この世界の問題
それから五人はギルドの中に場所を移した。オーラは室内を見回すと、まず自分の剣を入口の横に立てかけた。
「まずはここにいるギルド員を紹介しましょうか。ケイン」
オーラは椅子に座っている長髪の男に声をかける。
「はい」
ケインと呼ばれた男は立ち上がってオーラ達の前に来た。それから要一とまもるに軽く目で挨拶をしてから、タマキとカレンに向かって頭を下げた。
「初めまして、ケインといいます」
「よろしく、俺はタマキ」
「カレンです。よろしくお願いします」
「ケイン、他のギルド員はどうしました?」
「まだ巡回中です、最近は妙な魔獣の動きが活発ですから」
オーラはケインの言葉にうなずいた。
「このお二人はそのために来てくれたんですよ。実力は今確認してきましたから、全く心配ありません。しばらくいてもらうことになるでしょうから、まずは住居の手配ですね」
その言葉に、ケインは深くうなずいて、丸腰のタマキとカレンを見た。
「わかりました。装備はいいんですか?」
「俺は別にいいけど、カレンは」
「はい、ショートソードとダガーを一本頂ければ」
「そういうことならば、それは私が手配しておきます。早速家を見に行きましょうか」
「よろしくな」
ケインを先頭に、タマキとカレンはギルドから出て行った。
「ヨウイチさんとマモルさんには他に頼みたいことがあります。いいですね?」
「いいですけど、なんですか? 戦うならタマキさん達がいれば十分だと思うんですけど」
「いいえ、それ以外なら仕事は沢山ありますよ」
オーラはいい笑顔でそう言った。
そして、タマキとカレンはケインに案内されて空家の前に来ていた。
「ここは客人用の家です。家具の類はありますから、少しの準備ですぐに生活できるようになっています」
「へえ、それはちょうどいい」
それからケインがドアの鍵を開け、三人は家の中に入った。室内は綺麗にされていて、埃っぽいということもなく、家具も一通り揃っている。
「つい最近使ったような雰囲気ですね」
「ここは最前線ですから、頻繁に他所から応援を頼んでいるんです。特に最近は魔獣の活動が活発ですから」
「忙しいんだな」
「ええ、ですから、オーラさんが手放しで認めるほどの方達の助力が得られるのは大変助かるんです」
「まあ俺達はそういうつもりで来たんだし、やることはやるよ」
「そう言って頂けると心強いです。私は武器を調達してくるので、しばらくここで待っていてください。あとで食料や必需品の店を案内しますから」
「ああ、よろしく」
ケインは家から出て行き、タマキとカレンはその場に残された。タマキはマントを取って椅子にかけると、室内を見回した。
「居間があって、あとは二部屋か。四人くらいは大丈夫かな」
「しかし、それでは住むとなると少々手狭になりそうですね。二人くらいがちょうどよさそうです」
それからタマキがドアを開けると、そこにはベッドが二つ並んでいた。
「俺達だと荷物がないから一部屋余るな。まあ長居するわけでもないだろうから、気にすることもないか」
それから二人とも椅子に座り、しばらくのんびりしていた。そこにケインが一本のショートソードとダガーを持って戻ってきた。
「どうぞ、カレンさん」
「ありがとうございます」
カレンはショートソードは左に、ダガーはベルトの右に装着した。
「ところで、タマキさんはどのような武器を使うんですか?」
「俺はいわいる魔法だよ」
「魔法ですか、私も使いますが、だいぶ違うものなのでしょうね」
「へえ、どんな魔法を使うんだ」
「自分の血を代償にして使うブラッドマジックというものです。あまり使い手がいない術ですが」
「血ね、それだと沢山は使えなさそうだな。確かそれに似たような魔法は読んだ気がするけど、なんだったかな」
「昔はそういうものがあったと聞いたことがあります」
「まあ、今度見せてもらおうかな」
「そういうことならば是非。では、私から現状を説明したいのですが」
それから三人はテーブルについた。
「で、魔獣がどうとかっていう話は聞いたけど、詳しくはどういうことになってるんだ?」
「ええ。まず私達の世界には魔獣と呼ばれる危険な存在がいます。その魔獣が特におかしなことになったのは今回が二回目で、前回の山のように巨大なモノはヨウイチさん達のおかげでなんとかすることができました」
「それで、今回はどんな問題なのでしょうか」
「前回は新種の魔獣が出現したのですが、今回は既知の魔獣の力が強くなっているんです。我々ギルドとしても対応に苦慮しているところです」
「なるほどな。じゃあ俺達はその原因をなんとかすればいいってわけか」
「しかし、簡単にわかるものでしょうか」
カレンはそうつぶやくが、それにはケインがうなずいてみせた。
「それならば、少しは調べがついています。しかし、戦力が足りないせいで、現状ではそこまでの対応ができません」
「わかってるなら、それをなんとかすればいいわけだ。明日からでいいかな」
「そうしていただければ助かります」
「よし、決まりだ! あとは夕食をどうするかだけだな」
「それなら市場を案内しますよ」
「よろしくお願いします」
そしてケインを先頭にして市場に向かう途中、三人は要一に出会った。
「ああ、良かった。タマキさん、夕食は一緒にとりませんかってエニスが言ってて」
「それはちょうどいいな。ご馳走になろうか」
タマキがカレンの顔を見ると、うなずきが返ってきた。
「そうですね、ご一緒させて頂きましょう」