戦場を駆ける
「オカン!!そこ!!」
「アイエル!!」
ケティアは、戦場に娘の姿を見つける。
アイエルは治癒士たちに指示を出し、その場を見事に取り仕切っていた 。
多くの負傷兵たちが彼女の元に担ぎ込まれ、集められた治癒士たちもアイエルの指示の元に動いているようだ。
2人の声にアイエルは、ただ現状だけを伝える。
「ケティア!!団長は北の前線へ出た!!矛と盾の親子は早く合流を!!」
アイエルは、ケティアの方を振り向かず、負傷兵に治療を施しながらに叫んだ。
それだけ聞くと、2人はアイエルの横を走り抜ける。
「死ぬなよ」「死なないでね」
すれ違いざまに、兄妹の言葉が重なった。
ケティアとユービスは、勢いを取り戻しつつあった味方の軍勢を突っ切って、全速で走った。
慌ただしく動く兵士たちの中に、金色が光るのを見つける。
ジエスだ。
2人はそれを目掛けて、突き進む。
「団長っ!!肩借ります!!」
「おうっ!!」
合流するやいなや、ケティアはジエスの肩を踏み台にして、魔物の軍勢へ向かって跳びこんだ。
――居たっ!!
「太陽から8時半方向!!恐らく知能種です!!」
その『首』は兵士から奪ったのであろう防具を着込み、その群れの魔物たちとは明らかに違う風貌で悠然と前線に向けて進んでいた。
ケティアの言葉に、ジエスは心の中で舌打ちをする。
――クソがっ!!知能種かっ
ジエスはすかさず団員へと指示を飛ばす。
「後衛が誰か親子の援護に付け!!」
「私が行きます!!」
団長令にそう言って走り出したのは、1番近くに居たエーシエだった。杖を片手にケティアたちを追いかける。
ジエスはエーシエを止めるか一瞬逡巡したが、知能種相手に親子だけでは分が悪い。
「…行けっ!!」
ジエスはエーシエに許可を出すと、さらに軍勢へと指揮を続けた。
「親子の作った道を守る!!全軍、俺に続け!!」
そう言うと、ジエスもハルバードで敵を薙ぎ払い、ケティアたちの背中を追った。
ユービスはケティアを放り投げ、ケティアは道を切り開いていく。
矛と盾の親子は、先程と同様の連携を用い、猛然と魔物たちの群れの中を『首』へと突き進む。
「ユービス!!次ラスト!!」
「あいよぉ!!」
その最後の跳躍で、ケティアは『首』の前に躍り出た。
しかし、ケティアを待ち構えていたかの様に『首』の周りにいくつもの魔術陣が浮かび出る。
この『首』はケティアの見立て通り、知能種だった。
瞬間、魔術陣は怪しく光ると、一斉にケティアに向けて光の束を浴びせ付ける。
ケティアは、襲いかかる光の束の全てを左手のバックラーで弾き飛ばす。弾かれた光は飛び散り、地面に当たると土埃が周囲に舞った。
間髪を入れずに連発される魔術による光の束たち、ケティアはその攻撃を、並外れた動体視力と俊敏なスピードで、バックラーでさばき弾き飛ばすのだが…
――…これじゃ、アイツに近づけないっ
ユービスは邪魔になる周囲の魔物たちをケティアを守るように薙ぎ払いながら、『首』とケティアの様子を窺っている。
ライトアーマーであるケティアが作る隙を狙って待っているのだが、ケティアは魔術に釘付けにされていて、その場から動けない。
そのうち、今度はこちらが疲弊し、群れの物量に押しつぶされる。
――どうする、飛び込むか?
一瞬そう考えかけた時、ユービスの背中から、いつも聞いている聞きなれた声が響く。
「ファイアランスっ!!!!」
エーシエの手のひらから放たれた炎の槍。
それは、ケティアを襲う光の束をかいくぐり『首』を穿つ。
炎の槍は爆散し、爆炎ともに轟音を響かせる。
その爆炎に、光の束に一瞬だけ隙が生まれたのを、ケティアは逃さない。
その刹那、ケティアは爆炎の下にその身を滑り込ませる。
『首』は近づくケティアを狙い、その腕を振り下ろすのだが、ライトアーマーはその一撃を大きく弾き退けた。
「ユービスっ!!」
その一瞬、槍の一閃が爆炎を音もなく切り裂く。
その一閃は、一撃で首までをも討ち落とした。
「やった…」
エーシエは、倒れ込む『首』の姿に安堵の表情浮かべ、構えを解いた。だが…
「エーシエっ!!」
その気配に気づき、駆け寄るユービスだったが、その槍は届かず、次の瞬間、エーシエの身体には魔物の爪と牙がくい込んだ。




