オブリラへ
ケティア達は急ぎ用意を終え、エルモンド邸に到着する。
丁度、門の前でビシデがジエスの見送りに出ていた。
「それじゃあ、行ってくるぞ」
「ああ、無事に、行ってらっしゃい」
ビシデは願掛けのキスをして、ジエスを見送る。
まもなくエーシエも合流し、オブリラへ向け、一行はチッチョルを出立する。
「それで、戦地の状況は?」
オブリラへの道中、馬を走らせながら、ケティアはジエスに訊ねる。
火急の要請に、オブリラの情勢はまだジエスから聞いていない。
「オブリラは、今は魔物たちから都市を守る篭城戦に入ってる。外側からの救援軍が出てはいるがまだ『首』が取れてない」
要塞都市オブリラは大陸の東方、山岳地帯の中腹にある要塞都市で、山岳地帯防衛の為の武器などを備蓄する拠点になっている。
ジエスは、苛立ちを隠そうともせずに続けた。
「開戦から、半年だ。その間、オブリラには何の補給も支援もできてねぇそうだ」
「半年もっ!?なんで、そんな…」
『首』と魔物たちの軍勢との戦闘は、ほとんどが長くてもせいぜいが2ヶ月ほどで、『首』が討たれるか、または都市が陥落するか、そのどちらかで終結となる。
半年も長くに渡り続く戦闘なんて、ケティアは聞いた事が無かった。
ジエスは、更に苦々しい表情でケティアに告げる。
「…外部に情報が漏れないようにしてやがったんだよ」
「それって…」
「…箝口令が敷かれてる。今回の戦場は、クソッタレな王国軍の管轄、しかも指揮してやがるのは、これまたボンクラな第2王子様だ」
その言葉に、反応したのはユービスだった。
「王族直下?あいつら、楽な戦場にしか出てこないんじゃねぇの?」
確かに、王族が実際に指揮を取るのは、指揮系統や布陣が取りやすく、戦いやすい戦場である事が多い。
「軍事拠点のオブリラの防衛だ、王国軍だけで、楽勝だと踏んだんだろ。蓋開けてみれば、実際は半年にも及ぶ消耗戦だ」
そこで守られるのは王族にとって、何よりも大切な物だった。
それが、国民であればどれだけ良かったか…
「じゃあ、その箝口令って…」
「軍事拠点の防衛なんて、聞いただけなら楽勝な戦いだ。そこに兵も金も注ぎ込んで半年かかってました、なんて王族様方にすりゃ沽券に関わる不名誉極まりない非常事態だ」
それを口にしたジエスの言葉は、更に怒りと殺気が混じる。
「今回は、王国軍の縄張りで『首盗み』だ。王族様の面子をぶっ潰してでもオブリラを解放する」
王国軍管轄、まして王族直下の戦場から、横から『首』を掻っ攫う。
今回は、首盗みの金獅子の戦いだ。




