繋いだ命と
誰も、こうなる事を予想しては居なかった。
困惑するエーシエは、どうしてこうなったのか、思案を巡らすが思い当たる節がない。
――…えっと?
エーシエの病室には、狭い病室いっぱいに、しまいは部屋の外にまで、負傷した兵士たちが押し寄せて来ていた。
「おい、なんだってんだ!!」
最初は戸惑い、兵士たち相手に食ってかかっていたユービスも、その様子が何かおかしい事に気づく。
兵士たちは、みなアイエルの方を向いていた。
兵士たちの目的がエーシエでは無い事にユービスは、すっと警戒を解いたが、ケティアはアイエルを庇うように、兵士たちの前に立ち塞がっていた。
「なんですか、あなたたち!!」
そう言ったケティアの背中から、アイエルは不安そうに兵士たちに目をやった。
おずおずと兵士たちを覗くアイエルは、その全員に見覚えがある事に気づく。
そして、その目に、微塵の敵意が無いことにも…
「待って、ママ…」
――この人たち、戦場で…
それはみんな、アイエルが戦場で治癒を施した兵士たちだった。
そして、兵士たちは次々に、我先にと話し始める。
その全てが…
『ありがとう』
アイエルへの、アイエルが施した治療への、感謝の言葉たちだった。
その言葉たちに、アイエルはケティアと顔を見合せる。
そこには沢山のアイエルが繋いだ命があった。
兵士たちは、どうしてもアイエルに一言感謝を伝えたくて、ここに集まっていたのだった。
――そっか、アイエルが…
キョトンとしているアイエルに、ケティアは優しく微笑む。
「…良かったね、よく頑張ったね、アイエル」
アイエルの、娘の働きが、ここにちゃんと実を結んでいた。
「…うん…うん!!うんっ!!」
ケティアの言葉に、アイエルは首を縦に振って、何度も何度も頷く。
頷く度に、その目にはみるみる涙が溜まっていく。
娘は母を抱きしめて、その胸に顔をうずめ、また声を上げて泣き始める。
先程の涙とは逆の嬉し涙は、とてもとても暖かくて、優しく頬を流れると、そっと床へと落ちた。




