思春期
「あなた達2年3組の担任になります。狭山瑠華です。」
喧騒に満ちた9m四方の箱の中。
無知で衝動的な人間の幼生の群れ。
彼らの底から溢れる根拠のない焦燥と、途切れない活力。
教師という権威に意味もなく唾を吐きたがる、荒々しく幼稚な衝動。
成長途中の少女たちは私をライバルと見ている。
無遠慮な好奇心の視線が、私を測ろうと絡んでくる。
このすべてが、彼らが怪物になるか神様になるかという混沌の渦を巻いている。
「はいっ、先生は独身ですか?」
箱のなかに溢れる嘲笑。
この少年は、この箱のリーダーになろうとしているのだろう。
「私は独身です。交際している男性はいます。田谷くんは、なぜこのような質問を?」
「あ!? えっ!? 独身なのかな? と思って」
「それは理由とは言えませんね」
ははははははは。
箱の中が嘲笑で満たされる。
嘲笑の対象は彼だ。
虚栄。尊敬。羨望。敵意。嫉妬。定まらぬ視線が交錯する。
嘲笑で、箱の中の温度が上がる。
空気がかき混ぜられ、少年の匂い、少女の匂い、成長の異なる身体の匂い——安っぽい柔軟剤の匂い。チョークの匂い。私の匂い。
換気の充分でない箱の中は、息苦しいほどだ。
矜持をまだ持たぬ幼い魂は、簡単にその色を変える。
ころころと色を変える魂を見続けていると、気分が悪くなる。
やがて交じりあって灰色になれば、落ち着くだろう。私のように。
私は思春期が気持ち悪いのだ。




