第7話 猫耳のメイドさん
書いていてとても楽しかったです。
私が能力の確認を終えて一息ついていると、扉の外から話し声が聞こえてきた。やばっ、誰か近づいて来てる!
慌ててベッドの方に戻ろうとするけど、筋力がない上に不慣れな身体でもたついてしまう。私がようやく立ち上がると、その瞬間扉が開いた。
扉の先にはメイドさんが二人いて、驚いた顔でこちらを見ている。……何か不味いことをしただろうか。お互いを見つめあったまま固まっていると、やがてメイドさんの片方が正気を取り戻した。
「ユリシア様がお立ちになってる!」
「──っ!えっ、えっと。どうしたら」
「私が奥様に伝えに行ってくるわ!貴女はここでユリシア様のお相手をお願い!」
そう言うと、メイドさんの片方が慌てた様子で走り去っていく。しばらくすると遠くの方で走りさったメイドさんに対する注意の声が聞こえてきた。恐らく屋敷内を走っていたことを見咎められたんだろう。
そんなことを考えながら、私は部屋に残ったもう一人のメイドさんの方を見続けていた。メイドさんはまだ10歳くらいの女の子だった。黒髪に金色の眼をしていて、肩口に届くくらいのサラサラの髪の可愛い女の子。
しかし、私がメイドさんを見つめていたのは可愛いからじゃない。いや、可愛いのもそうなんだけどそれだけじゃなくて、なぜならそのメイドさんには──
猫の、耳と尻尾があったのだ。
メイドさんについている耳と尻尾は、その感情の動きに合わせてか時折ピクピクと動いている。その様子からして偽物には見えない、どうやら本物のようだ。なにあれ可愛い。ロリっ子猫耳メイドなんて属性詰め込みすぎでしょ!あれは反則だって!もともと可愛いのに耳と尻尾でもっと可愛くなってる!
私は、初めて人間以外の種族にあったというのに、その思考は可愛いで埋め尽くされていた。男たちがメイドカフェに行きたがる理由が分かった気がした。あれは仕方ないよ、だって可愛いもん。にしてもあのメイドの子幼いな、見習いの子だろうか。
私がメイドの女の子をずっと見つめていると、メイドさんは恐る恐るという感じでこちらにやってきて、そのまま目の前に膝を着く。私は思わず近くにやってきた猫耳に手を伸ばそうとしてしまったけど、身長が足りずにバランスを崩してしまった。
メイドの女の子は倒れそうになった私を慌てて支えるとそのまま抱きかかえてくれた。猫耳の魔力に惑わされてまだ身体の扱いに不慣れなことを忘れていた。この子が抱き留めてくれなかったら危なかった、もっと気を付けないと……
さっきは思わず手を伸ばしてしまったけど、流石に不躾すぎたな。いくら今は赤ちゃんの身体だからって相手は女の子だ。べたべたと触るわけにはいかないよね。
私が少女の腕の中で先程の行動を反省していると、視界の端にゆらゆらと揺れる尻尾があった。思わず目で追ってしまう。分かってる、今さっき反省したばかりじゃないか。女の子の身体に相手の許可なく触ることは、たとえ同性であっても許されることではない。自制するんだ、私。ああでも、どうしても眼を尻尾から離せない──
私が理性を総動員して耐えていると、メイドの女の子は何を思ったか自分の尻尾を私の手の届く所まで近づけてくれた。えっと…?これは一体…?
メイドさんは先程猫耳に手を伸ばしたことと、ずっと尻尾を見続けていたことで、どうやら私が触りたがっていることに気づいたらしい。
つまり触っていいという相手の許可が下りたということだ。触りたいという衝動をずっと我慢していた私は、目の前にある尻尾を掴む。
「んっ」
すごい、ちょっと固い感じがするけどサラサラとしていてとても気持ちがいい。
「くふっ」
猫ってどんな風に触ったら喜ぶんだっけ。確か毛を逆立てるような触り方は駄目だって聞いたことがある。とりあえず毛の流れに沿って優しく撫でてみる。
「んあっ」
私は夢中で尻尾を触り続ける。なんだろう、撫でているうちに楽しくなってきた。思わず夢中になって色んな触り方をしてしまう。
「ユリッ、シ、あさまっ、んあっまっ、まって」
やばい、たのしい、猫ってすごい。なんて素晴らしいんだろう。
私はそのまま尻尾を触り続けた。触っている途中に何か聞こえていたような気がするけど、ほとんど聞き流していたし、そのうち静かになっていた。
そうしていると、扉の外が騒がしくなって、誰かが近づいてくる音が聞こえてきた。どうやら部屋から出ていったメイドさんが母を連れてきたらしい。頭の片隅ではそんなことを考えているが、その手はまだ尻尾を触り続ける。
そうしてメイドを連れた母が部屋に入ってきて最初に視界に入ってきたのは。
「──っ───ッ!///」
「♪」
私を抱きかかえたまま、飛びそうな意識を何とか繋ぎ止めているメイドの少女と。その少女の腕の中で熱心に尻尾を撫で続ける娘の姿だった。




