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WANTED GIRL ~惑星をなおす少女~  作者: 野乃々
3部 3章 救世主
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監禁生活

 両手を縛られたまま一夜を開けた。

 ぞんざいな扱いをされるとおもったが、彼らは相応の敬意をもっているらしい。

 マスクを外された場所は、場末のアパートの一室みたいで、くたびれたベッドが置いてあるだけだった。部屋の壁や天井は色褪せて、ところどころに壁紙がはがれている。

 最近はラグジュアリーな部屋ばかり泊まって感覚がおかしくなったが、これが私にとって普通なのだろう。古びた道具に染まっているほうがお似合いだ。

 

 緊張と疲労で疲れた私はそのままベッドで寝た。夢の中でドアが開く音と、わずかな会話が聞こえた。バトルスーツの人たちは交代で私を監視しているみたいだった。

 目が覚めてトイレのドアまで護衛が来ると、改めて自分の置かれた状況に気づく。


 どうやら私はこの惑星の最高権力者になっていたらしい。

 まったく、ナグくんもミレイヤさんもなんて法律をつくってくれたのだ。こんな条例がなければ、今頃は優雅に観光を続けていたのに。

 ――ただ、この条例をつくった意図は何かしらあったとおもう。

 ミレイヤさんは私との約束を守れず、ピアートで生涯を終えた。トネリコへ戻るすら惜しむほど、復興に追われていたのだろう。

 トイレから部屋に戻ると、私はベッドに腰かけた。


 さて、どうしたものか。

 ホテルを襲ってきたのが本当に宇宙政府なら、私の法令を使って宇宙に有利な条件を提供するはずだ。いくつかの土地、あるいは観光事業や開発事業で稼いだ資金――そうした利権を使い、ピアートから搾取しようとするだろう。

 ドアの前では女性の護衛が椅子に座って監視している。

 年齢は20代くらいだろうか。渋い顔つきの彼女にはいった。

「ねぇ、あなたたちは私にどんな命令をしてもらいたいの?」

 彼女は敵意に似た視線を向けるだけで、何も言わない。


「だんまりはよくないよ。たしかにさらわれたことはいい気がしないけど、私ってバカで単細胞だから、あなたたちに同情して味方につくかもしれない」

 護衛の女性は小さく嘆息した。

「私たちは生粋のピアート人だ。この惑星は我々のものだったし、その歴史文明を築くのも我々であるはずなんだ。だけど、宇宙のやつらは科学力が高いのをいいことに衛星オーリスを人質にして、私たちの国を好き勝手やっている。景観のいい場所をリゾート地に変え、惑星外の人間を勝手に呼び、豊かな暮らしを与えた」

「それで国が豊かになるなら問題ないんじゃ――」

「そうじゃないから事をおこしているんだ。現地民の我々は、光の少ない寒い地へ追い込まれ、貧しく暮らしている。これの何が友好だ。あなたは宇宙政府を喜ばせるためにこの星を蘇らせたのか」

「……そんなこといわれても」


 私は政治屋じゃない。何千万人のこの星にいたとしても、その幸せを一身に背負うなどできはしない。

 そもそも、私が彼女たちに与えたのは、生命が生きていけるだけの環境だけだ。そこに住む人々がどう生きたいかなんて気にしなかった。富とか貧困とか権力とか、現地民が解決していく問題のはずだ。


「おい、何を騒いでいる」

 ドアを開けてやってきたのは、私たちを連れ出したジェミさんだ。

 最初はスーツで年齢もよくわからなかったが、くたびれたシャツにジーンズ姿から私より一回り年齢がいっているのがわかる。

「私を捕らえた理由を聞いていたんです」

「協力する気になったの?」

 ジェミさんは私を蔑んだような目でいう。

「……残念ながら難しいとおもいます」

「だったら力づくで従ってもらう。こっちにこい」

 向こうは銃をチラつかせて私を立たせた。ここで反抗してもどうせ暴力を振るわれるのだろう。面倒だし素直に従う。

 軋む廊下を歩いて隣の部屋にいくと、椅子にくくりつけられたミュートさんがいた。ご丁寧に、背もたれに腕をくくりつけ、椅子の脚には足首で縛られている。口元にはタオルで喋らないようにしていた。男性だから厳重にしているのだろうか。

 ミュートさんの目は獣みたいに鋭く、隙さえあれば喉元を描き切るような冷たい殺意がある。

 そういえばこの人は軍の出身だったな。


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