アルバイト
――こういうのあるなら、最初から出してくれればいいのにっ!!
内心でギルドでのアルエンヌの態度に文句を付けながら、ケティアは森を進む。
だが、紹介してもらった魔物討伐を含む、森での採集のアルバイトは、ケティアにとっては実にイージーな仕事だった。
ケティアは、木から木へとチェーンフレイルを引っかけながら、振り子の要領でスイスイと木々の間を縦横無尽にすり抜けていく。
この方法が出来るケティアにとって、森での移動は得意中の得意だった。
そして、目的の薬草やキノコを見逃さない動体視力と観察眼、更に、魔物の気配を逃がさない聴力と洞察力。
――やっぱり、森はいいなぁ♡
大得意な森での仕事に、楽々とお目当ての量の薬草とキノコ、更に討伐した魔物たちの魔石までしっかり集めると、ケティアは鼻歌まじりで上機嫌で帰路に着く。
ケティアが意気揚々と依頼の品を持って、ギルドを訪れると、建物の前では何故かジエスが待っていた。
「あれ?団長、どうしたんですか?」
「おう、お疲れさん。実はビシデから、おまえさんの事を聞いてな…」
そう言って、ケティアにお金袋を差し出す。
――ビシデが、前借り頼んでくれたのかな?今回のアルバイト代で、なんとかなるんだけどな…?
ケティアはてっきりビシデがお節介を焼いてくれたのだと思い、お金袋を受け取り、中を確認した。
そこには、来月分の前借りどころか、数ヶ月分の給料に匹敵する額が入っていた。
てっきり、銀貨や銅貨が入っているものだと思っていたのだが、お金袋の中に入っていたのは、なんと黄金色に輝く金貨だった。
――え…?
事態が飲み込めないケティアに、ジエスは申し訳なさそうに事の次第を説明し始める。
「実は、ドルーネンの『首』に、商隊が懸賞金かけててな、おまえさんの取り分、渡すのをすっかり忘れとったんだわ」
そう言って、ガッハッハッと笑うジエス。
――…えええっ!?
家計のために、天敵のアルエンヌに頼み込んでまで、アルバイトをしてきたのに、その苦労は全くもって徒労に終わったのだったのだ。
結局、今回のアルバイト代は、ケティアのヘソクリになるのだった。
「ただいま…おおっ!?今日の晩飯豪華じゃん!?」
「ママ、何かいい事でもあったの?」
「なんでもないっ!!」
並べられたご馳走とは裏腹に、何故か不機嫌な母に、頭に「?」が付く兄妹なのだった。




