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重なる世界の、重ならない私  作者: 守納
第一章 歩
5/8

五話

空の上。


地上から隔離され人の手の届かぬその場所に。


八つの光が並んでいた。


八つの光はやがて輝きを強め。


地上の一人の女性に注いだ。


その時。


光の並びに。


二つの空席が空いた。


※※※※


地上のどこか。


影に埋もれ光指さぬその場所に。


九つの淀みがあった。


あるとき。


淀みは揺らぎ十となった。




















物語は始まる。


それは一人の少女の。


けして救いの無い。


数多の幸せのための。


悲しき序章ーーー。





























人が未だ獣を追う術の拙き頃。


人が未だ魔を恐れ神を敬う頃。


人が未開の地に踏み出すことを良しとせぬ時代。











時はたち、一人の女が子を生んだ。


何時か光に包まれたその女は営みの中で子を成すことはなく。


不貞を犯したとし故郷を追われた。


女は子を愛した。


限り無い愛情を注ぎ。


子は育った。


子は人に無き才を持った。


薪に手を添えれば火は興り。


大気を掬えば水が湧き。


駆ければその背を風が推し。


木葉を愛でれば恵みを落とした。


母は恐れた。


魔を扱う我が子を。


母は畏れた。


神に等しき我が子を。



















母はそれでも愛した。


愛しき人為らざる我が子を。



















時はたち。


母は天寿を全うした。


その最後の思いは。


唯一人遺してしまう我が子への愛のみだった。


子は未だ幼き姿をしていた。


母であり師である女の最後の教えと思い。


授かったものの重みを感じながら。


一滴の雫を大地に落とした。


その時。


大地に落ちた雫は輝き。


愛深き女の骸は小さな苗木となった。


※※※※


天上の八つの光。


空席の一枠が輝いた。


しかしそれも僅な時。


一際強く輝き。


瞬く間に消え去った。


其処に残るは。


八つの光と。


一枠の空席。

※※※※




















時は経ち。


人が神の恩恵を忘れ。


神と魔を同一の物と捉える時代。
























光指さぬ場所。


九つの淀みが眠る場所に。


幼子の姿はあった。


その身に力はなく。


憎悪に狂う獣に囲まれ。


小さき体に数多の憎悪を受け止めていた。


淀みは蠢き。


幼子を惑わす。


曰くー


ー愛に返すものが愛ならば

ー憎悪に憎悪を返すのは道理

ー…何故唯背負うか


幼子は傷多きその身にて返す


ー愛求めるならば愛すが道理

ー己と異なるを恐れるも道理

ーなれば説こう

ーいつかまた愛されるそのときまで






















いつしか淀みは幼子を愛し。


幼子は変わらず淀みを愛した。


淀みの空席は埋まり。


何時しか幼子は童子となった。


※※※※






















時は移ろい。


人が神を忘れ。


魔を魔でぬぐい去る時代。



















童子は異界の者達と出会った。

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