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ヒカリヒメ

 モグラ男は、ひかり姫に会った夜のことを思い出していました。


 そして、珍しく昼間に起きだして、地下のトンネルを通って、白い豪族の屋敷の方へ行きました。


 モグラ男が掘った地下トンネルは、山から村まで迷路のように入り組んでいました。


 いろんなところに行けるように、村のさまざまな場所の目立たない所に、隠された出口がいくつもありました。




 モグラ男は、幼いころ、両親と小さな山小屋に住んでいたのですが、ふたりが亡くなってからは、山の木の実やくだもののようなものを食べて暮らしていました。


 ある日、山の洞窟どうくつに入ってみたら、地下に迷路のように入り組んだ、ひろいひろいトンネルが広がっていました。


 生まれつき瞳孔どうこうがなく、日中は日の光の下にはでれない彼に取って、このトンネルの世界こそが、自由に行き来できる世界でした。


 時間はたっぷりあり、彼の両親が残してくれた鉄製のクワやカマがあったので、ゆっくりゆっくりとトンネルを掘り進みました。


 トンネルを掘り続けていくと、自分の世界が広がっていくようで、とてもたのしく感じました。


 

 

 モグラ男がトンネルの出口近くに行った時に、外から屋敷の下女げじょたちの声が聞こえて来ました。


「ひかり姫さまがいなくなったそうよ」


「ええ! また、どうして? 都の貴族の家にお嫁にいくはずだったでしょう?」


「それが、男に夜這よばいをかけられて、その男と駆け落ちしたというもっぱらの噂よ」


「そうなの! それは大変じゃない! それで、近頃、旦那だんなさまの機嫌が悪いのね」


「ひかり姫さまのお守り役の刃良と らは、血相をかえて、姫さまを探し回ってるらしいわ。都の貴族も兵をひきつれて、讃岐さぬきに来てるらしいし、たぶん、もうすぐ見つかるとは思うけど」


「それはかわいそうね。刃良と らは姫さまをあんなにかわいがっていたのに」


 

 

 モグラ男には話の半分しかわかりませんでしたが、「ひかり姫がいなくなった」という話を聞いて、ちょっとびっくりしました。

 

 他のトンネルの出口にも行きましたが、同じような話をする下女の会話や騒々(そうぞう)しい兵たちの足音あしおとがいくつも聞こえました。


 彼は仕方なく、山の方に戻ることにしました。


 夜になるのを待って、ひかり姫を探そうと思いました。


 彼が洞窟の出口近くについた時、外から淡い光が差し込んでいました。


 彼は思わず、手で光をさえぎって、おそるおそる光の方に近づいていきました。


「こんにちは。月読ツクヨミ


 そこには、かすかな光に包まれたひかり姫が、にっこりと微笑ほほえんでいました。


ようやく話が動き出しました。イザナギ、イザナミのような逃走譚になりそうですね。

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