第2話 自己紹介と今後の話
ネーミングセンスってどうやったら養えるんでしょうか。
衝撃の事実を告げられた私は少しの間放心していた。
「うぅ………ぐすっ…」
女神様はすっかり意気消沈している。正直まだ混乱しているところではあるけれど、取りあえずまずはこの子を何とかしないと。
「女神様?謝罪は受け取りましたから、ほら顔を上げて?」
「ふぇ?」
私は女神様の前に膝をつくとそっと顔を上げさせる。
「責めないんですか…?わたしは貴女の命を奪ったんですよ?」
「全く反省の色が見えないのならともかく、ちゃんと自分のしたことを反省して謝ってくれている相手をこれ以上責めたりなんてしませんよ」
そう言って女神様の顔を上げさせ、目尻を伝っていた涙を親指の腹でそっと拭う。うん、やっぱり可愛い子には涙なんて似合わないよね。どうせなら笑っている顔がみたい。
「っ…!」
「神様も頭を上げて下さい。ちゃんと謝罪は受け取りましたから」
女神様を立ち上がらせながら神様に対してもこれ以上の謝罪は不要だと伝える。
「…そうか、お前さんがそう言うならばそうするかのう」
神様も頭を上げてくれた。その間に私たちもそれぞれの席へ座りなおす。
また神様が手を振ると、今度は人数分の湯飲みと急須が出てきた。…もう驚くまい。なんだかこの状況にも慣れてきた。私たちはお茶を飲んで一息つくとだいぶ落ち着いてきた。女神様はまだ顔が赤いけど大丈夫だろうか。
「まずは自己紹介をしようかのう、ワシはガイオスという。先程も言うたがこの辺りの世界の管理をする神々を束ねる最高神の位についておる。神としての役職は創造を司っておるのう。そしてこやつは孫のアイリスじゃ、まだまだ未熟で神としての役職には就いておらん」
「アイリスと申します…」
ガイオス様とアイリス様というらしい。ガイオス様は金色の瞳と白い髪と長い髭を伸ばしたお爺さんだ。魔法学校の校長先生とかしてそう。
アイリス様は深い色鮮やかな紫紺の瞳と桃色の腰まで届く柔らかそうな髪をした美少女だ。外見年齢は高校三年生の私と大体同じか少し下くらいかな?とても可愛い。
「ご丁寧にありがとうございます。私は四之宮優華と言います。日本では学生をしていました。よろしくお願いします」
「うむ、よろしく頼むぞい」
「よろしくお願いします」
そう言ってお互いに自己紹介を交わした。
「さて、次は現状の説明とユウカ、お主の今後の話じゃ」
「今後の話ですか?」
「うむ、現世では既にお前さんの身体は病院へ運ばれ死亡が確認されておる。いくらワシらの過失とはいえこの状態から生き返らせることはできんのじゃ」
まあそりゃそうだよね、神雷が直撃したって言ってたし状態がいい訳がない。雷に焼かれた焼死体が生き返ったらそれこそ事件だ。
「それでのう、お前さんには二つ選択肢があるのじゃ」
「はい」
「一つ目は地球で生まれ直すことじゃ、こういった場所に生まれたいなどの希望があれば叶えられる範囲ではあるが聞くぞい、しかしこの場合は記憶を消さねばならんのじゃ」
ふむ、例えば日本のお金持ちの家に生まれ何不自由することなく生きられるということだろうか。少し惹かれるものはあるけど記憶を消すということは実質この私とは別人になるということだよね。決めるのはもう一つの選択肢を聞いてからにしようかな。
「二つ目は地球とは別の世界で生まれ直すことじゃ、この場合はお前さんの記憶は引き継いだまま第二の人生を送ることが出来るのじゃ。いわゆる異世界転生というやつじゃな、お詫びの特典として望みの能力があれば希望を聞こう、お前さんの国ではそういった物語が流行っておるじゃろ?ワシも暇な時に読むぞい」
神様もラノベ読むんだ……
「日本に転生するのと異世界に転生するので結構サポートの内容に差があるんですね?」
「日本がある世界は魔術や魔法の存在は世間一般に認知されておらんからのう。そのせいで神として干渉できる範囲にも限りがあるんじゃよ」
「えっ?地球にも魔法ってあったんですか!?」
なにそれ初耳なんだけど!?
「お前さんの世界ではそういった神秘に属するとされるものは隠されておって、今では人間以外の種族は社会に紛れ込んでおるか隠れ里なんかに住んでおるかじゃな。それよりかは魔法が周知されておるファンタジー世界を冒険する方が楽しいと思うぞい。可愛いおなごと冒険したくはないかの?ワシはしたいのじゃ」
この方最高神様って言ってたよね?なんか俗世に染まってる気がするんだけど…。それにしても地球にも人間以外の種族がいたなんて衝撃の事実ってやつだ。私の知人の中にもそういう人がいたんだろうか。
「まあ、所詮ワシら神も人じゃからのう。ただ種族が違い出来ることが多いだけじゃ、実際に二つ目に提案した世界では神族という一種族として認知されておる」
そういえば忘れてたけど考えていることが分かるんだっけ、もしかしてアイリス様もそうなんだろうか。
「こやつはまだ未熟じゃからワシと同じレベルの読心は出来んのう。相手に触れた状態ならば分かるじゃろうが」
「へぇーそうなんですか」
さっき少し触れちゃったけど特に変なことは考えてなかったし多分大丈夫かな。
「………こやつ自覚が無いのか」
「…?自覚ですか?」
「いや、何でもないのじゃ」
少し気になったけどなんともいえない顔ではぐらかされた。まあいいや、取りあえず続きを聞こう。魔法がある世界だし記憶も残せるということで私の中ではもうほとんど決まっているんだけど、聞けることは今のうちに聞いておきたい。
「魔法がある世界ということはやっぱり化学が発達していなかったりするんですか?」
「うむ、その通りじゃ。国によっては魔術と科学のどちらも進んで研究しておるところもあるが、全体的な文明レベルとしてはお前さんの世界よりかは遅れておるのう。」
ファンタジー小説は好きだったし、なんとなく想像はできたかも。
「魔物なんぞもおるし賊も出るせいでお前さんの暮らしておった世界よりかは危険も多いのじゃが、そこはなるべく治安のいい国に転生させようと思うておる」
「至れり尽くせりですね」
「そりゃあワシらの方に負い目があるからのう…」
「そういうものですか?」
「そういうもんじゃ」
そういうことらしい。私の方はもう仕方ないものとして受け入れているし、ほとんど気にしていないんだけどなぁ。
「さっきから思っておったがお前さんずいぶんと人が出来ておるのう…」
「え?あはは…そんなことないですよ。普通ですって」
そんな正面からしみじみと言われると流石に照れる。
「まあよい、話を戻すのじゃが何か他に聞きたいことはあるかの?何でも聞くといいのじゃ、答えられる範囲ではあるが答えよう」
「そうですね、それではいくつかお聞きしても?」
その後、いくつかの質問をガイオス様していった。アイリス様も時折補足をしてくれた。
異世界の名前はエルディアと言い、本当に数多くの種族が暮らしているらしい。ここ500年程は小競り合い程度ならともかく、大きな戦争などは起きておらず、私の転生する候補の国はかなり豊かで周辺国と比較してもかなり安定しているらしい。
あとは魔術と魔法の違いやスキルというものについても色々と教えてもらったけど、私はこの辺りでこの世界に転生することを決意して、いくつかの候補の中から神様たちと相談しながら転生先を決めた。
私が生まれる家はオルテア大陸のエルザード王国という国にあるハイゼンベルグ公爵家という貴族家に転生することになった。500年前の大戦で活躍した英雄が王女を娶ったことで出来た公爵家なんだとか。魔物なんかがいる世界ということで、いざという時に自分の身を守れる程度には強くなりたかったし、大戦の英雄が築いた家ならそういった教育とか充実してるんじゃないかな。それに貴族家なら他の勉強をする余裕もありそうだし。
魔法や魔術がある世界に転生出来るのは楽しみだけど、何も考えずに無邪気に喜べるほど能天気ではないつもりだ。神様がなるべく治安のいいところとは言ってたけど、それでも身の危険はあるかもしれないし、そんな時に自分で切り抜ける力が無いのは嫌だから。
そのあとは神様たちについても少し聞いてみた。なんでも、ガイオス様は他の世界の管理をしている神々の統率もしなければならないため、どこか特定の世界に属しているわけではないし、下界に降りることもないんだとか。エルディアでも世界を創造した神として崇められてはいるが、世界の管理は他の神族の方々に任せているんだって。
ガイオス様の親族はエルディア以外の他の世界にもいて、エルディアにいるのはアイリス様とそのご両親だけなんだとか。ちなみにアイリス様はガイオス様のお孫さんの中では一番年若いらしい。
「基本的にしっかり者なんじゃがたまにうっかりミスをするんじゃよなぁ…これほどまでに酷いのは今回が初めてじゃよ」
「本当にすみませんでした…」
「いえ、もう気にしないで下さい。謝罪は先程して頂きましたから」
前世に未練は無いし、第二の人生も歩めるんだからこれ以上気に病まないで欲しいな。
「事前知識としてはこんなところかのう、あとは現地でも学べるはずじゃ」
「ありがとうございます。勉強になりました」
転生先の世界についての知識はいくらあっても困るものではないよね。
「あとはお主に与える特典についてじゃのう」
2026/03/23
・エルザード帝国→エルザード王国へ変更




