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変わり者

 タマキは二人の少年少女を連れて町に戻ってきていた。そして宿の部屋に戻るとそこにはオーゲンがいた。


「ん、そいつらはなんだ?」

「そこで拾ってきたんだ。ちょっと変わった連中でな」

「変わってるか、どう変わってるんだ?」

「まあとりあえず、リシカとヒスクだ」


 タマキが二人を紹介すると、その二人は軽く頭を下げた。オーゲンはそれを見て、軽く首をかしげてみせる。


「リシカは災厄の痣を持ってるんだよ」


 タマキはさらっと言ったので、リシカとヒスクは止める間もなかった。だが、オーゲンはあまり大きく反応はせずに、少し目を細めてその二人を見つめた。


「どこで拾ってきたんだ?」

「ちょっとそこらへんでな。で、しばらく面倒を見ようと思うんだけど」

「それは面白い」


 オーゲンはにやりと笑うと、リシカとヒスクの前に立った。そして、ヒスクの目線をとらえる。


「ヒスクとか言ったか、お前はそっちの子とずっと一緒だったのか」

「そうですよ。それがどうかしたんですか」

「よし、ちょっとついて来い」


 そう言ってオーゲンはヒスクを引っ張って外に向かっていった。


「まずは装備からだ。ああ、俺はオーゲンだ」


 ヒスクに何も言わせずに、オーゲンは外に出て行った。


「やっぱり心配なかったな、とりあえず座ろうか」


 タマキはそう言ってから、リシカに向けて椅子を押し出した。リシカが椅子に座るのを確認してから自分はベッドに座り、しばらくの間二人は無言ですごした。


「あたしはこれからどうするの?」


 リシカがそう言うと、タマキは天井を見上げた。


「そうだな、リシカ、お前は力の発動はできるようだが、まだ自分の力をコントロールできてないらしいな」

「そう、それにたまに暴発もするし」

「今まではどうやっておさえてきたんだ?」

「とにかく人気の無いところを通って、暴発したときはおさまるまで待っていただけ。最初はヒスクが止めようとしてたんだけど、いつも怪我をするだけで」

「あれを止めようとしてよく怪我だけですんでたな」

「ヒスクを吹き飛ばして遠ざけておくくらいはできるようになったから。でも、そのたびに追手に見つかってとにかく逃げるしかなかった。もし、ちゃんとこの力を抑えられたら、そんなことにはならなかったのに」

「なるほどな」


 それからまた二人の間に沈黙が流れたが、おもむろにタマキが立ち上がった。


「それなら、その力を制御できるように色々やってみてもいいだろ。俺はそういうことはちょっと得意だからな」

「でも、そんなことしたって、追われることには変わりないし」

「どうかな、お前はまだ自分の力をわかってないだろ。あの竜の影はあんな状態でもかなりの力だったんだ。もし制御できれば、どれだけの力が出せるかな。それこそ、誰も手が出せないほどのものかもしれない」


 タマキの言葉にリシカはどう答えていいのかわからないようだった。


「まあ、やってみればわかることもあるさ。なによりも俺が見てみたいしな。だから俺だって本気でやるぞ、明日からだ」

「は、はい」


 リシカはタマキの堂々とした物言いに押し切られる感じで背筋を伸ばして返事をした。タマキはそれを見て満足そうに笑ってから、立ち上がった。


「お前達用の部屋をとってくるから、少し待っててくれ」


 一方その頃、ヒスクはオーゲンに連れられて質屋に来ていた。店内には家具などをはじめとして武器防具類も色々置かれている。


「好きな武器を選んでいいぞ」


 オーゲンはそう言って小物が置かれている場所に自分だけ移動してしまった。残されたヒスクは戸惑いながらも並べられている武器に向き合う。


 剣や斧、メイスや槍など様々なものが並べられていて、ヒスクは次々と目移りしながらもそのいくつかに手を伸ばし、実際に持ってみたりした。


 そのうちオーゲンが戻ってきてヒスクの背中を叩いた。


「どうだ、決まったか?」

「いえ、ちゃんとした武器は使ったことがなくて」

「それなら、とりあえず使いたいものを選べばいい」


 そう言われてヒスクは手槍を手に取った。


「決まったな。それとそこの短い剣もあったほうがいいだろ」


 そして、店を出たヒスクは手槍と短い剣を装備していた。それ以外にも古着を布に包んでかついでいる。


「あの、どうしてここまでしてくれるんですか? さっき会ったばっかりなのに」

「お前達が面白そうだからだな。それに、お前は武器の一つも使えそうにないのにあの子を守ってきたんだろ、そんなことができる奴なら大物になる。楽しみじゃないか」

「僕はそんなんじゃ。逃げ回ってただけです」

「逃げるっていうのは立派な戦い方の一つだ。俺もお前達を追っている連中には遭遇したが、あんな連中から逃げのびるっていうのは才能がなけりゃできん」

「そうなんですか」

「間違いない。しかし、タマキに会ってから間もないのに、面白そうなことばっかり起こるな。まるであいつが色々引き寄せてるみたいだ」

「あの人とは長い付き合いじゃないんですか?」

「いいや、まだ会ってから数日だ。でも、あいつは不思議な奴だし、なんとなく信じられそうな雰囲気があるんだよな」

「わかる気がします。でもすごい人ですね、あの人は。それにオーゲンさん、あなたも。リシカのことを聞いても少しも驚かないなんて」

「そうか? まあとにかくお前のことはこれから俺が鍛えてやるからな。楽しみにしておけ」


 それからその日の夜。リシカとヒスクは久しぶりにまともなベッドに横になっていた。


「リシカ、まだ起きてる?」

「起きてるけど」

「何か、変わった人達だね」

「本当。タマキっていう人はあたしが力をちゃんと使えるようにするつもりらしいし」

「僕のほうはあのオーゲンっていう人に武器の使い方を教えてもらうんだ。僕達のことを知った上でこんなに親切してくれるなんて、初めてだよ」

「別にそういうのじゃなくて、あの二人はきっとこれが楽しいんでしょ。ただの変人よ」

「あははっ! それはそうかも」


 そこで会話は終わり、またしばらくして、リシカが口を開いた。


「じゃあ、おやすみ」

「おやすみ」

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