波紋
それは一種の処刑装置だった。あくまでそれはおまけに過ぎず、本来は別の目的があった。
処刑装置であり、終末装置だった魔女はその日、何者かによって殺された。ありえない出来事だ。魔女が、仮にも感情を合わせ持つ兵器が、たった一人の英雄ですらない誰かにやられるなんてありえないできごとだ。
確かに兵器である以上欠点はある。それはどの存在であろうと決して無くすことはできない。
しかし、その欠点すら克服したから終末装置と呼ばれているのだ。たかだか一個人でどうにかできるようにはしていない。
それがどうだ。全ては前提からひっくり返ってしまった。
ありえないことが起きている。この件だけではない。・・・・・・。
どれも前例がないものばかりだ。
私は側近に指示をだす。
「魔女を殺したものに手配をかけるぞ。すぐに大臣を呼べ!」
獣人の女王はこの異常に頭をフル回転させるのだった。
◇
「いけませんね」
「いけませんか」
年老いた女性と若い女性が白いテーブルを挟んで話していた。
どちらも神々しい見た目をしているが、2人が共通しているのは白銀な髪と碧の瞳だった。
「あの魔女は装置とはいえ優しすぎた。まあだからこそ下の世界に住むことを許したのですが。魔女が死んだからと言って犯人を倒すのは許可しません。ただでさえおかしなことが沢山起こっているというのに・・・」
若い女性がしょんぼりと肩を落とす。その時だった。2人は何かに気づき急に立ち上がる。
最初は僅かな揺れだった。テーブルの紅茶に波紋が浮き出るぐらいの小さな揺れ。
しかし、揺れは急に大きくなっていく。
「な、なんなのこれは!!?」
「わかりません!!怖いです!」
正体不明の揺れが、この世界を丸ごと揺らす。2人は不安と恐怖で限界に近かった。それでも薄氷一枚で理性を留めていたのは、神故のブライドだった。
やがて揺れは収まり遠くの神殿が騒がしくなる。
「ひとつ頼みたいことがあるの。」
何でしょうと若い神が跪く。
「過去にもこの世界が揺れなかったか調べてほしいの。少なくとも1万年前以上の過去にもしかしたらあるかもしれない。私は先輩にこの揺れのことを聞いてくるわ。」
若い神は短く返事をして去って行った。
老婆の神は自分の直感を嫌なぐらいに信じた。
「嫌な直感だけは当たるのよね」




