仮説
トイレの場所がわからず彷徨っていたら一人の兵士を見つけた。
「すみません、トイレはどこです?」
「ああ、トイレなら突き当りを右だ。あと、俺らに敬語は不要だ。」
「そうか?サンキュー、助かったよ」
「どういたしまして」
トイレの個室でふと考える。違和感があるのにそれがなにかわからない。いや、一つの可能性は浮かんだが間違っていてほしいとしか思わなかった。
僕は先ほどの兵士のもとに戻った。
『先ほどはありがとうな』
「なに、気にするな」
『ところで一つ質問いいか?』
「なんだ?俺に答えられる範囲でいいなら」
『先程神様が奇跡は何度も起きたと言っていたけど、何のことかわかるか?』
「あー、これはあくまでも噂なんだが、昔からあの召喚は何度もされてきてたんだ。決まった年月でな。
それが今回、予定よりも早くなったらしい。理由は不明だけどな。あとはわからん」
『そうなのか、ありがとうな』
立ち去って自室に戻りながら先ほどの会話を思い出す。英語、韓国語、インドネシア語、アラビア語。
あの兵士は全てに難なく答えていた。僕の知っている日本語で。
自分自身に鑑定をかけても翻訳スキルのようなものはない。
可能性は2つ。ひとつは召喚に呼ばれた人たちは発音している言語がすべてこの世界の言語に無意識のうちに変わっている説。これならまだあの召喚術式作った人すごいねで済むからいい。問題は2つ目。
この世界そのものに翻訳機能がつけられている可能性。これなら翻訳スキルはつける必要がない。
しかしあの神様がコピーしてやっているのは少し信じがたい。あまり考えたくはないが・・・
この世界に翻訳をかけたのが神様の言う”悪”というやつじゃないだろうか