鉄壁と拳と天使と祈り
ミライが道場で稽古をつけてもらっている時、街の外には異様な光景が広がっていた。
列を揃え、強者の圧をものともしない軍勢がおよそ千人。2人の男を警戒していた。
「そろそろ来るだろうなとは思ったが、有象無象ならいざ知らず。十騎士どころか、かの鉄壁まで来るとはなぁ。揃いもそろって一人の子供にビビりすぎじゃあねえのか?回れ右しておうち帰んな」
「女王様は彼女を即刻排除すべき危険因子と判断された。どれだけ過剰な戦力だったとしても排除できるのなら問題ない。そこをどかなければお前たちも敵と見なす。」
互いに道を譲らない。引けば大事なものを失うと分かっているから。
そして道をどかないならば、解決する方法などひとつしかない。
「恨むなよ?」
深く、呼吸をひとつ。吐くのと同時に身体中から闘気があふれ出し、十騎士ほどの相手までを戦慄させる。
街の人たちが道場に近づかないのはなぜか、2人に挑まないのはなぜか。
単純な話だ。
かつて暴れまわったその二人を知らぬものはいない。その二人を止められるものは例外を除いて他にいない。今この街に、この二人に勝てるものは誰もいない。
シンプルな話だ。有象無象や十騎士までだったら、さっさと片付けて道場に帰っていただろう。
だが、
「はぁ、仕方ない。」
暴力の権化が放つ闘気をそよ風程度に受け流し、剣を抜き構えるこの男もまた、二人に並ぶ化け物だった。彼がいるから他の国は攻めてこないとまで言われている。
互いににらみ合い、推し量るは間合いとタイミング。
勢いよく地を蹴った瞬間、音もなく真横にこの世の理を超えるものが現れた。
白い髪。白い肌。美しい女性の姿。そして白い羽と頭の上に浮かぶ白い輪っか。
───天使が、舞い降りてきた。
「はじめまして、あなたたちはてきですか?」
知る人ぞ知る白い絶望が、目の前に現れた。




