誕生日。来るはずのない人からのメッセージ。
誕生日、来るはずのない人からのメッセージ。
彼女は過去に引き戻された時、どのような答えを出すのか。
LINEの通知が鳴った。
何気なくスマホを取りだし、私は仰天した。
そこには、あるはずのない名前が記されていた。目を擦り凝視するが現実は変わらない。
「誕生日おめでとう。これ少しだけど。」
そう書かれた文面に、コーヒーショップのギフトカードが繋がれていた。
あぁ、こんなこともあるのだなと思った。
私は駅のタクシー乗り場に停まる車へ乗り込んだ。
家の住所を伝えると、車は走り出す。
郊外の街の灯りを眺めながら、今日のことを思い出す。
久しぶりに帰省した私に学生時代の友人が、誕生日だからと夕食に誘ってくれた。飲み屋を転々としながら、くだらない話をしていたら、こんな時間になってしまった。
携帯で友人にお礼のメールを送り、
既読のつかないように、先程のメッセージを見る。
「あの日はごめん」
と8年前に送られてきたメッセージに続く今日の日付。
彼と出会ったのは17歳の時。
高校2年のクラス替えで、同じクラスになったのが最初だ。
彼はルックスがよく、明るく、誰とでも分け隔てなく接するクラスの中心人物だった。
そんな彼と私が接点などあるわけがなく、時間は目まぐるしく過ぎていった。
ある日、いつものように図書館の自習室でテスト勉強をしていると、彼が入ってきた。
さすがに顔見知りだったからか、彼が無視できるはずもなく
「こんにちは七海さん。いつもここ使ってるの?」
そう声をかけてきた。
いつものように、穏やかな太陽のようなオーラを放つ彼に、形容し難い罪悪感にも似た感情を持ったことを、今でも覚えている。
それから何度もその自習室で会い、付き合うまでそう時間はかからなかった。
彼にとっては、私のような目立たず特に欠点もない人間は、都合が良かったのだろう。
一緒にいる時もいつも他愛もない話をしながら、一緒に下校し勉強した。
毎日会っているのだからと、デートというようなことはしないでいいと言ったのは、彼だった。
そんなちょうど8年前。
私は付き合って初めてのイベント。
誕生日に期待を寄せていた。
いつも私にも他の人にも、同じように接し優しい彼が、少しでも私を特別扱いしてくれると、そう思っていたのだ。
彼は私の誕生日を忘れていた。
いつものように一緒に下校し、自習室に寄った。その帰りに公園に寄り、自販機の前で彼の袖を握り、足を止めた。自販機の明かりに照らされた、彼の黒く透き通った瞳を見つめた。
だが、今日がその日だと言えなかった。
そして家に着いた。
もう別れよう。
そう決意し、彼にメッセージを送り、私たちの関係は終わった。
そんなどこにでもあるような青春が、今では少し切なく暖かく感じ、酔った涙腺を刺激する。
私はこのメッセージに、何を返すのだろう。
この8年間、私の記憶の中で密かに疼いていた、この感情に答えを出す時が来たのだ。
「私の方こそごめん。ありがとう」
そうメッセージを送った。
青春ですねぇ。




