指名依頼
「依頼?私にですか?」
ギルド会館を出る直前、スタッフから呼び止められた。
「はい、名指しの護衛依頼となっています。老人と連れ添いのお嬢様の護衛ですね。受けられますか?」
「指名依頼なら受けた方がいいわ、その分報酬も美味しいし」
リンさんが受けた方がいいというなら受けようか。
私はスタッフに依頼を受理してもらった。依頼者を呼んでくるとのことでしばらく待つように言われた。
「それにしても依頼者が老人だなんて珍しいこともあったものね」
ちなみに子国さんは部下に引っ張られて仕事に連れ戻された。
誘拐現場をみてるような気分だった。
「以前言ったけれど大抵の老人は生き残りだから、こと戦闘に関しては風紀委員会よりも上だわ。なのになんで護衛がいるのかしらね、まだ登録して間もない冒険者に」
二人で考えていると入り口の扉からヒョコっと顔を出した幼い銀髪の少女がいた。
少女は私を観察するようにじっと見た後、
「おに、見つけた」
と、振り返ってそういった。
おに、とはリンさんのことだろうか
「やれやれ、せっかくゆっくりしたかったんじゃがなぁ」
老人の声が聞こえる。私はその声に心当たりがあった。
この2年間聞かない日などなかった。
「数日ぶりじゃのう、弟子」
私の師匠、が扉から入ってきた。