本来は全員②
「皆さん初めまして、私はこの世界の管理人、所謂神様というものです。あまり時間がありませんので手短に説明しましょう。あなた方にはこの世界の悪を倒してほしいのです。お願いします。我々にはもう、あとがないんです。これまで奇跡は何度も起きました。けれどまだ足りないんです。私たちではアレを倒すことは無理なんです。だからどうか、あなたたちに祈らせてください。あなたたちが最後の希望なんです」
神様と自称する美しい女性は、胸の前で両手を合わせ深く頭を下げた。その行動に、周りの騎士はおろか、冠を頭につけた王様でさえ同様していた。しかし何のカラクリかは知らないが王様たちは言葉を発せずにいた。口パクだけだが、おそらく神に対し頭を下げるのをやめてもらうように言っているのかもしれない。
ふと今まで感じていた重圧が消える。
体も自由に動く。何をしても構わない、という意味だろうか。
ならばと思い僕はゆっくりと手をあげる。
「顔を上げてください、神様。僕は六条冬雪と言います。いくつか質問させてほしいのですが」
神様は顔を上げどうぞと許可をだした。
クラスメイトが小声で制止したが無視をした。
「クラスメイト・・・僕の友人が一人見当たらないのですが知りませんか?」
「・・・召喚術式はかなり古くから使われているものですのでそういう異変があってもおかしくはありませんね。おそらく元の世界に取り残されているのでしょう。呼ぶことはできませんがこの世界よりは安全なはずですよ」
六条は嘘を見破りながらも次の質問をした。
「僕たちは無事に元の世界にかえれるんでしょうか?」
「・・・ええ、悪を倒した暁には必ず帰れると保証しましょう。」
悪とやらを倒さなければ帰れないと。
一部の頭の回転が早いクラスメイトはだんだんと顔面蒼白になってきていた。
「悪とは何でしょうか?」
「・・・すみませんが話せません。私たちは呪いで悪の正体を喋れないようにされているんです。」
正体不明の悪と呼ばれるやつを探して見つけて倒さないと帰れない。
事実は小説よりも寄なりとはよく言うが、世界をまたいでの誘拐とは恐れ入った。