新発見
外部モニターに映るのは濁ったような黒、光のない黒だ。船の計器はひたすら深度を増していくだけで変化はない。
ミュートさんは装甲越しの世界に集中しているのか、モニターを注視している。
スクリューが回る音の中、かすかに水をかいたような音が響いた。
なんだ? 泳ぐ音?
デバイスを動かし、外を照らすライトを動かす――が、周囲は漆黒だけ。
気のせい? それとも思い込み??
もう一度聴力を頼りにじっと見つめる。
モニターの深度は徐々に深くなり、重圧も強くなる。
「!」
おもわず背筋がぴんと伸びた。
ソナーに反応はないが、たしかに音がした。スクリューとは異なる水中を滑るような音。気のせいかもしれない。でもなぜか、その音に呼ばれている気がした。
「ミュートさん。右90度くらい旋回して、そのまま深く潜ってください」
「何か見つけたか?」
「わからないです。でも、近くに何かいるみたいなんです。あとを追ってみます」
「好きにしろ。俺は一介の運転手だからな」
そんなに気取ったセリフを言っても響かないぞ。内心は興奮しているんでしょ。
照明を動かしながら音の方を探る。だけど水の影響で光が屈折し正体がつかめない。
不意に底から巨大な珊瑚のような影が現れる。
地底の山のように見えたが、それにしては細い。影は縦に長く、細かい線が左右にいくつも伸びている。なんだろう、これは。
「ツクモ、周囲を見回るぞ」
「お願いします」
ミュートさんも気になったのか、細長い影に触れないよう微速で周囲を遊泳する。
龍の巣なのだろうか。いや、それにしては不自然すぎる。
「おい見てみろ……半壊したドーム跡がある」
ミュートさんがモニターを拡大すると、影がいなくなった場所の先に、半円状の傘みたいなものが映った。
「え? え? これは――」
「あれは天井防壁の一種だ。だとすれば、この星の地底には文明があったと推測できる」
「嘘……」
驚きより戸惑いを先におぼえた。私はこの星で生物を探しにきたはずなんだが。
「もしかしたら設備が生きているかもしれない。水中都市ならどこかに出入口があるはずだ。このまま探すぞ」
「わかりました」
生命の存在は怪しくなったが、人工物はたしかに気になる。何かヒントがあるかもしれないし。
「あれ!」
細長い影から少し離れた場所に丸くくりぬかれた大穴があった。自然にできたというより、誰かが手をくわえた可能性が高い。ミュートさんは船を動かしてその穴の奥へ進む。何もない地の底まで来ると、今度は巨大なドリルを回し始めた。
「どうするんですか!」
「もし都市とつながっていれば、どこかで空洞になっているはずだ。地中から上に進めば内部に入れるかもしれない」
「わかりました」
ブラックホール圏を調査した人だ。ミュートさんに託そう。




