表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/34

4話 異世界の貧乏村···


村の入口には簡素な衝立と、申し訳程度の柵。


…いや、あの猪モンスターが突進したら一瞬で吹き飛ぶだろ、これ。


遠目でもわかる。


この村は、貧しい。


古びて色褪せた木造の家々。

ひび割れた石壁。


道端には干からびた野菜と壊れかけの荷車。

鼻をつくのは、腐った柑橘類のような嫌な臭いだ。


村の入口っぽい所で門番らしき男が二人、切り株に腰掛けて昼間から酒盛り中。


あいつら人間だよな……?


だらしない格好で、頼りない長槍を握っている。


大丈夫か、この村?


男たちは俺に気がつくと、ふらつきながら立ち上がった。


「止まれ!何者だ!」


はいはい、テンプレ展開。

(とりあえず言葉は理解できるな)


俺は苦笑しつつ両手を上げる。


「怪しい者じゃありませーん。森で道に迷ってしまって」


すると男たちの目が一気に見開いた。


「森で迷っただと!? 嘘をつくな!」


え、なんで?


槍を向けたまま距離を詰めてきたと思ったら、あっという間に取り押さえられ、手足を縛り上げられた。


酒飲みのくせに、力つよっ……。


そのまま俺は村の中へ連行された。


村人たちの視線が突き刺さる。


子どもは物陰に隠れ、

老人は露骨に顔をしかめ、

誰もが「厄介者を見る目」を向けてくる。


石畳の道を引きずられて歩きながら、俺はぼんやり考えた。


(……これが異世界の村、か)


想像よりずっと現実味があって、

なんだか妙な気分だな。


村人たちは俺と目が合うと気味悪そうに視線を逸らした。


(そうだ……人のステータスも見えるか試してみるか)


村人の一人へ意識を向ける。


『ステータスオープン』


すると頭上にウィンドウが展開された。


けど、表示は思っていたより簡素だ。


名前

TMゲージ

特徴


……スキルがない?


周囲の村人にも試すが、ほとんど皆同じ。

たまにスキルが表示されている者もいるが……

どうやら全員がスキル持ちってわけじゃないらしい。


じっと見すぎたせいで子どもが泣き出し、

視線が合った村人は逃げるように家へ駆け込む。


…傷つくんだけど。


やがて村の中央広場に連れていかれた。


そこには質素ながら重厚な木造建築。

どう見ても“役所”とか“裁判所”的な建物だ。


中へ押し込まれると、

大きな机の奥に一人の男が座っていた。


六十代くらい。

穏やかな顔つきだが、目の奥が鋭い。


……この村で一番偉い奴か?


念のためステータス確認。


名前:ガルド・ヴェイン TM:18/75

スキル:真実の目

特徴:村長/正義感/統率力/冷静な判断/責任感/観察眼/疑念を見抜く者/嘘を許さぬ者/現実主義/堅実


(スキル持ちの村長か)


嘘発見器みたいな能力か?


……下手な嘘はやめとくか。


「お前、森で迷ったと言ったな。名は?」


「アマギ ルイ」


「どこから来た?」


「とんでもなく遠いところから」


少し沈黙したあと、さらに質問が飛ぶ。


森で何をしていた?

山を越え一人でやってきたのか?

持ち物は?


その質問に俺は淡々と答えていく。


「一人できました」

「持ち物はありません」

「死ぬために森にいましたが、死にきれず彷徨ってここに辿り着きました」


場の空気が凍る。


「この村で何か悪さを企んでいるか?」

一番聞きたかったであろうその問いに


「いいえ、何も」

と軽く答える。


村長は俺の目をじっと見つめると、一瞬眼光が光った気がした。


それから眉をしかめると小さく息を吐いた。


「……この者の言葉は真実のようだ」


その場がザワつき、動揺が広がっている。


村長はそれを鎮めるかのように少し声を張った。


「村への立ち入りは許可する。

しかしながら“帰らずの森”を越えてこの村へやって来た者は初めてのこと。

前例がないため監視付きだ」


「この村に他人を養う程、余裕のある者はいないゆえ、食料は一日分だけ支給する」


「それを持って故郷へ帰るか、隣街へと行くとよい」


村長は周囲を見渡す。


「監視役を申し出る者はいるか」


……誰も手を挙げない。


気まずい沈黙。


しばらく静寂が続き、

ようやく一人の少年が恐る恐る手を挙げた。


「よし、閉廷」


村長の言葉を合図に、ぞろぞろと人が去っていく。


俺も出ようとして――よろけた。


…あ、縄。


「ちょ、これ外してくれよ!」


虚しく響く声。


残ったのは、俺と監視役の少年だけだった。


去り際、村長が振り返る。


「足の縄は切れ。だが手の縄はお前が信用できるまで拘束しておけ」


少年は小さく頷く。


……まじかよ。


村長が立ち去り、静まり返る室内。


「……はぁ」


俺は床にどさっと座り込み、少年を見る。


目が合った瞬間、少年はビクッと震えた。


赤毛にそばかす。

ボロボロの服。

年は10歳くらいか。


「君が監視役?」


少年は小さく頷く。


「は、はい……」


「俺は悪いことする気ないぞ?」


「そ、村長の命令なので……」


「はいはい、命令ね……それで、俺はどうすればいい?」


苦笑いをしながら少年を見ると、少年は困ったように視線を泳がせた。


「監視は、初めてで……どうしていいか……」


「俺もこの世界は初心者だよ」

思わず笑う。


何を言ってるのかわからないという顔で、少年は首を傾げた。


「てか、足縛られたままって不便すぎ」


「す、すみません! 縄を切る道具、家に帰らないと無くて!」


「OK、把握」


「君の名前は?」


「……オレオ、です」


その名前を聞いた瞬間、黒いクッキーが頭に浮かぶ。


思わず吹き出してしまった。


「悪い。ちょっと思い出し笑い」


オレオはきょとんとしつつも、少しだけ緊張を解いた。


(……まあいいか)


一日中監視付きは面倒だけど、

敵意むき出しの大人より、

このビビり少年の方がマシだ。


俺は縛られた手首を見つめながら、小さく息を吐く。


第一村人にいきなり確保されて、悪いこともしてないのに裁判にかけられるって···


異世界こわっ


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ