竜退治③
吹き飛ばされた子国が立ち上がる。すでに身体中ボロボロの状態で歩くことさえやっとのはず。
なのに彼は笑っていた。まだ戦えると剣を強く握りしめた。
人化した竜は立ち上がる子国に対して少し怒気を含みながらも何故まだ抗うのか尋ねた。
「なに、簡単な話です。私は最近気になる人ができましてね。あまりにも美しい女性だったのでなんとかして振り向かせたいんですよ。あなたを倒せば、どんな時でも守って見せるとアピールできるかと思いましてね。」
「くだらないな。どうせ死ぬことに変わりはない。できないことは語るものじゃない。力の差を痛感しておいてこの俺を倒せるとでもいうつもりか?」
怒気はさらに強くなる。威圧に近いものを受けてなお、子国は笑っている。
「もちろんですよ。ところでスキルというものをご存じですか?」
「確か異能の一種だろう、それがどうした。」
「私にはスキルがありましてね。【窮鼠】というんですよ。まぁ簡単に言えば、追い詰められるほど強くなる。」
「なるほど、それならば可能性があるな。だがヒトは自分の異能は隠しておくものじゃなかったか?」
子国がフ、と笑った。自信に満ちた声でこたえた。
「負ける方には話してもいいんですよ、ハンデにならないので」




