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WANTED GIRL ~惑星をなおす少女~  作者: 野乃々
2章 宇宙暮らし
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【追記】下手な妄想はやめよう

前回の補足の続きです。説明的な内容は少ないです。

 チケットを購入した後、誘導に従って船を移動するとバリア装置の圏内に入った。

 するとモニターの中央に警告が表示され、政府の自動操縦の許可選択が現れた。

 ミュートさんはタッチしてアクセス権限を渡すと、船は勝手に移動を開始した。

 これは転移中に事故がないようにするシステムだ。マニュアル操作で船同士が衝突するとなれば大事になる。だから、ワープをする船はすべて政府に権限を委ねる必要があった。

 トライズは他の宇宙船や貨物船と一緒に装置の前で停止する。

 あと15分後に転移が始まるのか。


 初めてのワープに少し緊張した。とはいえ、シミュレーションは培養液の中でやったことがある。

 任期が終わればフェアリーズは卒業できる。その際に、このワープ装置を使うことは高いため、疑似体験を済ませているのだ。


 それより問題なのは、ワープ後に政府の船に包囲されていないかである。

 ダメ元でミュートさんに相談したところ、意外にも(失礼)返事がきた。


「あいつらはフェアリーズが脱走したところで何も思わないだろう。所詮は人工生命だ」

「やっぱり政府は私たちを道具にしか見てないんですね」

「ずっと昔からだ。アンドロイドも、軍人も。生身でも機械でも、名称が変わったにすぎない」

 虚しさで胸がきゅうと締め付けられた。

 うぅ、初めてのワープが台無しだ。もっと興奮していたいのに。

「俺たちは旅行しているだけだ。何も迷惑をかけていない」

 そうだった! 心配してるのはそっちだ。

「ありがとうございます! ミュートさん」

 褒められ慣れてないのか、ミュートさんがそっぽ向いた。


 話が終わり時間を潰していると政府から自動音声が流れた。

「これよりワープ装置が起動します。各員、視界に注意して、ワープ酔いに気を付けてください。繰り返します――」

 アナウンスとともにワープ装置の上下から赤い線が伸び始める。まるで指輪に浮かぶ美しい模様のようだ。線は合流すると縁からゆっくりと白い光が浮かび始めた。


「目を閉じていたほうがいいぞ」


 珍しくミュートさんがいった。

 我慢して見つめていたが、リングの内側全体に眩い閃光が放たれ、耐えきれず瞼を閉じる。視界が奪われる中、トライズがゆっくりと前進しているのがわかった。

 数分後、全身に熱風のようなものを感じた、瞬間、意識が、途絶えた。思考すらも停止した。


 世界で私という存在が消えた気がした。


 ――目が覚めると船内にピアノを主旋律とする軽やかなBGMと、政府からの自動アナウンスが流れた。

「転移は成功しました。目的地を設定してください。繰り返します」

 瞼を開けると光の残像が視界に漂っている。

 何度もパチパチして視界を戻していると、隣の席にいたミュートさんが首を降ろしてぐったりしていた。

「大丈夫ですか!?」

「気にするな、ワームホール酔いだ」

 いや、ダメでしょ。船長なんだから。

 私は席を立って自室から水の入ったストロー付きのボトルをもってくる。

「はいどうぞ」

 私はミュートさんの手元に渡すと、彼は受け取ってボトルを顔に近づけた。

 無防備に口を開けてストローをくわえる。

 艶やかな唇に、ドキッとした。

 喉ぼとけが2.3動く。細い首筋に少し見惚れた。


 ボトルを口から放し、顔を上げたミュートさんは澄んだ瞳を向けてきた。

「お前は、問題ないらしいな」

「あ、あ、はい……。シミュレーションはしていたので。でも、フェアリーズってワームホール酔いの耐性なかったでしたっけ?」

「…………初期ロットは設定されてない」

 そういうものなのか。首を傾げていると、

「気に障ったか?」

「え、なんでですか?」

「いや、気にするな」

 ミュートさんは飲料ボトルを返すと、操縦桿の奥にあるモニターに触れる。

 相変わらずぶっきらぼうに答えるな、この人。

 

「それよりミュートさん。今度はピアートへいくにはワープ装置のところへいきますよ。大丈夫ですか?」

「わかっている。覚悟してきた」

 私は小さく嘆息した。

 全身から嫌そうなオーラがでているのに、なんでついてきたのか。


「ミュートさんってトネリコからよく外出しているんですか? 解析班担当の私は探査班のことはよくわからないですけど、トネリコを出る先輩や、ときどき旅行などで不在になる先輩は少なからず伝わってきます」

「さぁな……」

 相変わらず適当にぼかす。まぁ、いまさらだけど。

「少し横になる」

 ミュートさんはそういうとシートベルト外して立ち上がった。脇の通路に身体を横にした途端、バランスを崩して私に寄り掛かった。

「ファッ!」

 可愛くもない声を発したとおもう。

 彼の柔らかい髪が私の首筋に触れ、鎖骨に頬が当たっている。

「あ、あのー……」

 目を閉じて寝息を立てている彼に、身体が硬直してしまう。

 どどどどうしよう!

 なにこの超展開。え、ベッドまで送るの? 重くて無理だよ。かといって身体を揺らして起こすのも変だし。

「ま、まぁいいのかな……」

 私と違って疲れているのだろう。ワープの影響で疲労が一気にきたのだろうか。


 数分の間、手摺りに腰かける。ミュートさんの伸びてきた髪を見つめながら、もう少しヘアスタイルを変えてみるかと妄想した。

 黙っているとカッコいいとおもっているのだろうか。

「変な人……」

 呟くと、政府の自動操縦が働いて船が旋回を始めた。

 ミュートさんはくぐもった声で目を覚まし、「すまん」といって操舵室を抜けた。

 はぁーやばかった。

 ワープより緊張した心臓を抑えるように何度も深呼吸した。


 次のワープでも倒れてきたらどうしよう。

 少しだけ期待したが、すぐに首を振った。下手な妄想はやめよう。

 いまは旅の無事を祈るほうが先決だ。

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