表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
WANTED GIRL ~惑星をなおす少女~  作者: 野乃々
3部 2章 バカンス
61/72

観光ツアー

 次の日からあちこちを見て回った。

 農地にいって宇宙小麦を刈り取ったり、野菜を収穫したり、ミルクのでる家畜に触れあったり、鶏の卵をとって親鳥から追いかけまわされたり、そうしたふれあいの後、収穫した作物を食べた。

 風が揺れ、潮にあたり、土に汚れて、水で注ぐ。

 星と一つになっているような気がした。

 2日目の夕方には人口太陽の光が差さない、ピアートの反対側へいった。

 東極と呼ばれる氷の世界では、鳥類が進化した人鳥や、氷の上を滑る哺乳類も生息していた。

 なかでも驚いたのが夜に浮かんだ光のカーテンだった。人口太陽による光の拡散が、宇宙の冷たさと織り混ぜて、奇跡のように現象を生み出した。

 ミレイヤさんたちが一生懸けて描いたのだ。

 私はこの光景を生涯忘れないだろう。


 3日目は都市部の観光――になるはずだった。

 旅の疲れでホテルでぐっすり眠っていると、それは起きた。

 大きな爆発音と建物が激しく揺れる振動で目が覚めた。


 何事だろうか!

 身体は疲れていたけど、すぐに目が覚めた。感動で頭が休まっていなかったのかもしれない。寝間着のまま廊下のドアを開けると、高音のベルがジリリリリと鳴った。

 顔をだして左右に首を振ると、私服姿のミュートさんが走ってきた。

「起きたのか」

「はい……。何の騒ぎでしょう」

「すぐに逃げるぞ」

「ちょ、私、着替えさせてください!」

 顔だけ出しているが、身体はバスローブ一枚だ。さすがに恥ずかしすぎる。

 ミュートさんはげんなりした顔で、

「1分だけ待ってやる。早くしろ」

「ちょ、短いですって!」

 そういいながらダッシュで部屋に戻る。

 彼の口調や険しい表情、なにより、異常が起きてからの迷いのない行動――液体コアを目指していた時の彼だ。


 すぐさま自前のシャツと短パンに着替えて廊下にでる。

 ミュートさんは私の手首を掴むと、エレベーターではなく非常階段へ走り出した。

「あの! 何が起きているんですか?」

「さあな。だが、お前が狙われている可能性がある」

「どういう意味ですか? また隠し事があるんじゃないですよね!」

 階段を駆け下りながら問い詰める。だけど、先行しているミュートさんは何も言わない。

 あぁもう! まただんまりモードか! あとで問い詰めてやる。

 仕方なく階下をおりていくと、白い煙が下からあがってきた。


 まずい。

 すぐさま口元を手で覆う。だけど、目や鼻先を刺激する、燃えるようなものじゃない。あくまで視認性を悪くするスモークの一種だった。

 踊り場で立ち往生していると、タオルで口を覆ったミュートさんがあがってきた。

「しゃがんでいろ」

 そういった彼の手には黒い拳銃をもっている。

 いったいどこで手に入れたんだ。危険な目に合うとわかっていなければ用意しないはずだ。

 怪しんでいると、下から誰かが駆け足で登ってきた。

 どうしよう!

 上に逃げても袋の鼠だ。ここは隠れてやり過ごすか。


 悩んでいた刹那、ミュートさんが身体をだして最上段から落ちるように跳躍する。スモークでよくわからないが、一瞬、ミュートさんが黒い人影を下敷きにしていた。

「動くな」

 踊り場の陰から這いずるように近づく。そこには、黒の戦闘用スーツに分厚いヘルメットをつけた人物が、ミュートさんに馬乗りにされていた。

 ヘルメットの眼前に銃口を向けられ、スーツの人物は降参とばかりに両手をあげていた。

「あなた、ミュートと、ツクモちゃんね」

 くぐもった声でヘルメットの人物はいう。


「いま、このホテルは宇宙軍に襲われている。だから私たちは助けに来たの」

 その人物は伸ばした腕を曲げてヘルメットに手をかけた。頭部がむき出しになると、顔立ちのいい女性が汗をかいて微笑んでいる。

「何者だ」

「大統領の仲間よ。このホテルは宇宙軍に知られた。私たちについてきて、安全な場所に移動するから」

 いまだに信じられないのか、ミュートさんは銃口を向けたままだ。

 逡巡している最中、下から連続した銃声音が響いてくる。


 やっぱり誰かが襲ってきているんだ。

 決断できずにいると、さらに数名のバトルスーツの人たちがやってきて、三名が私たちを囲んだ。

 ミュートさんは静かに銃を降ろして腰のホルスターにしまう。

 最初の女性はゆっくりと立ち上がると、ぶあつい黒革の手を伸ばしてきた。

「初めまして、私はジェミ。あなたを助けにきたのよ、救世主ちゃん」

「え……あ……」

 流されるまま、私は握手を交わした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ