改造プラン
格納庫は、意外と狭く船一機が収まる大きさだ。数機置いてあるトネリコと比べて小さい。ただ外壁には二本指の巨大アームやアタッチメント用の機械があり、ここで一機ずつ整備していくのだろう。
通り過ぎて格納庫のドアが開くと、ホテルみたいなラウンジがあり、正面のカウンターのほかカフェや巨大モニターや掃除ロボットがカーペットの上を動いていた。
ガタイのいい白髪混じりの男性が近づき、ミュートさんに手を伸ばした。私たちと同じようなツナギだが、新品同様だ。
「ようこそ! まさか船の改造でトネリコから来たのは初めてだからなぁ! 改めまして私が工場長のバーレンだ」
「…………」
予想通りミュートさんは答えない。
まずい、工場長の顔が凍り付いている!
すぐさま代わりにお辞儀をする。
「よろしくお願いします! 三日で工期が終わると聞いてここにしました!」
バーレンさんは明るさを取り戻したようにニコニコする。
「なぁに、外部パーツの取り付けがメインだからね。大半はうちのAIがやってくれる。私の作業着が綺麗なのは調整がメインだからだよ。スーツだと親近感がないからね」
すごい! なんだかいっぱい喋ってくれる!!
おもえばしばらく間、会話という会話をしていなかった。
同棲していても喋らないことが普通なのだと無意識感じていた。
けど、実際は違うんだ。改めてミュートさんはおかしいやつなんだ!
「見積もりを拝見しました。内容は外付けモーターと掘削用のドリル。それと潜水用の変形機構で間違いありませんね?」
「はい」
衛星ピアートは海中まで二〇キロメートルの分厚い氷で覆われている。レーザー兵器で氷を溶かして進むには水を蒸発させるエネルギーも食うため、自重落下の勢いで氷を削ったほうが早い。だから、船のデザインが損なわれて嫌だったけど、仕方なく頭部にドリルをつける。
仕方なく! ほんとに仕方なく
ミュートさんはカッコイイとかぼやいてたけど! バカタレが!
「潜水用にチタン装甲を使うっていうのは驚いたねぇ。お二人はどこへ行く気なんですかい?」
「ピアートです。海へ潜ってあるものを探しにいこうと」
工場長はほほぅと顎に手を置いて目を細めた。
「お宝でもあるんですかな?」気さくに笑い、「あそこにはかつて移民を試みたものがいたがね、バカな話さ。あんな氷の世界で何ができるわけじゃない。だが、水の底には、移民時に使われたコロニーの破片や宇宙船があるって話だ」
ドキッとした、私が想定した生き物は、機械たちじゃないだろうか。
「それ、動いていませんよね?」
「当たり前さ。鉄でも溶けるあの水質じゃ、残骸はとうに酸化してる。あそこで生きられるのは、どっかのおとぎ話にでる闇の眷属みたいな化け物しかいないだろうね。もしかしたら氷の間に隠れて、秘密基地でも作ってるのかもな」
何かの創作物だろう。女性向けの漫画ばかり見ている私にはよくわからなかった。
「個人用のビームブレードでもつけておくかい? サービスしておくよ」
工場長が冗談まじりに剣を構える姿勢で、身体をふってブゥゥン、ブゥゥゥンと擬音を唱えた。
たははと苦笑いする私の後ろで、ミュートさんが嘆息する。
「チャンバラをするつもりはない。金額は見積もりと同額で間違いないか?」
「ええ! 早速とりかかりましょう。奥のエレベーターにいけば通商エリアに行きます。旅人用の宿泊施設もそちらなので、ガイドに従ってください」
工場長は会釈をした後、格納庫の中へ入っていく。扉の奥では待機していたスパイダーAIが動きはじめ、そこで扉が閉まった。
とりあえず三日間、私たちはこの星で過ごすことになる。
トネリコでは一日が一年で該当するのに、たったそれだけの時間が長いように思えた。




