プロローグ
世界に散らばった無数の光が、一心に私を見つめていた。
銀河の星図を書き換える作業だ。何百光年と離れている星々が、興味と興奮と不安をそれぞれ抱きながら、核融合する心臓部から鼓動を放っているのだろう。
宇宙は広いっていうけど、やることは大して変わらない。
『歴史を塗り替える準備はいいか、神様』
普段無口な彼の声がスピーカーに入ってくる。
渋くて低い声質だけど、奥底で地熱のような温かみを感じる。
神様なんて大仰な。彼なりのジョークかぁ?
まぁ、その名を語っている私も大概だけどさ。
薄緋色の球体に、鉄と砂を象徴するような白い衛星がモニターにすっと見えた。
あれがあの星の『月』か。
満ち欠けしている景色を想像するだけで心臓が熱くなる。
生きてるって感じがする!
深呼吸して、鼓動を確かめる。手を重ねて願うのはいつものこと。
1、私が宇宙の一部で
2、すべての星々に感謝して
3、新しい生命を宿していく
祈祷終了! それじゃあ始めよう。
まずは『海』をつくることから。『光』はそのあとだ。
宇宙船に乗る私はマイクを通じて彼に話しかける。
「仕事が終わったら二人きりでデートしたいんだけど、ワガママかな?」
……………………。
わかっていたけど返事がない。どうしよう、自信がない。やっぱりダメかぁ。
両手を重ねてぎゅっと瞼を閉じる。
お願い、夢を叶えて神様!
船の後ろにある未来の流れ星に精いっぱいの祈りを込めた。
―了—




