本来は全員
気が付けば僕らはここにいた。正確に言えば玉座の間と呼ばれるような場所だろう。床には高級そうな赤い絨毯が敷かれ、柱にはこの国の国旗のようなものがずらりと並べられている。
壁際には金属の鎧、甲冑だったかを身に着けた者たちがこちらを見ており、そして玉座には──
白髭を生やした威厳ある王と、その横の玉座に座る一人の、神秘が形を成したような、僕が持つ言葉では形容できないほどの美しさを持つ女性がいた。
白銀の髪に碧の瞳。それ以外人と何も変わらないのに本能が余計なことをするなと訴えかける。
畏怖と美しさの暴力。それだけで僕らは自然と彼女に対し、頭を低くしていた。
誰も言葉を発しない。発せないのだ。この重圧は首元にナイフを突きつけられているのと同じだ。
喋れば命はないかもしれない。
だがそんなことはどうでもいい。
この状況は以前オタクの友達に読ませてもらった所謂異世界転移、というものに似ている気がする。
そのジャンルでいくのなら魔王なりなんなり倒せば元の世界に戻れるはずなのだが、情報が少なすぎる。
そしてもう一つ、古家みらいはどこへ消えた?
クラスメイトは僕も含めて全員教室にいた。なんてことはない日常のはずだった。突如魔法陣が現れてまぶしくなったかと思えばこの状況だ。
まずは生き残ることを優先。次に元の世界への帰還方法の探索。
まとめると、
1,生存優先 2,帰還方法の探索 3,消えた古家の捜索 4,元の世界に帰る
順位付けは大事だ。でないといざというとき判断を間違えてしまう。
「聞きなさい」
透き通るような声が聞こえた。
あの女性が淡々と言葉を紡ぐ。僕らはそれを、無理矢理聞かされているような感覚があった。