彼女は桜魏凛③
「ところで最初に会う前から私のこと知ってましたよね。なんで知っていたんですか?」
私は団子を平らげたリンさんに尋ねる。リンさんはお茶を一口飲んでから私に一度視線を向けた。
「そうね、多くを語れはしないけれど、それでも無知よりは幾分かマシかしらね。」
懐かしい思い出を語るように、リンさんの言葉にはきっと哀れみと優しさが混じっていた。
「・・・・・昔、3、4年ぐらい前かしら。世界がどれだけ広いのか知りたくて旅をしたことがあったの。
そこで行く先々で強そうな人達に喧嘩吹っ掛けまわっていたわ。たしかこういうのを道場破りというのかしらね。あまり手ごたえがある人がいなかったから帰ろうとしてたとき、ある人と出会ったの。勝負して勝ったほうが相手の言うことをなんでも一つ聞く。こんな賭けまでされたものですからつい全力でやりあってしまったわ。けど、」
「けど、どうなったんですか?」
「結果は敗北。私の戦歴に二つ目の黒星を入れられたわ。実力を見抜けなかった私が悪いけれど。それでお願いされたのが貴女なの。」
「え、わたし?」
「そう貴女。あの人のお願いは2つ。ひとつは『3年後、黒髪長髪の見ない服装で腰に刀を携えた女の子がくるからお世話してほしい』ということと『自分の正体を黙っててほしい』のふたつよ。ひとつだけじゃなかったのかと聞いたら勝者の特権ということで。って、思わず笑ってしまったわ。」
リンさんは仲の良い旧友の話をするように少しテンションが上がっていた。
その時のことを思い出しているのか自然の笑みがこぼれていた。
「その人はどんな人なんですか」
「ごめんなさい、さっきも言った通りあの人の正体については話せないわ。けど、そうね。貴女は必ずその人と会えるわ。これは嘘でも希望的観測でもないわ。あなたが為すべきことを為せば必ず会えるのよ」
彼女は自信たっぷりに満面の笑みでそういった。




