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19話 憲兵分隊長···

自転車はもちろん、シルの短剣や、俺が預かっていた長剣、オレオのカバンまで取り上げられる。


兵に囲まれながら、俺たちは輸送用の馬車に押し込まれた。


荷台は簡素な造りだが、外の警戒は異様に厳重だ。

左右に兵、前後にも配置。完全に逃がす気がない。


(外から見たら····完全に犯罪者だな)


舌打ちしたくなるのを堪える。


ガタン、と扉が閉まる。


すぐに車体が揺れ、輸送馬車が動き出した。


石畳を叩く音が一定のリズムで響く。

ガタガタと揺れるたびに、身体がわずかに浮く。


外の景色は見えない。


分かるのは、進んでいるということだけだ。


(····どこに連れてく気だ)


時間の感覚が曖昧になる。


やけに長く感じる。


(クソ····)


俺は頭を押さえた。


時間が、確実に削られていく。


その横で、シルがだるそうに口を開いた。


「言っとくけどさ」


「アタシのせいじゃねぇからな?」


(は?)


思わず睨む。


シルは気にした様子もなく続ける。


「焼印が二つあっても、街の出入りは自由なんだよ」


「ただの前科持ちってだけだ」


「罪の種類は焼印で分かるし、記録も残る。だから警戒はされるけどな」


緊張の欠片もなくニヤリと笑う。


「詐欺なら二つまではセーフだ」


(セーフの基準どうなってんだよ)


呆れるしかない。


だが——


(····この状況は)


没収された自転車。


あれが原因だ。


村までの帰り道は、あれを使って時間を巻くつもりだった。


だから多少目立っても構わないと判断した。


結果——これだ。


(完全に裏目だな····)


小さく息を吐く。


揺れが続く。


その間にも、頭の中では計算が止まらない。


(今の時間帯····距離····)


門からだいぶ離れた所まできてる。


やがて、揺れ方が変わった。


石畳の音が少し静かになり、代わりに人の気配が増える。


(····人通りが多い場所か?)


減速。


そして——


ギィ、と軋む音。


重たい扉が開くような音がした。


輸送馬車はそのまま進み、やがて完全に止まる。

扉が開かれ、

「降りろ」

と短く命じられる。


俺たちはそのまま降ろされた。


目の前にあるのは、石造りの建物。


そして振り返ると——


大きな門。


人の出入りが多く、列も見える。


(····なるほどな)


こっちはベルクハイムの正門側か。


さっきの裏門とは、明らかに規模が違う。


(わざわざこっちまで運んだってことは——)


本格的に調べる気だな。


(最悪だ)


俺は空を見上げた。


日が傾き始めている。

あと数時間もすれば暗くなる。


(時間がねぇ····)


焦りがじわじわと滲む。


「行け」


背中を押される。


雑に腕を掴まれ、そのまま中へ引きずられる。


中には様々な人間がいた。


いかにもな悪党面。

無表情な兵。

真面目そうな顔の男。


だが共通しているのは——

誰一人、余計なことは喋らない。


建物内を見渡す。

石造りだが、死角がない構造となっていて、全体の様子が一目で見渡せる。


入って左側には客間のような部屋や待合室のような部屋があり、

右側には留置用の管理部屋や簡素な部屋が並ぶ。

内装や見た目は違えど、構造的にはどの部屋も同じだ。


怪しい動きをする者がいれば、すぐに見つけられる機能的な作りだ。


俺達は右側の廊下を通り抜け、更に奥へ進む。


連れていかれたのは、何もない部屋だった。


机と椅子だけ。

窓も小さい。


逃げ場も、隠れる場所もない。


「入れ」


俺とシルは背中を押され、そのまま中へ。


ギィと鉄格子の扉が閉まる。


鍵のかかる音。


(小綺麗なテーブルと椅子が用意された·······牢屋じゃねぇか!)


完全に詰みだ。


ふと、外を見る。


オレオが離れた場所にいた。


どうやら焼印がないことと年齢のせいで、別の場所に回されるらしい。


(あいつ一人で大丈夫かよ····)


不安そうな顔で、こっちを見ている。


「····」


何か言おうとして、言えない顔だ。


そのまま、兵に促されて見えなくなる。


(····大丈夫じゃねぇな)


心の中でだけ呟く。



暫く待つと


ギギギィという嫌な音と共に扉が開いた。


入ってきたのは——あの男だ。


ヴァルク・セルゼン。


無駄のない動きで部屋に入り、そのまま椅子に座る。


その後ろには、下級兵が二人。


無言のまま壁際に立ち、こちらを監視している。

逃げ道を塞ぐ位置取りだ。


視線が、真っ直ぐこちらに向く。


逃げ場はない。


「····さて」


低い声が、静かに落ちた。


「─話を聞こうか」


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