表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
16/34

怨料理

異能の治療師が、人の心に潜む闇を祓う現代ファンタジーです。

 私が、旦那に「怨料理おんりょうり」を作り始めてから一ヶ月以上が過ぎていた。


 「怨料理」は、結果が出るまでに時間が掛かるので、本当はエチニラパキシルを食事に混ぜれば、料理を別に作る手間も省けて、直ぐに結果が出るのだが、犯罪なので露見した場合のリスクが高すぎる。


 自分はどうなっても構わないが、莉子が犯罪者の子供と蔑まれるのは、何としてでも避けねばならない。


 だから、時間が掛かったとしても合法的な手段を選んだのだ。


 しかし、結果は意外なほど早くあらわれた。


 今夜も、家族が寝静まったリビングで、私のハビーデスチャンネルへの書き込みが始まる。


ハンドルネーム:勇気リンリン

「ウチの旦那が、怨料理を食べ始めてから一ヶ月以上が経過した。

旦那は、体重が七キロも増えたと嘆いているが、どこか嬉しそうだ。

 お腹いっぱい食べられることが幸せなのだろう。

 考えてみれば、娘が生まれてから食卓にはカロリーの高い食事や、肉類を並べなくなった。

 旦那の好物だった白米も五穀米に変えたし、油っこい揚げ物や炒め物もやめて、ヘルシーな蒸し料理を増やしたのだ。

 それは、私の妊娠が判明した四年前から今も続いている。

アルコールもやめてもらったし、農薬や添加物にも気を使うようになった。

 若干、行き過ぎのきらいはあるが、それもこれも、子供の健康を考えれば当たり前のことなのだ。

 旦那にとっては、久しぶりに味わう好物だったのだろう。

あの日から、旦那の機嫌は良くなった。

しかし、そうなると私には新たな悩みが湧き上がってくる。

 今まで身勝手だった旦那が、急に優しい旦那に早変わりしたのだ。

 旦那専用の怨料理を用意しているので、食い尽くし癖がなくなったのは勿論だが、子供の世話や家事の手伝いまでしてくれるようになった。

 しかも、休日になると「莉子の面倒は僕が見るから、気晴らしに遊びに出かけたら」とまで言ってくれる。

 何だか、自分だけが悪事に手を染めているみたいで罪悪感に苛まれた。

 それに、旦那が積極的に家事や家族サービスをするようになって、娘との関係性も良くなってきた。

 それ自体は悪いことではないのだが、今まで、旦那を怖がってあまり近寄らなかった娘が、夕食の時、旦那の怨料理を欲しがるようになったのだ。

 心の中では、「止めて!それは毒だから食べないで!」と叫んでいるが、口に出しては言えない。

 これは大人の食べ物だからと、言い聞かせるのだが、最近では怨料理の味を覚えたのか、自分のおかずもパパと同じ物にして欲しいと言い始めた。

 こんな感じなので、今までは娘の分まで食べていた旦那が、今は、自分のおかずを娘に分け与えている。

 何だか、自分達が普通の家族に戻ったみたいだ。

 それに、先日の日曜日は旦那と娘が、ファーストフード店のハンバーガーを食べたと聞いて卒倒しそうになった。

 子供には、健康的な食事を摂ってもらいたいと思っているのに、子供は、それを望んでいない。

 何が正しいのか、分からなくてなってきた…

書き込みをこう結ぶと、早速、いつものメンバーからコメントが入ってくる。


ハンドルネーム:怨みつら美

「ハビーデスチャンネルって、旦那の愚痴を言い合う場所ですよ。

何だか、勇気リンリンさんの自慢話を聞いているみたいで気分が悪いです」


ハンドルネーム:勇気リンリン

「自慢話をしているつもりはありません。

でも、そう感じたのならゴメンなさい…」


ハンドルネーム:韓流好き子

「旦那に騙されちゃダメですよ。

DVもアルコール依存症も、一時的に良くなることがあるんです。

でも、それは波みたいな物で、今は引いているだけで、いずれ必ず打ち寄せて来ます。

だから、手を抜かずに怨料理を続けてくださいね。

それに、怨料理を止めれば元の食い尽くし旦那に逆戻りですよ。

応援しています」


ハンドルネーム:勇気リンリン

「おっしゃる通りですね。

アドバイスありがとうございます。

私も、旦那が消えてなくなるまで、迷いを振り払って頑張るつもりです」

最後までお読み頂き、本当にありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ