミ島には洞窟があって、後の世には「鬼ヶ島」とか「女木島」と呼ばれることになる。桃太郎の民話の舞台となったという伝説を残す。
イザナギ島は男木島と呼ばれ、きれいな水仙の花が咲く島となる。
ひとまず、このお話はここで終わる。
ひかり姫たち、三人のその後の冒険の話はたくさんあるが、それはまたの機会に。
おしまい。
「モグラ男と、ひかり姫」 第一部 完
何か蛇足というか、睡眠不足で力尽きたというかw 最終話、あっさり終わってすいません。ひとまず、この物語は終わりです。
続編、第二部は「月読と天照~イザナミ島戦記~」となります。
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