三つ巴
「おはよう」
定刻になってリビングにいくと、簡易ベッドを畳んだケインさんを見つけた。私も挨拶をして食事の準備を始める。
ケインさんはテーブルを中央に戻すと、正座して栄養バーの封を開けた。
「――ふぅ、やっと監禁生活から解放されるのか」
「さすがに三人だと狭いですね」
「君たち二人は個室があるからいいけどね。それより、ほぼ毎日海を見ているほうがつらかったな」
「そうなんですか。もったいない」
私からしたら天国だった。 グロテスクな深海魚やクジラ以上に大きな生物。中層まで戻れば魚群なども目にすることができた。惜しむらくは、それらを捕まえて調理できなことだが。
「ところでセレモニー用のスピーチは完成しましたか?」
「任せてください。きっとピアートで争いは起こしませんよ」
海中観測の傍ら、ツクモ条例で何を施行するかずっと考えた。この星の人間じゃない私だから、星と人々の未来を照らすものを作りたかった。
廊下のドアが開いて、ボサボサ頭のミュートさんが欠伸をしながら入ってきた。
目をぱちぱちしながら私を見るなり、
「……きょうはポニテじゃないんだな」
「な!」
一瞬、顔が沸騰したように熱くなった。最近、ずっとポニーテールにしてるの気にしてたのか。
「その、式典に出る予定なので、さすがに下ろそうかなと……」
後ろ髪を触りながらもじもじする。
「似合っているし、いいんじゃないか」
「あ、はい……」
私が照れたように顔を隠すと、ケインさんが水の入ったカップのストローをずずずと激しく鳴らした。面倒くさそうに眼を伏せている。
「ミュート、きょうは警備が厳重だから頼んだよ」
「あぁ、二人も気をつけろ」
ミュートさんは、また眠たそうにシャワー室へ向かった。顔を洗うみたいだった。
何度目かの深呼吸をして平静に努める。
現在の午前8時、ピアート星の時間にして10時。
創立100年セレモニーが実施される。会場は大統領官邸前で、大きな中庭に、厳選された国民が参加する。話によれば宇宙軍の基地にいたゴルグ総督もくるらしい。ぜひとも会って話したいものだ。
モニターからトライズの外部映像が映る。
黒に近い群青色の海は光に当たるように薄まり、いくつもの魚が逃げるようにトライズから離れる。真っ白な光が見えた矢先、先端のドリルが大気に触れ、その勢いのまま、スクリューからジェットに切り替わった。
ステータス画面には、自機以外を選別する赤い点が表示される。マップを見る限り、私たちを阻む敵がうじゃうじゃいるな。
彼らの存在を認識した瞬間、モニターに警告表示が映った。
私たちがとらえたということは、向こうも私たちを認識したみたいだ。
トライズが海に潜伏した記録は分散されたらしく、ずっと張り込みをしたのかもしれない。
海から空にでたトライズは真上に加速して速度を上げる。その途端、円形のマップが赤い点に次々と埋めつくされた。これは母艦から戦闘機が発進したのだろうか。
トライズはそれらを無視して大統領官邸の方角へ突き進む。
背部モニターから4機の戦闘機に補足され、ロックオンアラームが表示される。
『発射』
自動認識システムが、敵機の誘導兵器の発進を捉えた。
距離が近づくにつれて警告音が近づいていく。接近する音が激しくなった際、「フレア発射」の音声が流れ、接近する音が消えた。
モニターに港が見えてきた。
だが、後続の戦闘機は編隊を汲みながらトライズを追いかける。
そのとき、マップにさらなる点が表示された。新たなシグナルは地表からではなく宇宙からだった。
『こちら宇宙軍、トライズの総舵手と思われる人物を確保する。空軍は退避してほしい』
『こちらはピアス国防衛本部。援軍はいらない。われらだけで対処する』
『大事な記念日を台無しにするわけにはいかない。各機トライズを対処せよ』
『――どういうことだ! ピアス空軍、トライズとともに宇宙軍を無力化しろ』
あーあー、無茶苦茶になってきたよ。
モニター画面を見つめていた私は愕然とした。隣にいたケインさんは冷たい視線で同じものを見ている。
遠方画面では空の各所でドッグファイトが始まりだした。ともに重火器でなく電磁パルスなど電子機器に弊害生む兵器を使っているみたいだ。
ツクモ条例を使って成し遂げたいものがあるらしい。
啞然としていると、二機の敵機がトライズの背後につき、誘導兵器を発射した。フレアも煙幕もないトライズは電子ジャックされ、オート操縦モードに移行する。
それと同時に、端末画面に映ったモニター情報がブラックアウトした。
ここからあと3~4話くらいで完結になります。
一気見する場合は、日を置いたほうがいいかもしれません。
毎日投稿します。忘れてなければ……。




