それは正しい、だから
師匠達を護衛しながらの旅路でおよそ3日が過ぎた。その間一切魔物に遭うことことはなく順風満帆なひと時を過ごしていた。
「普段からこんな感じじゃぞ、魔物に襲われるなんて稀じゃな」
退屈なのかあくびがてら答えられる。女の子は師匠の手を握りしっかりとついてくる。
ちなみにここに来るまでの間一切名前を教えてもらってない。師匠に聞いても「それは本人から聞くべき問題じゃろ?」と返されてしまった。
仕方が無いのでお嬢ちゃんと呼んでるがそれでもあまり反応はしてくれなかった。
そして4日目の昼前、私たちは魔物に襲われているパーティーと出くわした。
「襲われるのなんて滅多にないんじゃ?」
「他の人の遭遇率なんぞ知らんわい。助けるかの?」
もちろん。私は抜刀し、地を蹴り魔物に向かって突進する。眼前には私の良く知るゴブリンとは違う、とても筋肉質なゴブリンがいた。私に気づいて腰の短剣をカウンター気味に仕掛けようとする。以前ならもろに食らっていただろうその一撃も、あの二人がくれた異能のおかげで取るに足らない隙と化す。
まずは一体。身体強化に身を任せ、圧倒的な速さですれ違いざまに首を胴から切り離す。
その勢いのまま続けて2体。つい今しがた拾った首を投げ、頭同士をぶつける。ふらついたところがちょうど2体とも頭の高さが同じになったので斬り飛ばす。のこり2体・・・のうち一体は襲われていたパーティーが立て直して対応してた。ならば後1体、そいつは何もかも捨てて短剣のみで師匠のところへ全力で走り掛けていた。
護衛時に言われた「師匠達は基本戦闘には参加しない」を思い出し、焦りを覚えながら足を限界まで動かす。スキル、窮鼠が自動的に発動する。体が悲鳴を上げるほどの激痛をこらえながら、ゴブリンの短剣をお嬢ちゃんに掠らせないで済んだ。
まぁ、その代わりに私の体で短剣を止めたんだが・・・。ゴブリンは完全に驚いて2,3歩後ろに下がった。そんな隙を見逃さず私はそれに一撃を見舞った。
体から血の気が引いていくのに刺された部分は妙に熱を帯びている。
「なんで助けたの?弱いのに」
お嬢ちゃんが尋ねる。悪意のない、純粋な疑問。多分、何もしなくても師匠が片付けていたはずだ。
でもそれでも体が動いたのはきっと、依頼だからもあるだろうけれど、
「助けなくちゃーって思ったからかな?色々理由はあるだろうけれど」
お嬢ちゃんは少し驚いた顔をした後、
「・・・-エ。」
「え?」
「私の名前。スチーエ。よろしくね、お姉ちゃん」
無邪気な天使はにっこりと微笑んでいた。




