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ある夏の思い出

作者: 七緒 伊恋

お題小説1 心の傷、 夏が終わる 、二人の距離感 、失くした恋の思い出 、ベストな関係

上のお題で書いた作品ですが、遅筆で時間がかかりまとまらず、無理矢理終わらせた様な感じです。

初心者の練習的なものです。

アブラゼミの鳴き声が猛暑の暑さを引き立てる。

今日から夏休み、花火大会を見に行くために明日奈を迎えに自転車を走らす。

俺は西谷翔、成城高校に隣町から自転車通学をしている。今走っっている道も普段から通学で使ういつもの道。その暑さも苦にならないほど今の俺は浮かれている。先月玉砕覚悟で告白した斉藤明日奈との初めてのデート。告白の返事は友達から……と、恋人とはまだ言えないが、付き合っているといってもいいだろう。


高校の最寄り駅、駅を出たところにあるベンチに彼女は一人腰掛けていた。彼女の前で自転車を止め

「遠山さん、待ちました?」

「いいえ、今着いたところですよ。」

彼女の浴衣姿に見とれながら

「あ、あの、浴衣……似合ってますね。」

明日奈はチョット照れたのか少し顔をうつむかせ小さな声で

「あ、ありがとう。」

まだ初めてのデートなので話しかけるのも緊張してどもり気味になるが、それは明日奈も同じようだ。これが今の二人の距離感を現している。今日のデートで少しでもこの距離を縮めたい。

「じゃあ、チョット自転車置いてくるね。」

明日奈がわずかに頷いたのを確認して、駅の駐輪場へ自転車を止めてきた。


「じゃあ、行きましょうか。」

自転車置き場から戻り声をかけた。頷いて明日奈は立ち上がった。

花火大会の会場への通りは商店街になっていて、浴衣姿の女の子も多く見かけたが、明日奈が一番綺麗だと思いながら、今が稼ぎどきと軒を並べる様々な屋台を覗きながら他愛ない話を何度かするたびお互い硬さも取れて緊張せずに話せるようになった。

商店街を抜ける途中で俺はメロン、明日奈は浴衣にシロップが付くのを気にしてミゾレのかき氷を片手に会場へ着いた。


会場についた時には閑散としていたが、夕陽が沈み空が暗くなっていくに連れドンドン人混でごった返すようになり、横から押されて明日奈の肩がぶつかってしまった。

「あ、明日奈ちゃん大丈夫?」

おもわず名前で呼んでしまった。自分でも直ぐに気づき頬が火照るのを感じた。きっと顔がトマトのように赤くなっているだろう。薄暗くなっているので気づかれてはいないと願いたい。

「……うっ、うん、大丈夫。」

明日奈の返事も少し動揺しているように聴こえるが、薄暗いのでその表情まではわからなかった。

ただ、左腕は明日奈の肩に触れ合ったままで、ドキドキとする鼓動はいつまでもおさまらない。

その時最初の花火が打ち上げられた音がした。明日奈に向かって

「上がったよ。」

と声をかけた時最初の花火が開いた。花火を見上げる明日奈の横顔が花火の光に照らされる。俺の顔はそのまま固定され色とりどりの光に照らされる顔に見惚れてしまった。

「綺麗だね。」

明日奈が不意にこちらを向いて声をかけてきて、シッカリと視線を合わせてしまった。慌てて花火の方を向いて、

「ホント凄く綺麗だね。」

気づかれただろうか?しばらくして、目線だけを隣へ向ける、明日奈の視線はもう花火に向かっていた。


「最後凄かったね。」

フィナーレの盛大な花火に興奮気味に話しかけてきた。

「そうだね、でっかいのバンバン上がって、凄い迫力だった。」

返事をしながらも今日イチの明日奈の笑顔に魂が抜けてしまったように見惚れていた。それもわずかな時間で、帰り出す群衆に呑み込まれ駅の方へ押し流される。明日奈と引き離されないように必死で手を伸ばし明日奈の手を掴み、俺の方に引き寄せた。そしてそのまま流れに沿って歩き、途中の脇道へ入ることで雑踏から逃れた。

「明日奈ちゃん、大丈夫?」

「うん、平気だよ。それにしても凄い混雑だね。」

「もし時間大丈夫だったら少し人が減るの待とうか?」

「そう、だね。少しくらいなら大丈夫……かな。」

すこし不安そうだが、一緒にいられる時間が増えることが嬉しかったので、気に止めなかった。


「明日奈ちゃんは花火大会毎年くるの?」

「えっ、小さい時は連れてきてもらったけど、最近は全然きてないなぁ」

一瞬だけ辛そうな表情になった気がしたけど笑顔で答えてくれた。

「明日奈ちゃんは夏休みの予定何かあるの?」

「う〜ん、私、習い事や家庭教師でほとんどうまってるんだよね。」

「じゃあ、次はいつでかけれるかな?」

「予定がチョットわからないから、後で連絡するね。ケータイ番号教えて。」

問われるまま番号を言うと、明日奈は自分のケータイに入力する。その間に通りも閑散としてきたので二人は駅へと歩いていった。


翌日から明日奈からの連絡待ちになった。今思えば昨日の時点で教えてもらっていればよかったのに、と悔やまれるところだ。

彼女から連絡がきたのはお盆前、八月十日の昼だった。知らない番号からの通知に慌てて携帯に出る。

「も、も、もしもし、に、西谷です。」

「西谷君、どうして連絡くれないの?私、ダメだった?」

泣いているのか、明日奈の声は弱々しく震えていた。訳が分からないまま呆然としていると、

「私、待ってるの不安で、もう耐えれないよ。西谷君とは付き合えない、ごめんなさい。」

何も返事ができないまま通話は切られた。正直何がどうなっているのかよく分からない。切られた携帯の受信履歴を何気無く見ていると、花火大会当日にさっきと同じ番号を見つけた。連続で三回、その後友達の名前が続いて行く。

彼女は花火大会の直後に連絡してくれていたのだろう、その頃俺は浮かれ気分で自転車をこいでいて気づかなかったに違いない。帰宅してそのまま気づかずに友達に第一回のデートのノロケ話をしまくった。そのまま履歴は埋れていったのだろう。

明日奈はどちらかと言うと内気な方で、学校でもあまり積極的に何かするというタイプではない、その彼女が三回電話をかけるのは、かなりの勇気を出したのだろう。

明日奈は待っている間に心の傷をどんどん深めていったんだろう。そう思うと自然と着信履歴を選び通話ボタンを押していた。永遠とも思えるほどコール音が続いた。もう電話にすら出てもらえなくなったのだろうか、後悔の海にのみ込まれそうになっていると、不意に通話状態になった。けれど何も声は聞こえない。

受話器の向こうで明日奈が効いていると信じて

「あす奈ちゃん、ゴメン。着信履歴に気がつかなかった。今まで不安にさせて本当にゴメン。」

「……」

「恋人になれなくてもいい、これからも友達として話とか遊びに行ったりできるかな。」

「……分からない、今はわからない、ごめんなさい。」

夏休みはまだ半月残っているけれど、このとき俺の夏が終わる。

あっけなくなくした恋の想い出だけが、夏休みじゅう沸き起こり自責の念に囚われる。早く夏休みが終わって欲しいと思うなんて初めてだ。

二学期、明日奈と会った時に声をかける勇気が自分にあるのだろうか?

それでも俺はこのまま悲しい思い出にしたくはない、お互いのベストな関係を新しく作っていきたいと思った。



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