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第5話 転生後の情報収集

 ようやく主人公がエルディアの地に降り立ちました。

 ふと気が付くと、晴れ渡った青空を背景にして銀髪のとても綺麗な女性の顔が視界に入ってきた。どうやら私は向かい合って座るように女性の膝に抱きかかえられているみたい。多分この人が私の母親なのかな?大体20代前半くらいだと思う。


 その女性は傍に控えるように立っている、メイド服のようなものを着た初老の女性と何やら話し合っている。話の内容は分からなかったけど、親しい関係なのかとても穏やかな空気だった。


 私の認識ではついさっきまで神様たちと会っていて、光で出来た扉を潜ったらいきなりこのような状況だったため少し混乱したけど、無事に転生して記憶が定着したみたい。赤ちゃんについては知識でしか知らないけど、身体の大きさや安定感からして恐らく生後一年近くは経っていそう…かな?


 周囲を確認してみると、どうやら大きなお屋敷の中庭にいるみたい。ベンチに座って日向ぼっこ中って感じ。取りあえず翻訳スキルを使えるようにしないと。話はそれからかな。


 識別眼がどういった挙動をするか分からないため、私を抱く女性の身体に抱き着くようにしてから顔を伏せる。もしスキルを発動している時に目が光りでもしたら大変だ。機会があれば鏡で確認しないと、それまでは人前で迂闊に使えない。見知らぬ女性に抱き着くのはちょっと抵抗があったけど、なんとなく大丈夫っていう感覚がした。記憶が定着する前から接していたからなのかな?あ、頭撫でられるの気持ちいい………はっ、危ない一瞬意識がトリップしかけた。


 識別眼の使い方は分からなかったけど、前世の私と比べるととても小さな自分の左手を見ながら、自分のことを調べようと意識してみる。すると、視界に今世での私の情報と所持しているスキルの一覧が表示された。情報量が多かったけどそれについては後で落ち着いたタイミングで確認するとして、スキル一覧の中から翻訳スキルを見つけ出し、オフになっていたそれを起動したら急いで能力を解除する。


 すると急に二人の会話を聞き取ることが出来るようになった。


「レミリア様、春先になり大分暖かくなってきたとはいえ、お外はまだまだ冷えます。お身体に差し障る前に室内へお戻りになった方がよろしいのではないでしょうか」


「もう、ヘレンったら過保護なんだから。この子を産んでから身体も鍛え直したしこれくらいで体調を崩すほどやわじゃないわよ。まあでもこの子が風邪を引いたりしたら困るものね。今回は大人しく部屋に戻ることにするわ」


「それがよろしいかと」


 そう言って女性が私を抱き抱えたまま立ち上がり、お屋敷の方へ向かって歩き出す。どうやら私を抱いている女性が今世での母親で間違いないみたいだ。母親の名前がレミリアで、初老のメイドさんの名前がヘレンというらしい。


「この子も来月には1歳になるわね。初めて子供を育てるから大変なこともあったけど、ヘレン達が助けてくれたおかげでこの子も健やかに成長してくれたわ。いつもありがとうね」


「そんな、(わたくし)めには勿体ないお言葉でございます」


「何を言っているのよ。わたしが子供の頃から傍で支えてくれていたんだから、これくらいの感謝の言葉は受け取っても罰は当たらないわ」


 二人はそんな会話を交わしながら、中庭からお屋敷の中に入って行く。ヘレンさんは固い言葉遣いで謙遜しているけどその顔は穏やかに笑っていた。母からもヘレンさんに対する信頼を感じられるし、温かい人たちなんだと思う。


 二人の会話からして、私は現在生後11ヶ月くらいのようだ。ガイオス様の話では遅くても2年くらいで記憶が定着するということだったから。結構早かったみたい。


 そんなことを考えているうちに二人は室内に入り、しばらく歩いた先にある大きなガラスが使われたサンルームのような場所にたどり着いていた。母はそのまま日当たりのいい場所のソファに座ると、ヘレンさんが戸棚の方へと向かいティーセットを運んでくる。


「そういえばユリウスが帰ってくるのって今日だったわよね?」


「はい、旦那様は今夜お帰りになるご予定です」


 ユリウスというのが父親の名前だろうか。


 ヘレンさんはガラスのティーポットを二つ用意してポットの中に水を入れると、そのままポットに手を添えて何かに集中する様子を見せた。疑問に思っていると、急にポットの中の水が沸騰しだした。ヘレンさんはポットに添えていた手を放して用意したカップにお湯を注ぎ、しばらくしてからカップと片方のティーポットの中のお湯を捨て、空いたポットに茶葉を入れてからお湯を注ぎ直した。


 私はヘレンさんの一連の行動を呆然として見ていた。


 もしかして、今のが魔術!?水がお湯になっていたってことは多分火属性魔術かな?


 私は初めて魔術を目の前で見て思わずヘレンさんを識別眼で確認したくなったが、ぐっと我慢する。他の人の目がある状況で動作確認をしていない能力を使用するわけにはいかない。


 ヘレンさんはそのまま準備を進めていき、用意された紅茶を母が飲む。


「うん、流石ヘレンね。紅茶の味なら王城のメイドでも敵わないんじゃないかしら」


「持ち上げすぎでございます。これくらいの技術は奥様にお仕えする以上出来て当然です」


「もう、素直じゃないわねぇ。火属性魔術をそこまで精密に操って、しかもその日の気温なんかに合わせてお湯の温度を調整するなんて、そこらのメイドには真似出来ないと思うんだけど」


 二人はそんな取り留めもない会話をしばらく続けていた。


 私は二人の会話を聞いて情報収集をしていたけど、温かい気温のせいか赤ちゃんの身体のせいか分からないけど急に眠たくなってきた。


 母はそんな私に気が付いたのかソファから立ち上がり、ヘレンさんと話し合いながら部屋の入口へ向かっていく。どうやら寝室に連れていかれるらしい。


「おやすみなさい。ユリシア」


 うとうととしているとそう言って母に頭を優しく撫でられた。そのことに安心した私はそのまま意識を手放すことにした。

2026/03/23

・第3話での修正に伴い一部の文章を修正しています。

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