巣喰い
短いです。
喪失感で胸に穴が空いた男の話。
妻を亡くし悲しみに暮れる男の胸に、ポッカリと大きな穴が空いた。
暫く経つとその穴に小鳥たちがやって来て巣を作り始めた。
小鳥は育ち、親鳥として沢山の小鳥を産んだ。
男は胸の中の鳥たちを愛でた。
喪失感で蝕まれていた心が少しずつ満たされるようになってきた。
すると男の胸の穴は段々小さくなっていき、ある日とうとう塞がってしまった。
塞がった男の胸には、血に塗れた鳥の羽根が何枚もへばりついていた。
男は嘆き悲しんだ。
食欲も失せ、生きる気力を無くした男の胸には以前よりも大きな穴が空いた。
其処に美しい花が咲き始めた。
男は喜びその花を育てようと思った。
だが小鳥のように満たされる事で再び胸の穴が閉じてしまう事を恐れた男は、胸に咲いた花を全て毟り取ってしまった。
何度も咲く美しい花を男は泣きながら毟り取り、その度に男の胸の穴はどんどん大きくなった。
自分の身体が徐々に無くなることを目の当たりにしても花を毟り続けた男は遂に、広がり続けた穴に身体を全て呑み込まれてしまった。
身体を失った穴は音もなく地面に落ちた。
穴からは美しい花々が次々と咲き乱れ、その穴が塞がることは二度となかった。
〈終〉




